会社休眠に必要な費用と手続き

会社休眠に必要な費用と手続き(休業届け)について解説

会社の事業を停止する場合に、廃業ではなく休眠という選択肢があります。ここでは、会社を休眠させるために必要な手続きについて説明します。会社の休眠時にかかる費用についても知っておきましょう。

※当事務所では、会社を正式に廃業させるための会社解散・清算手続きのみ承っております。休眠に関してのご質問は一切受け付けておりませんので、ご了承ください。

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会社の休眠とは?
休眠と廃業の違い

会社の「休眠」とは、会社の事業活動を一切停止し、文字通り会社を眠らせた状態にすることで、会社の「休業」と呼ばれることもあります。

会社の事業活動を停止する場合には、「廃業」という選択肢もあります。廃業の場合には、会社の解散登記をし、清算手続きを行わなければなりません。清算手続きが完了すれば、会社は消滅することになります。

休眠の場合には、会社が消滅するわけではありません。休眠では、会社は存続させたまま、事業活動を停止することになります。
会社を休眠させる方法

会社には、国税として法人税、地方税として法人事業税・法人住民税が課税されます。国税については税務署が、地方税については都道府県税事務所及び市区町村役場が管轄になりますので、会社を休眠させるときにはこれらの役所への届出が必要です。

会社が休眠中である旨の届出は、一般に、休業届または休眠届と言われます。なお、実際に提出するのは「異動届出書」という書面になります。異動届出書に休眠する旨を記載して届出すれば、休業届を出したことになります。
休眠会社のみなし解散とは?

会社法では、「株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したもの」を休眠会社としています(472条)。そして、休眠会社については、法務大臣が官報で公告した後2ヶ月以内に、法務局に役員変更などの登記申請をするか、もしくはまだ事業を廃止していない旨の届出をしなければ、「解散したものとみなす」とされています。

休業届を出して休眠状態にしなくても、12年間登記せずに放置していれば、会社法上休眠会社とされてしまいます。そして、会社法上の休眠会社となれば、みなし解散により強制的に解散の扱いになってしまう可能性があります。この場合には、解散登記の申請をするまでもなく、登記官の職権で解散登記がされることになります。
会社休眠のメリット・デメリット
休業のメリット

会社を廃業する場合には、会社の解散登記や清算手続きが必要になりますので、手間や費用がかかってしまいます。休眠の場合には、税務署と市区町村に休業届を出すだけですから、手間も費用もかかりません。

また、所得がなくても会社には法人住民税の均等割がかかってきますが、自治体によっては休業届を出せば均等割が免除・減免されるところがあるようです。事業を行わないまま会社を放置しているよりも、休業届を出した方が無駄な費用の発生を抑えられる可能性があります。
休業のデメリット

会社の休眠中であっても、納税義務がなくなるわけではありませんので、税務申告が必要になります。また、休眠中であっても法人住民税の均等割が発生することがありますので、税金の負担が完全になくなるわけではありません。

さらに、休眠中であっても、役員の任期満了時には、役員変更登記が必要です。もし登記を怠った場合には、代表者が100万円以下の過料に処せられる可能性があります。
会社の休眠に最低限必要な費用はいくら?
休業届を出すのに費用はかからない

会社を休眠させるためには、税務署、都道府県税事務所、市区町村役場に異動届出書を提出する必要があります。この手続きには、手数料はかかりません。
会社休眠を専門家に頼む際の費用相場

会社を休眠させるための休業届の提出については、行政書士に依頼することができます。また、会社の休眠中も役員変更登記や税務申告が必要になりますので、会社の休眠について司法書士や税理士に相談することも可能です。

会社休眠を専門家に頼んだ場合には報酬が発生します。会社休眠の報酬額は事務所によって違うほか、登記手続きや確定申告などサポートが受けられる内容によっても変わってきます。
休眠中も税金の負担が発生することがある

たとえ休眠中であっても、会社が存続しているかぎり、法人税や法人住民税の課税対象になります。と言っても、休眠中は所得が発生しないため、法人税がかかることはありません。法人住民税については、所得がなくても均等割が発生することがあります。なお、自治体によっては、休業届を出すことにより、法人住民税の均等割の免除や減免が受けられるところがあります。

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会社休眠の手続きと流れについて

会社を休眠させるときには、以下のような流れで手続きすることになります。

1. 事業を停止

会社を休眠状態にするには、一切の事業を停止する必要があります。事業を停止するとは、収入も支出もない状態にするということです。電話がかかってきたり郵便が届いたりする状態では、休眠しているとは言えません。事業活動を行う体制自体がないことが会社の休眠の条件になります。

2. 税務署に休業届を提出

会社を休眠させるには、税務署に異動届出書を提出し、休眠中である旨を届出する必要があります。異動届出書の用紙は税務署でもらえますが、国税庁のホームページからダウンロードすることも可能です。

3. 都道府県税事務所・市区町村役場に休業届を提出

会社の休業届は、都道府県税事務所や市区町村役場にも提出しなければなりません。休業届(異動届出書)の書式や手続きの方法はそれぞれの自治体で違いますので、事前に問い合わせるようにしましょう。

4. 休眠状態へ

休業届を提出して受理されれば、会社は休眠状態ということになり、登記簿上存在しているだけになります。 なお、会社の休眠中も役員変更の登記は必要になります。会社が12年以上登記手続きを行っていない場合には、解散したものとみなされてしまう可能性があります。

5. 事業再開

休眠中の会社を復活させる場合には、休業届を出した税務署、都道府県税事務所、市区町村役場に事業を再開する届出をします。
会社休眠中も必要な作業
税務申告が必要

会社休眠中も、税務申告は必要です。ちなみに、所得がなければ法人税は課税されませんから、申告をしなくても課税自体には影響がありません。しかし、2年連続して期限内申告を行わなかった場合には、青色申告の承認が取り消されてしまいます。また、休眠中に無申告の年度があった場合には、欠損金の繰越しの適用が受けられなくなってしまいます。

なお、事業年度の途中から休眠する場合には、営業最終日までの税務申告も忘れずに行いましょう。
役員変更登記が必要

会社休眠中も、役員変更登記が必要になります。取締役などの会社の役員には任期がありますので、任期満了時には役員の改選をし、役員変更登記をしなければなりません。たとえ同じ人が引き続き役員になる場合でも、重任登記が必要になります。多くの会社では取締役の任期は2年になっていますから、2年に1回は役員変更登記が必要になるということです。

会社法では、変更登記を怠った場合には、代表者が100万円以下の過料に処せられるとされています。会社休眠中も役員変更登記は行う必要があるということを認識しておきましょう。

会社休眠中も、税務申告や役員変更登記が必要になります。将来的にも全く事業を行う予定がないのであれば、休眠ではなく廃業を選んだ方が、余計な費用や手間の発生を抑えられる可能性があります。会社休眠については、専門家に相談したうえで決めるのがおすすめです。