【厚生年金と国民年金】繰り下げ受給は約9割が利用せず

【厚生年金と国民年金】繰り下げ受給は約9割が利用せず「15万円を27万6000円に増やす方法」とデメリット3つ 男性の平均寿命は81.05年、女性の平均寿命は87.09年
2023.10.01 05:50 公開
執筆者西村 翼
Halima borsha/shutterstock.com
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目次
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1. 繰下げ受給とは。増額率を確認
2. 「厚生年金と国民年金」繰下げ受給をする人は何パーセントか
2.1 国民年金
2.2 厚生年金
3. 年金の繰下げ受給のメリットとは
4. 年金の繰下げ受給のデメリット3つ
4.1 損をする場合もある
4.2 所得税や社会保険料が引き上がる
4.3 加給年金が受け取れないケースも
5. 自分に合わせて慎重に検討を
参考資料

今年厚生労働省から発表された「令和4年簡易生命表」によりますと、男性の平均寿命は81.05年、女性の平均寿命は87.09年となっています。

出所:厚生労働省「令和4年簡易生命表」
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日本の平均寿命を諸外国と比較しても、平均寿命は長くなっています。

そんな中、足元では物価上昇が進み、老後生活が心配な方も多いのではないでしょうか。

長くなるだろう老後のために、「少しでも年金を増やしたい」と考える方もいると思います。

そこで今回は老後受け取ることができる厚生年金と国民年金の受給額を増やす方法と、そのデメリットについて解説していきたいと思います。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
1. 繰下げ受給とは。増額率を確認

繰下げ受給とは、本来65歳からの年金の支給開始を遅らせることによって、受給額を引き上げるものです。

繰下げ受給を行うことで、月あたり0.7%増額されます。

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

繰下げ受給は1ヶ月単位で可能で、最大75歳まで繰下げることができます。

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

年金額は70歳まで繰下げると42%、75歳まで繰下げると84%増額されます。

たとえば月15万円の支給額であれば、75歳まで繰り下げると27万6000円になります。

繰下げ受給は、厚生年金と国民年金でそれぞれ選択することができます。

2. 「厚生年金と国民年金」繰下げ受給をする人は何パーセントか

繰下げ受給の他に、65歳より前に受給することで年金額が減額になる「繰上げ受給」があります。

繰上げ受給の減額率は原則1カ月につき0.4%です。

それでは、繰下げ受給と繰上げ受給を選択する人はどれくらいいるのでしょうか。
2.1 国民年金

【国民年金の繰上げ・繰下げ受給状況の推移】

出所:厚生労働省「令和3年 厚生年金保険・国民年金事業年報」

繰上げ受給率は令和3年度で11.2%で、年々低下しています。

繰下げ受給の令和3年度は1.8%で、少しずつですが増加しています。

多くの人が長生きに備えて年金額が減ってしまう繰上げ受給を選択せずに、繰下げ受給を選択していることがわかります。 

【国民年金 老齢基礎年金(25年以上)受給者状況の推移】

出所:厚生労働省「令和3年 厚生年金保険・国民年金事業年報」

国民年金の繰上げ・繰下げした場合の受給額は上の表の通りです。

令和3年のデータでは、繰上げの場合、本来の受給額よりも約月1万4000円低くなり、繰下げの場合、約月1万8000円多くなっています。

繰下げが最大75歳までに引きあがったことにより、受給額の差は今後大きくなっていくでしょう。
2.2 厚生年金

【厚生年金の繰上げ・繰下げ受給状況の推移】

出所:厚生労働省「令和3年 厚生年金保険・国民年金事業年報」

厚生年金の繰下げ受給は国民年金よりも低く1.2%ですが、年々増えています。

国民年金のみ繰下げて、厚生年金は繰下げないという選択をとっている人もいることがわかります。

また、繰上げ受給については0.6%で、年々増えているのがわかります。

国民年金のみ繰下げる理由は、加給年金が関係しています。
3. 年金の繰下げ受給のメリットとは

繰下げ受給のメリットは年金額が増えるという点です。

国民年金は加入月数に応じて、厚生年金は加入月数だけでなく収入に応じて支払った保険料によって受給額が決まります。

年金を増やすことはなかなか難しいですが、繰下げ受給をすれば、増額された年金が一生涯支給されることになります。

先ほど平均寿命を見た通り、人生100年時代と言われる超高齢化社会ででは、毎月入る年金額が増えると心強いでしょう。
4. 年金の繰下げ受給のデメリット3つ

一方で、繰下げ受給のデメリットもあります。
4.1 損をする場合もある

繰下げ受給のデメリットの一つは、早く亡くなってしまうと損をするということです。

増額できても、もらう年月が少なければ損をしてしまう場合もあります。

単純計算で、一般的には繰下げ受給を開始してから約12年生きていないと損をしてしまうことになります。
4.2 所得税や社会保険料が引き上がる

年金の受給額が増えると、所得税や社会保険料が引き上がる場合があります。

手取り額は減少してしまうので、実際の受給額が思ったより増えないこともあります。
4.3 加給年金が受け取れないケースも

加給年金とは、厚生年金に20年以上継続加入かつ65歳未満の配偶者または18歳未満の子供がいる場合に受け取ることができる年金です。

加給年金は厚生年金を受け取っていることが支給の要件となっています。

つまり、厚生年金を繰下げした場合、加給年金を受け取ることができません。

加給年金を受け取ることができるケースでは、国民年金のみ繰下げて、厚生年金は繰下げせず受給することを検討しても良いでしょう。
5. 自分に合わせて慎重に検討を

年金を繰り下げる人は現状は少ないことがわかりました。

年金の繰り下げ受給には、一般的には単純計算で受け取り始めてから約12年以上生きいればメリットがあります。

判断が難しいところですが、今後「人生100年時代」に備える選択肢の一つとして活用される方は増えるかもしれませんね。

ただ、この年金の繰り下げ受給だけでは老後が心配な方も多いのではないでしょうか。

その時は、資産運用の活用を検討するのも一つだと思います。

資産運用はリスクも伴いますが自分自身に合った運用方法を見つけ、資産運用を始めていきましょう。

その方法として、国の税制優遇制度である「NISA」や「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」などの活用を検討するのもよいかもしれませんね。

また、長く働き続けることで、リタイア後の生活を遅らせるという方法もあります。

何が起こるかわからない現代においては、複数の選択肢をもち、対応していくとよいでしょう。
参考資料

   厚生労働省「令和3年 厚生年金保険・国民年金事業年報」
   厚生労働省「令和4年簡易生命表」
   日本年金機構「年金の繰下げ受給」

https://limo.media/articles/-/46938