意外に知らない「会社」入門

意外に知らない「会社」入門

 意義のある会社生活を送るためには、会社の仕組みを知っていることが必須条件です。21世紀を目前に控え、会社の仕組みも大きく変貌しつつあります。会社はどのようにして動いているのか、ヒト・モノ・カネ・情報などの視点から理解し、会社に強くなりましょう。

【ステップ1】会社とは何だろう
【ステップ2】会社はヒトで持つ
【ステップ3】モノ・サービスと会社
【ステップ4】カネは会社をかけめぐる
【ステップ5】時代の中の会社

意外に知らない「会社」入門

ステップ2 | ステップ3 | ステップ4 | ステップ5

 
■ステップ1 会社とは何だろう■

 会社は社会を構成する組織の一つです。社会のニーズに応じて商品やサービスを提供するなど、重要な役割を持っています。その会社は利潤の追求を目的として動いています。
 会社の数は多く、その種類もたくさんです。法的にみると合名会社、合資会社、有限会社、株式会社の種類がありますが、この中で株式会社が重要です。株式を発行して資金を集める仕組みになっているので、おカネを集めやすいからです。

○会社の役割

(1)生活に必要なものを提供する。
(2)社会のニーズを充足する。
(3)利潤を追求する。
(4)仕事の場を提供する。

○株式会社の利点

(1)株式の発行で資金を集められるため、会社を設立したり、設備投資をするための資金集めが容易。
(2)株式は流通しているので、株式を譲渡したり、売買したりできる。
(3)株式を所有している株主と会社を動かす経営者が分かれている。

○日本の法人企業形態

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◎チェックしよう

・毎日の新聞には会社の動きがくわしく報道されています。そのニュースを会社と社会の関わりという点から見ていこう。

日経スタッフ「会社入門」より

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■ステップ2 会社はヒトで持つ■

 会社はヒトの集団です。それも、上は社長から下はヒラ社員まで階層的に分かれているのが特徴です。この階層に応じて権限と責任の体系がキチンとできていて、これに応じて仕事の体系も組み上がっています。
 会社ではヒトはいろいろな職場に分かれて仕事をしています。一人でできる仕事は限られていますが、仕事を分担し合う分業体制にすると大きな仕事ができるからです。給料は社員にとっては生活の糧ですが、会社にとってはコストの一部になります。

○権限と責任の体系

(1)会社は経営層からヒラ社員までタテ系列の階層に分かれている組織。
(2)下にいけばいくほど権限が狭く仕事の範囲も狭く、責任も軽い。上にいけばいくほど権限は大きく仕事の範囲も広がり、責任も重い。

○ゼネラリストとスペシャリスト

(1)ゼネラリストは広い視野から判断できる万能社員。日本企業では人事異動や配置転換に代表されるように、いろいろな職場を経験させる方法が一般化していた。「就職」より「就社」に近い。
(2)スペシャリストは自らの専門能力を高め、それが企業の中で生かされ、役立つ社員。欧米では職種別に従業員を募集し、その職種に就く場合が多い。
(3)ラインは直系組織でスタッフは参謀組織を指す。ゼネラリストがラインで、スペシャリストがスタッフであるケースが多い。

○労働費用の構成例

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○日本的経営

(1)終身雇用制と年功序列型賃金体系、りん議制度などが特徴。いわゆる個人生活が会社に丸抱えの組織経営を指す。
(2)大競争時代(メガ・コンペティション)といわれる近年は、年功序列給から能力給を重視し、成果主義を導入する会社が増えており、従来の日本的経営は崩れつつある。

◎チェックしよう

 給料は受け取る側からみると、多ければ多いほどいいのですが、なぜ賃上げ交渉でいつも労使の主張が隔たるのだろうか。

日経スタッフ「会社入門」より

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■ステップ3 モノ・サービスと会社■

 会社はモノをつくり、サービスを開発して、社会に貢献しています。モノをつくることを生産、製造といいますが、日本は品質がいいものを安く、しかも時間どおりキチンとつくる点では、世界的にも有名です。経済のソフト化、サービス化で、会社はサービスの開発にも力を入れていますが、モノづくりやサービス開発にはどういうニーズにこたえていくかという商品開発と、それをどう販売していくかというマーケティングが大切です。

○モノづくりのポイント

(1)品質:品質が良い。
(2)価格:できるだけ安価である。
(3)納期:時間どおり(納期まで)につくる。

○QCとカンバン方式

(1)QCはQuality Control(品質管理)の略で、原材料の受け入れから製品テストまで一連の生産管理体系のこと。もともとは米国で考案された手法だが、日本企業が役立つ手法に磨きあげた。推進するためのデミング賞が設けられている。
(2)カンバン方式はトヨタ自動車が発案、実施している生産管理方式。必要なときに必要な部品が必要な量だけキチンと納入されている仕組み(ジャスト・イン・タイム)をいう。必要以上の在庫を抱えないようにして経費負担を減らすのが目的で、トヨタグループ以外でも導入が進んでいる。

○ソフト化・サービス化と商品開発

(1)モノと違って形のないものを提供する会社がサービス会社。宅配便やソフトウエア会社、レジャー会社など、消費者ニーズの多様化がサービス会社を生み出している。
(2)商品開発には、社会のニーズを把握してそれをモノやサービスという商品づくりに反映させていく。そのために多くの会社は市場調査(マーケティング・リサーチ)に力を入れ、ユーザーの動きを注意深く追っている。

○流通会社の必要性

・商品は流通会社を通して消費者のもとに届けられる。メーカーはモノづくりの専門家だが、販売の専門家ではない。販売の専門会社に委ねたほうが、メーカーは商品開発に特化できるので効率化される。

○顧客をつくり出す

・商品開発は社会にニーズにこたえることだけではない。優れた商品を市場に出せば、潜在化していた社会のニーズが一挙に顕在化することがある。ソニーのヘッドホンカセットの「ウォークマン」が良い例。

◎チェックしよう

 新聞には新製品のニュースが毎日掲載されています。最近のヒット商品を取り上げて、それが社会のどのようなニーズにこたえているのかを検討してみよう。

日経スタッフ「会社入門」より

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ステップ4 カネは会社をかけめぐる■

 おカネは会社にとって、自動車を動かすガソリンに当たります。会社を起こすにもおカネが必要ですし、おカネがうまく回らなければ会社は倒産します。このため、資金の流れをキチンと管理することが必要です。年の初めに予算を立て、年が終わると決算を締めるのはそのためです。
 会社の健康状態を見るために、財務諸表を作るのも大切なことです。特に株式会社の場合、株主に出資してもらったおカネで事業を行っているため、事業の進み具合をガラス張りにすることが大切です。

○資金管理は予算と決算

(1)おカネを集めることを資金調達、おカネを使うことを資金運用、資金管理はこの調達と運用、つまり資金の出入り(収支)をいかにムダなく、効率よく行うかが課題となる。
(2)会社は予め資金の収支についての計画(資金計画)を立て、実際のおカネの出し入れをこの資金計画に基づいて行うのが普通。この資金計画を事業面から見たものを予算という。それに対し決算は事業活動の結果を資金面から総括したもの。予算は取締役会で決めればいいが、決算は株主総会で承認を受けて初めて確定する。

財務諸表は会社の成績表(貸借対照表と損益計算書)

(1)会社の成績表をおカネの面から示す表を一口に財務諸表といい、貸借対照表と損益計算書が代表例。
(2)貸借対照表(バランスシート)は、資産の部と負債・資本の部がつねに等しくなっている。資産から負債を差し引くと資本になり、これが株主の持ち分となる。ストック(蓄え)の財務状況を示す。
(3)損益計算書は、会社が一定期間にモノやサービスを売って得た収入から、その収入を得るのに要した費用を差し引き、その結果、利益がいくらになったかを示しているもの。会社がどれだけもうけたか、あるいは損をしたのかを示すフロー(流れ)表。

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○会社の設立と発展

(1)発起人は資本金を集める。
(2)会社の憲法である「定款(ていかん)」をつくり、設立総会で承認を受ける。
(3)創立総会を開いて、取締役と監査役を選出する。
※株主がおカネを出し、取締役が株主の委託を受けて仕事をし、取締役の行動を監査役がチェックする。
(4)事業の拡大に合わせ、資本金を増やす(増資)。
(5)株式を公開し、証券市場へ上場する。※公開しない場合もある。
※会社が不渡り手形を6カ月以内に2回出すと、銀行から取り引きを停止され、代金決済が不可能になり倒産する。

◎チェックしよう

・証券取引所では株の値段が動きますが、なぜ動いているのかを考えてみよう。

日経スタッフ「会社入門」より

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■ステップ5 時代の中の会社■

 会社は時代の中で生きています。いま、会社が直面している課題は国際化と情報化への対応です。内外の会社が活発に交流し合う時代に、日本の会社がどう対応していくのかが問われています。コンピュータリゼーションへの準備も待ったなしですし、企業環境の変化で事業の再構築も必至です。地球環境問題の深刻化への対応も欠かせません。社会に受け入れられるための「よき企業市民」づくりも大切です。

○情報と情報化

 一つは文字どおり、会社がいろいろな意思決定をする際の材料となる情報。会社の運営に影響する質の高い情報をいかに素早く入手するかが必要となる。もう一つはコンピューターを中心とした情報化。企業経営の武器としてコンピューターをいかにうまく使いこなしていくかが大きな課題となっている。特にインターネットに代表される情報ネットワークを自由に駆使できる情報リテラシー(利用能力)を強化していくことが必須条件になっている。

○メガコンペティションとグローバル・スタンダード

 最近のグローバルな激しい競争の行われる時代をメガコンペティションという。東西冷戦が終結したため、政治的にも経済的にも「何でもあり」の状態となっている。グローバル・スタンダードは世界に通用する標準的な経営手法。会計制度が時価表示になり、連結決算の対象が拡大するなど国際会計基準に合うように制度が変わりつつある。持ち株会社の解禁や金融界のビッグバンもグローバル・スタンダードの流れだ。

○会社の転機

 日本経済が成熟期に入ったっため、会社の成長を低成長に合わせて会社を変えていこういうのがいまの流れ。能力主義の導入やリストラ、何でも事業に取り組めるための社名変更などドラスチックな変身が行われている。

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○会社と地球環境

 環境監査が注目されている。会社はおカネの出し入れを会計監査という形で社会に公表しているのと同様に企業の環境対策を目的として、通常の公害対策だけでなく、環境方針や組織的な責任体制の確立、環境保全計画の達成度など、企業の環境管理活動を定期的にチェックし、市民に情報提供する仕組みをいう。国際標準化機構(ISO)による国際規格がある。

○フィランスロピーとメセナ

 フィランスロピーは博愛とか慈善と訳され、会社のさまざまな社会的貢献活動や経済的寄付行為を指す。メセナはフランス語で「文化の擁護」という意味で、会社が文化活動を支援していこうというのが狙い。いずれも会社が社会を構成する一員として積極的に社会的責任を果たしていこうというもの。

○良い会社

 事業に全力投球し、優れた商品を出して健全な利益を上げ、株主や社員に報いる。そのあとの余裕資金で文化・社会活動を展開している会社は良い会社といえるでしょう。

◎チェックしよう

 会社と地域社会の関わりを調べてみよう。

日経スタッフ「会社入門」より