会社解散と清算の法的手続き

会社解散と清算の法的手続き

会社解散とは

任意解散 定款で定めた存続期間の終了
定款に定めた解散事由の発生
株主総会の特別決議
合併(吸収合併)
強制解散 破産手続開始の決定
解散を命ずる裁判
休眠会社のみなし解散
特別法(銀行法、保険業法)上の解散原因の発生
みなし解散 最終登記日から12年経過している休眠会社

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会社清算とは

清算の定義

清算とは、会社の解散に伴いそれまでの法律的・経済的関係を整理する手続きをいう。
  • 現務の結了
  • 債権の取立て(回収)
  • 財産の換価処分
  • 債務の弁済
  • 残余財産の分配

清算中の会社ができないこと

  • 営業活動(売掛金の回収はOK)
  • 資金調達活動
  • 自己株式の取得(無償で取得する場合その他一定の場合を除く)
  • 資本金の額その他貸借対照表上の計数の変更
  • 剰余金の分配(配当)
  • 吸収合併の存続会社または吸収分割の承継会社になること
  • 株式交換または株式移転

清算の種類

任意清算 定款の定めや総社員の同意によって会社財産を自由に処分できる方法で、合名会社や合資会社にのみ認められる。
法定清算 法律上定められた手続きによって財産整理を進める方法で、株式会社はすべて法的清算によらねばならない。
通常清算 清算手続きが裁判所の監督外で進められる私的処理
取締役にかわって精算人が選任され、清算手続きをおこなう。
特別清算 清算手続きが裁判所の監督下で進められる方法。
債権債務の争い等があり、清算の遂行に支障をきたすような特別な事情がある場合や、債務超過等により債権者の保護が必要と認められる場合に用いられる清算手続き
(※債務超過であっても債務免除等により債務超過が解消されるような場合は特別精算によらなくともよい)
(例)親会社が債務超過の子会社を整理する場合、子会社負債を親会社が肩代りしたり、事前貸付したりすると寄付金課税の問題が生じやすいが、特別清算は裁判所の監督下で行われるので客観性を確保しやすい。
また、特別清算の申し立ての段階で債権者は50%の貸倒引当処理ができる。

会社解散から清算までの流れ

期日 法定手続き 税務上の手続き 備考
総会の2週間前 ・取締役会決議
・株主総会の召集通知の発送
取締役会非設置会社は取締役が発送
株主総会日=解散日 株主総会の特別決議

※解散日が新しい事業年度末となるため従来の決算日に合わせると決算事務が軽減される) ・解散決議
・精算人の選任決議(1人以上)
(総会決議をしなければ取締役が全員清算人となる=法定清算人)
・定款変更決議
・役員退職慰労金支給決議

公開会社はは監査役を設置する必要アリ)
総会当日 清算人会(任意) 清算人会を設置する場合は3人以上
代表清算人は通常は代表取締役
解散日から2週間以内 解散登記および清算人の登記 ・解散株主総会議事録
・定款(原本証明)
・精算人・代表清算人就任承諾
・印鑑届出書
解散日から2ヶ月以内 債権届出の公告知れたる債権者への通知
帳簿上の債権者 個別に債権申し出の催告が必要(会社法499条) 債権申出期間=2ヶ月
帳簿外の債権者 必ず官報で解散公告と債権申出の催告が必要(会社法499条) 公告期間=2ヶ月
解散日後遅滞なく 株主総会の普通決議 所轄税務署へ「会社解散届け」の提出 解散時の財産目録、貸借対照表の承認
解散日後2ヶ月以内
(期限延長特例あり)
  「解散確定申告書」の提出
(期首から解散日までの解散事業年度)
 「登記事項証明書」添付
解散日翌日から一年後 (清算事務年度終了日)
清算事務年度終了日から2ヶ月以内 株主総会 貸借対照表(承認)
事務報告(報告)
附属明細書
清算事務年度終了日より2ヶ月以内
(期限延長特例あり)
株主総会 清算事業年度の確定申告書の提出 貸借対照表
損益計算書
株主資本等変動計算書
残余財産確定日 代表清算人が決定 財産を現金化して、事後的費用以外の債務の弁済の見込みがついた日
(現物分配も可)

債務超過会社の場合は弁済不能債務全額の債務免除を受けた日
  残余財産の分配  配当通知書の発行  みなし配当が生じる場合は「配当通知書」の発行
清算結了日
株主総会の承認 決算報告=清算結了日

全財産を現金化し債務の弁済を完了(=残余財産の時価額確定)
株主総会後2週間以内 清算結了登記
残余財産確定日より1ヶ月以内
(その期間内に残余財産の
最終の分配が行われる場合には、
その最終分配日の前日まで)

  残余財産確定事業年度の確定申告書

「清算結了届」の提出(国、地方)
登記事項証明書
清算登記後遅滞なく 裁判所へ「書類保存者選任申請書」の提出 清算人が書類保存者の場合は不要
残余財産確定日以降清算結了日までの期間については申告する必要なし
最低2ヵ月半は必要

会社を解散する際の定款変更

  • (機関)株主総会と清算人
  • (株式の譲渡制限)代表清算人の承認
  • (定時株主総会)解散日より2ヶ月以内
  • (定時株主総会基準日)解散日
  • (総会の議長)代表清算人
  • (取締役の員数)清算人○人以上
  • (取締役の任期)削除
  • (代表取締役)代表清算人
  • (取締役会)削除
  • (報酬)清算人の報酬
  • (監査役)削除(但し、公開会社の場合は必要)
  • (事業年度)清算事務年度は毎年解散日を終了日とする一ヵ年とする。

会社解散の会計

解散事業年度の計算書類

当初の事業年度開始の日から解散日まで
会社法上 税務署用
清算貸借対照表       時価評価(処分価額) 貸借対照表 取得原価主義
損益計算書 発生主義
株主資本等変動計算書
財産目録 時価評価

会社法上の財産目録・貸借対照表

(資産の部)
預金 解散日までの経過利息を未収入金に計上する
売上債権 個別債権残高から貸倒見積額をと取立費用見込み額を控除した額
貸付金 個別債権残高から貸倒見積額をと取立費用を控除した額
解散日までの経過利息を未収入金に計上する
棚卸資産 売却可能価額から処分費用を控除した価額
有価証券 時価(処分可能価額)から売却費用(処分費用)を控除した価額
前払費用・仮払金 現金回収が見込まれる部分は未収入金
費用性のものはゼロ評価
土地(借地権含む) 実際の処分可能価額から処分費用を控除した価額
建物を取り壊す必要がある場合はその取り壊し費用も控除
その他有形固定資産 実際の処分可能価額から処分費用を控除した価額
リース資産 リース契約解除により取得する固定資産の実際の処分可能価額から処分費用を控除した価額
無形固定資産 実際の処分可能価額から処分費用を控除した価額
通常は全額ゼロ評価
繰延資産 現金回収が見込まれる部分は未収入金
費用性のものはゼロ評価
投資等 実際の処分可能価額から処分費用を控除した価額
(負債の部)
仕入債務他 簿外債務も含める
リース債務 リース契約解除に伴う違約金を未払金に計上する
未払金 確定債務だけでなく、清算結了までに要する事後費用を見積もって計上する
未払税金 清算結了までの消費税、法人税、地方税を見積もり計上する
借入金 解散日までの経過利息を未払金に計上
退職給付引当金 解散日現在での会社都合による要支給額を未払金に計上
偶発債務 ・割引手形は両建て経理
・保証債務についてはその履行が確実に見込まれる場合は履行額を未払計上
正味財産の部
「清算換価剰余金」で一本表示する

清算年度中の会計

清算事務年度の計算書類

解散日の翌日から1年間
会社法上 税務署用
貸借対照表       時価評価(処分価額) 貸借対照表 取得原価主義
事務報告 収支の状況 損益計算書 発生主義
株主資本等変動計算書
財産目録 時価評価

会社法上の事務報告

1.収支の状況
(1)収入
①債権の取立て
②資産の処分
③その他
(2)支出
①債務の弁済
②清算費用
(3)収支差額
2.清算事務の今後の見通し 何が問題でいつごろ終了する見通しなのか
3.その他 営業所の廃止
臨時株主総会の開催等

最終事業年度の会計・税務

残余財産確定事業年度の計算書類

清算事務年度の翌日から残余財産確定日まで
会社法上 税務署用
       貸借対照表 取得原価主義
決算事務報告   収支の状況        損益計算書 発生主義
株主資本等変動計算書

会社法上の決算事務報告

1.残余財産の価額
(1)収入の部
①債権の取立て
②資産の処分
③その他
(2)支出の部
①債務の弁済
②清算費用
③租税公課
(3)解散日現在の現金預金
(4)残余財産 支払税金を控除している場合はその旨
2.一株当りの残余財産分配額 何が問題でいつごろ終了する見通しなのか
(1)残余財産の価額
(2)発行済み株式総数 自己株式を除く
(3)一株当り分配額
(4)分配を完了した日
事後的費用はあらかじめ払い出しておく
  1. 清算人の報酬
  2. 清算事務所の費用
  3. 残余財産分配のための通信費、送金費用
  4. 株主総会開催費用
  5. 清算結了に伴う登記費用
  6. 専門家(弁護士・会計士・税理士)の報酬

税務上の貸借対照表

(残余財産の時価評価)
債務の弁済終了後の残存財産の時価評価額
※有価証券や土地は現物で分配することもできる


事後費用未払金
・清算人の報酬
・清算事務所の費用
・残余財産分配のための通信費、送金費用
・株主総会開催のための費用
・清算結了にともなう登記関係費用
・租税債務(法人税、住民税、事業税
(残余財産)

株主に対する出資持分の払い戻し

  1. 残余財産確定事業年度では、事業税も未払計上すること(損金算入可
  2. 弁済不能債務は債務免除後であること。

会社解散・清算の税務

税務申告書の種類

事業年度名称 申告書の種類 計算対象期間 計算書類 備考
解散事業年度 解散確定申告

※解散の日の翌日から2ヶ月以内
当初の事業年度開始の日から解散日まで
  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
通常の損益法
清算事務年度 清算事業年度予納申告
※H22年10月1日以降解散から「清算事業年度確定申告」

※清算中の各事業年度終了日から2ヶ月以内
解散日の翌日から1年間
  • 貸借対照表
  • 損益計算書
通常の損益法

解散の日から1年以内に残余財産が確定したら「清算事業年度予納申告」は必要なし
最終事業年度 清算確定申告
※H22年10月1日以降解散から「残余財産確定事業年度確定申告」

※残余財産確定日より1ヶ月以内
解散日から残余財産確定の日まで通算期間

※H22年10月1日以降解散から清算事務年度末から残余財産確定日まで
  • 貸借対照表
  • 財産目録
  • 解散の時から残余財産確定の時までの清算に関する計算書
精算確定時は財産法による所得計算
(但し、平成22年10月1日以降の解散の場合は通常の損益法による所得計算となる。)
清算結了時点では申告の必要なし

税務申告時の留意点

解散確定申告 清算(中)業年度 残余財産確定年度
所得計算 益金額-損金額 益金額-損金額 益金額-損金額
当該事業年度の事業税(地方法人特別税を含む)の損金算入 不可 不可 損金算入可
※別表四(43)「残余財産の確定の日の属する事業年度にかかる事業税の損金算入額」で減算・留保

別表五(一)でマイナス表示
減価償却 (定額法)
法定耐用年数×解散事業年度の月数÷12ヶ月=改訂償却率(小数点3位未満切上)
(定率法)
法定耐用年数×解散事業年度の月数÷12ヶ月=改訂耐用年数(1年未満切捨)
改訂耐用年数に対応する償却率を適用
通常事業年度と同じ 解散年度と同様


一括償却資産の未償却残高は一括償却
特別償却 (適用できない特別償却)
・中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却(措置法42の6)
・情報基盤強化設備等を取得した場合の特別償却(措置法42の10)
・エネルギー需給構造改革推進設備特別償却(措置法42の5)
・事業基盤強化設備特別償却(措置法42の7)
・沖縄の特定中小企業者が経営革新設備を取得した場合の特別償却(措置法42の10)
同左 同左
一括償却資産 通常通り償却 同左 残額を一括して損金経理
法人税法上の引当金 貸倒引当金および返品調整引当金の繰り入れはOK 同左 繰り入れ不可
租税特別措置法上の準備金 繰入不可(準備金残高は全額取り崩す) 同左 同左
退職給与引当金益金算入 引き続き適用 同左 同左
従業員退職金 解散日現在の退職者の退職金の未払経理OK 同左 同左
取締役退職金
解散時に退任する役員 未払役員退職金OK
(支払時に損金経理も可)
清算人として残る役員 解散前の勤続期間に対応する範囲までは、支給を条件に退職金計上可(未払退職金は不可)
過大役員退職金の損金不算入制度 過大役員退職金の損金不算入制度
使用人賞与 一定の要件のもと未払経理可 同左 同左
圧縮記帳 法人税法及び租税特別措置法上の圧縮記帳の適用OK
但し、次の圧縮特別勘定の計上はできない
・国庫補助金にかかる特別勘定
・保険差益にかかる特別勘定
・収用等に伴う特別勘定
・特定の資産の譲渡に伴う特別勘定
不可 不可
所得の特別控除 収用換地等の所得の特別控除は適用可能 不可 不可
繰延資産の損金算入限度額 解散事業年度の月数/支出の効果の及ぶ期間の月数
(1ヶ月未満切上げ)
通常事業年度と同じ 月数按分
交際費の定額控除限度額 (資本金1億円以下)
600万円×解散事業年度の月数/12月・・・(1ヶ月未満切上げ)
(資本金1億円超)
全額損金不算入
損金不算入 損金不算入
受取配当金等の益金不算入 あり あり あり
寄付金損金算入限度額 期末資本金等の額×解散事業年度の月数/12月×0.25%・・・以下省略・・・(1ヶ月未満切上げ) 損金不算入 損金不算入
法人税率 30%(中小法人年800万円以下22%→18%) 同左 同左
税額控除 (控除されるもの)
・所得税額控除
・外国税額控除
・仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除

(控除されないもの)
・試験研究を行った場合の法人税額の特別控除
・エネルギー需給構造改革推進設備取得の法人税の特別控除
・中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額特別控除
・事業基盤強化設備取得時の法人税額特別控除
・情報基盤強化設備等を取得した場合の法人税額特別控除
・教育訓練費の額が増加した場合の法人税額特別控除
・沖縄の特定中小企業者が経営確信設備を取得した場合の特別控除
同左 同左
同族会社の留保金課税 適用あり 適用なし 適用なし
使途秘匿金課税 特別税額の適用あり 適用あり 適用あり
中小法人の軽減税率適用所得金額 800万円×解散事業年度の月数/12月・・・1月未満切上げ 通常事業年度と同じ 解散時に同じ
留保金課税から控除される金額 2000万円×解散事業年度の月数/12月・・・1月未満切上げ 通常事業年度と同じ 解散時に同じ
法人住民税均等割額 一定額×解散事業年度の月数/12月・・・1月未満切捨て 通常事業年度と同じ 一定額×解散事業年度の月数/12月・・・1月未満切捨て
期限内欠損金 控除可
控除可 控除可
期限切れ欠損金 控除不可 実質債務超過の場合は、青色欠損金控除後に期限切れ欠損金も控除可
別表七(2)と実態貸借対照表添付
実質債務超過の場合は、青色欠損金控除後に期限切れ欠損金も控除可
別表七(2)と実態貸借対照表添付
欠損金の繰戻し還付 適用あり
ケース 内容 特例
当期及び前期→赤字
前々期→黒字
前期→欠損事業年度
前々期→還付所得事業年度
(解散、事業の全部譲渡等特定の場合の特例)

・「欠損事業年度」は当期のみならず解散の日前1年以内に終了した事業年度を含める。
(「還付所得事業年度」は「欠損事業年度の前年度)

・「欠損金の繰戻しによる還付請求書」の提出期限は、解散の日から1年以内
当期→黒字
前期→赤字
前々期→黒字
前期→欠損事業年度
前々期→還付所得事業年度
当期→赤字
前期→黒字
当期→欠損事業年度
前期→還付所得事業年度
通常年度の方式の繰り戻し還付 通常年度の方式の繰り戻し還付
仮装経理による法人税還付 原則として5年間は法人税納付額から順次控除され、さらに残額があれば「申告期限」後に還付されるが、解散事業年度は「解散事業年度」の申告期限到来後に一括還付されていたが、
平成22年10月1日以降解散からは、「最後事業年度」の申告期限到来後に一括還付となる。
平成22年10月1日以降解散からは、「最後事業年度」の申告期限到来後に一括還付となる。
現物分配 非適格の現物分配時の譲渡損益は別表四40「非適格の合併等又は残余財産の全部分配による移転資産等の譲渡利益又は譲渡損失額」
債務免除益
完全支配関係法人間 それ以外
合理的な理由あり 合理的な理由なし
全額益金
算入
全額益金
不算入
全額益金算入

消費税の課税期間

解散事業年度 清算事業年度 残余財産確定事業年度
H22.4.1~H22.12.31 H23.1.1~H23.12.31 H24.1.1~H24.5.31
基準期間 課税年度
課税売上高/基準期間の月数×12ヶ月 基準期間の課税売上高

会社解散と税務更正

  1. 清算結了登記後であっても、清算人が法人税を完納するまでは、法人は存続する。
  2. 法人が納付すべき国税を納付しないで、残余財産を分配した場合は、清算人または残余財産の分配を受けた者は、その分配を受けた範囲内で納税義務を負う。

残余財産確定事業年度の確定申告

平成22年10月1日以降解散の場合

損益法による税額計算
ここがポイント
  1. 清算期間中に資産を売却したり、債務免除を受けたりすると課税が生じる可能性がある。
  2. 青色欠損金があれば当然に控除できるが、ない場合は期限経過(期限切れ)欠損金を損金算入することができる。
  3. 期限経過(期限切れ)欠損金は適用年度の別表5(1)「利益積立金額の計算に関する明細書」の「期首現在利益積立金額」のマイナスの数値の絶対値である。
  4. 白色申告の場合も欠損金を損金算入することができる。
  5. 期限経過(期限切れ)欠損金の損金算入が認められる条件は「残余財産がないと見込まれる」こと
残余財産がないと見込まれる条件
ここがポイント
  1. 債務超過の判定は各清算期末時点において、実態貸借対照表が債務超過になっていること。
  2. 純資産がプラスであれば例え欠損であっても期限切れ欠損金は利用できない。
  3. 途中の清算事業年度末では財務超過でああり、残余財産確定年度末で債務超過を解消したとしても、過年度の清算年度の税務処理には影響を及ぼさない。
  4. 実態貸借対照表の資産価額は処分価額
  5. 仮装経理を行っていた場合は欠損金が生じていないため減額更正の嘆願をする。
清算する場合の債務の処理の順番
借方 貸方 備考
現金 0 親会社借入金 8000 土地の時価8000
税務上欠損金2000
期限切れ欠損金4000
課税所得0
代表者貸付金 2000 資本金 2000
土地 2000 利益剰余金 ▲6000
合計 4000 合計 4000
2.解散時BS
借方 貸方 備考 してはいけないこと
現金 0 親会社借入金 8000 土地の時価8000
税務上欠損金2000
期限切れ欠損金4000
課税所得0
①解散前に親会社借入金の免除を受けると
期限切れ欠損金を利用でいないから
課税所得が発生する(8000-2000=6000)
②解散前に土地を売却すると期限切れ欠損金
を利用できないから課税所得発生(6000-2000)
③解散前の代表社貸付金を放棄すると、
代表者個人に役員賞与課税発生2000
代表者貸付金 2000 資本金 2000
土地 2000 利益剰余金 ▲6000
合計 4000 合計 4000
3.清算事業年度
借方 貸方 備考 留意点
現金   0 親会社借入金 1000 土地の売却収入5000
土地売却益3000
借入金現金返済5000
借入金現物返済2000

税務上欠損金0
期限切れ欠損金3000
課税所得ゼロ
①代表者貸付金を放棄すると賞与課税が
発生するから、親会社借入金返済として
債権譲渡する。
②親会社は代表者貸付金を長期に渡って
給与精算していく。
代表者貸付金 0 資本金 2000
土地 0 利益剰余金 ▲3000
合計 0 合計 0
4.残余財産確定事業年度
借方 貸方 備考 留意点
現金   0 親会社借入金 0 親借入金の免除1000


税務上欠損金0
期限切れ欠損金1000
課税所得0
①残余財産もなくなったため、借入金を全額
免除してもらう。
代表者貸付金 0 資本金 2000
土地 0 利益剰余金 ▲1000
合計 0 合計 1000
5.残余財産確定事業年度(別パターン)
借方 貸方 留意点
代表者貸付金 2000 資本金 2000 ①代表者貸付金を放棄すると賞与課税が
発生するから、現物分配する。
②出資金を超過する部分には、みなし配当課税が生じる。

③もしくは役員退職金を計上する。退職所得課税とみなし配当課税の税額
を比較する。
④役員退職金が過大と認定され、損金不算入とされても、もともと課税所得
もないため実質的な影響はない。
土地 0 利益剰余金 0
合計 2000 合計 2000
完全支配関係を解消したほうがよい場合
解散前子会社BS 節税ロジック
親会社借入金 1000 1000 1000 ①子会社を清算する場合は特別清算をする。
②(子会社貸付金+子会社株式)>子会社の青色欠損金
→事前に完全支配関係を解消しておく。
③(子会社貸付金+子会社株式)<子会社の青色欠損金
→事前に完全支配関係を構築しておく。
外部借入金 0 0 1000
資本金 2000 2000 2000
剰余金
(青色欠損金=1000)
▲3000 ▲1000 ▲4000
合計 0 2000 0
解散 親会社の債権放棄は寄附金処理の場合
100%子会社 80%子会社
B C
益金不算入 益金不算入 親借入益金不算入
外借入益金算入
益金算入 益金算入 益金算入
青色欠損金▲1000 残余財産の配当 0 子会社株式消滅損失▲1600
▲1000 0 0 ▲1600 ▲1600 ▲1600
親会社の債権放棄は損金算入の場合
100%子会社 80%子会社
益金算入 益金算入
益金算入 益金算入 益金算入 益金算入
貸倒損失▲1000 貸倒損失▲1000
残余財産の配当
貸倒損失▲1000 貸倒損失▲1000
子会社株式消滅損失▲1600
▲1000 ▲1000 ▲1000 ▲2600 ▲2600 ▲2600
解散か合併か
解散前子会社BS 節税ロジック
親会社借入金 10000 1000 1000 ①子会社貸付金>子会社青色欠損金→解散が有利
②子会社貸付金<子会社青色欠損金→合併が有利
③合併の場合は子会社の利益積立金のマイナス全額を
引き継げるたため、親会社が解散し残余財産がないと見込まれた
場合は期限切れ欠損金として損金算入することができる。
資本金 2000 2000 2000
利益積立金
(青色欠損金=5000)
▲12000 ▲1000 ▲4000
合計 0 2000 0
親会社の債権放棄は寄附金処理の場合
解散 適格合併
子会社 益金不算入
親会社 青色欠損金▲5000 青色欠損金▲5000
▲5000 ▲5000
利益積立金の引継ぎ▲12000
親会社の債権放棄は損金算入の場合
解散 適格合併
益金算入
貸倒損失▲10000 青色欠損金▲5000
▲10000 ▲5000
利益積立金の引継ぎ▲12000

平成22年9月30日まで解散の場合

清算所得課税
残余財産の時価評価額




解散時の資本金等の額
解散時の利益積立金額 マイナスの時はゼロ
(清算所得金額) 欠損金の繰越控除の適用がないことに注意!
【残余財産の価額に算入されるもの】
  • 清算中に納付する法人税額(解散事業年度以前の法人税及び退職年金積立金に対する法人税を除く)
  • 資産再評価法の規定に基づく再評価税
  • 清算中に納付する都道府県民税および市町村民税(解散事業年度以前の法人税及び退職年金積立金に対する法人税を除く)
  • 清算中に納付する事業税(解散事業年度以前のものを除く)
  • 都道府県民税、市町村民税および事業税にかかる延滞金、過少申告加算金、不申告加算金および重加算金
  • 清算中に支出した寄付金(清算業務の遂行上通常必要と認められる寄付及び国庫等への寄付、指定寄付金を除く)
  • 清算中に納付した所得税(税額控除をうけるものに限る)
【利益積立金額に算入されるもの】
  • 解散時の税務上の利益積立金額(マイナスの場合はゼロ)
  • 清算中に内国法人から受けた受取配当金(負債利子控除後)で、関係法人株式にかかるものは全額、それ以外のものは50%
  • 清算中に還付を受けた租税
     ・納付した時点で損金不算入とされた国税および地方税の付帯税の還付金
     ・所得税の還付金
     ・欠損金の繰戻しによる法人税の還付金
     ・控除対象外国法人税額の還付金

外形標準課税

平成16年4月1日以後の解散で、解散日現在の資本金が1億円超の法人
解散事業年度 所得割 付加価値割 資本割
清算事業年度 所得割 付加価値割 なし
残余財産確定事業年度 所得割 なし なし

残余財産の分配

※「分配直前期末簿価純資産額」とは、残余財産の一部を分配する期の前期末の純資産の部の合計額であるが、残余財産の全部を分配する場合は、その残余財産の確定する日の属する事業年度の純資産額となる。

※残余財産分配額/分配直前期末簿価純資産額 は小数点3位未満切り上げ、1を超える場合は1

株主の税務

法人株主

子会社株式の払戻し

受取配当金
完全子法人株式 配当計算期間を通して継続して完全支配関係を有する内国法人。
なお、「みなし配当」の場合は支払効力発生日の前日に完全支配関係がある場合は完全子法人株式に該当する。
負債利子を控除せずに、全額損金不算入

※完全支配子会社の残余財産が確定し現物の交付を受けた場合も益金不算入
関係法人株式 発行済み株式総数の25%以上を、配当の支払効力日以前6ヶ月以上引き続き所有 負債利子を控除した残額が益金不算入
上記以外の株式   負債利子を控除した残額の50%が益金不算入
所得税額控除 20%(所得税15%、住民税5%)
※適格現物分配の場合は源泉徴収不要
子会社株式消滅損
(譲渡損失)
  100%子会社 それ以外の子会社
株式消滅損失
(株式譲渡損失)
H22年9月30日まで解散 損金算入 損金算入
H22年10月1日以後解散 損金不算入
(資本金等の額)
《加算・留保》
損金算入

個人株主

受取配当金 配当所得(配当控除10%)
所得税額控除 20%(所得税15%、住民税5%)
※適格現物分配の場合は源泉徴収不要
譲渡所得 残余財産の分配があれば他の譲渡益と相殺可
残余財産の分配がなければ相殺不可

100%子会社の未処理欠損金の引継ぎ

平成22年度税制改正(平成22年10月1日以降解散から適用)

株主である法人による完全支配関係 両社間に他の者による完全支配関係がある法人相互の関係

完全支配関係にある子会社の残余財産が確定した場合、その確定日の翌日前7年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額のうち未使用の金額は、親会社へ引き継ぐことができる。
  1. 残余財産確定日現在で完全支配関係がなければ、未処理欠損金は一切引き継げない。
  2. 残余財産確定の日の翌日の属する事業年度開始の日の5年前の日から継続して支配関係(50%超)があること
  3. 引き継ぐことのできる子会社欠損金はあくまで期限内の青色欠損金だけである。
  4. 残余財産確定法人の株主が2以上ある場合は、未処理欠損金額のうち、それぞれの持分割合に応じて引き継ぐ
未処理欠損金引継ぎのパターン1
H18/3 H19/3 H20/3 H21/3 H22/3 H23/3
(解散)
H24/3
(残確)
引継ぎ可能
欠損金額
欠損金 ▲10 ▲10 ▲10 ▲10 ▲10 ▲10 ▲10
出資比率A 51% 51% 51% 51% 51% 51% 100% ▲70
出資比率B 100% 100% 100% 100% 100% 100% 99%
出資比率C 100% 100% 100% 50% 51% 51% 100% ▲30
出資比率D 0% 0% 0% 0% 0% 0% 100% ▲10
出資比率D 0% 0% 0% 51% 50% 51% 100% ▲20
  1. 支配関係継続の判定期間(5年間)内において支配関係が一度切れ、再度新たな支配関係が生じている場合には、その新たな支配関係が生じた年度に発生した欠損金のみ引き継ぐことができる。
  2. 新たな支配関係が生じた年度が複数あるような場合には、そのうち一番新しい支配関係事業年度の欠損金を引き継げる。
未処理欠損金引継ぎのパターン2

http://www.sugino-jpcpa.com/m-and-a/kaisan.html


未処理欠損金引継ぎのパターン2

年月日備考子会社親会社
事業年度欠損金額事業年度欠損金額引継ぎ欠損金
H17.3.31H16.3-H17.3100H17.1.1-H17.12.310
(H17.9.1)H24.9.1から7年前
H18.3.31H17.4-H18.3110H18.1.1-H18.12.310
H19.3.31H17.9.1以降開始事業年度H18.4-H19.3120H18.1.1-H18.12.310120
H20.3.31H19.4-H20.3130H19.1.1-H19.12.310130
H21.3.31H20.4-H21.3140H20.1.1-H20.12.310140
H22.3.31H21.4-H22.3150H21.1.1-H21.12.310150
H23.3.31H22.4-H23.3160H22.1.1-H22.12.310160
H23.8.31解散日H23.4-H23.8170H23.1.1-H23.12.310170
H24.8.31残余財産確定日H23.9-H24.8180180
  • それぞれの未処理欠損金は、解散子会社の事業年度開始日の属する親会社の事業年度に引き継がれる。
  • 残余財産確定事業年度の未処理欠損金が、親会社の事業年度開始日以後に発生している場合は、親会社のその前年度に帰属させる。
  • 残余財産確定日以前、最低5年の間に支配関係(法法2十二の七の五)が継続していることなどを要件とする(法法57③。)