赤字なのに消費税を払うの?

赤字なのに消費税を払うの?

平成15年の税法改正により基準期間の課税売上高が1,000万円を超える事業主様は消費税を納める義務があると改正されました(それ以前は3,000万円でした)。

事業が赤字続きのお客様でしたが、この改正により「消費税課税事業者」になりました。この時お客様から「赤字でも消費税を納める必要があるのか」という憤りをぶつけられました。このお客様の場合は「赤字でもさらに消費税を納める必要があった」のです。


消費税の計算

消費税はあくまで最終消費者の支払う税金です。したがってこの事業者が売上時に受取る消費税は預かり金と考えますので納付する義務があるのです。

簡単な例でご説明します。売上が2,000万円の場合消費税(地方消費税含む)は5%ですから2,100万円受取っています。この100万円は預り消費税です。さてこの事業主様がその売り上げを立てるために1,200万円の仕入れ・道具購入・経費を費やしていたとしますと1,260万円を支払っています。この60万円は既に支払った仕入れに係る消費税です(課税仕入れ)。納付すべき消費税は売上時の預り消費税から仕入れに係る消費税を差し引いた金額となります。すなわち先の預かり消費税100万円から既に支払った仕入れに係る消費税60万円を差し引いた金額の40万円が納付すべき消費税となります。

この計算ならば赤字の事業主様は消費税を収める必要は無いと思いがちですが、仕入れ・経費の中には消費税を納めていないものがあります。まず、給与です。それから支払い保険・税金・印紙等には消費税がかかりません(非課税仕入れ、不課税仕入れ等)。すなわち仕入れ時に消費税を支払っていないので、売上時の預り消費税から差し引くことができないのです。

具体的な例では、売上2,000万円で給与を含む経費・仕入れが3,000万円の場合には1,000万円もの赤字ですが、3,000万円の内1,800万円が給与等であれば、消費税の課税仕入れは1,200万円のみであり、前記の例の様に40万円の差し引き消費税を納める必要があるのです。


消費税「納付」を「還付」に変えた

この事業主様が今回の確定申告消費税の還付を受けました。その経過をご説明します。

この事業主様の業務は大変天候に影響され、忙しい時には多くの人手が欲しいのですが暇な時には2名程の要員で運用できます。ことろが常用雇用及びパート・アルバイト合計で4~5名を雇用していました。その上、緊急時には更にアルバイト要員を数名追加して運用していたのです。その結果、前記の例のように「赤字申告なのに消費税を納める事業者」であったのです。

ところが昨年度から常用雇用は1名+アルバイト1名にしました。そして必要な時には外注に応援を依頼したのです。しかも地元のシルバーセンターを利用しましたので大変に喜ばれました。外注費用は先の説明でいう課税仕入れ(消費税を納めている経費)に当りますので、売上時の預り消費税から差し引くことができるのです。

具体的な例では、売上2,000万円で給与を含む経費・仕入れが3,000万円の場合、前例同様1,000万円の赤字です。でもこちらの場合給与等が800万円であれば課税仕入れ2,200万円ですので、既に支払った仕入れに係る消費税が110万円ですから、売上時の預り消費税100万円との差額▲10万円は還付を受けるのです。

この例の場合は40万円の納付を10万円の還付を受けることになったのですから、差し引き50万円の節税になったことになります。

業務を外注化したことによるメリットです。業務の外注化・アウトソーシングは、勿論、それができる業務とできない業務がありますが、この場合はメリットを有効に活かした具体例です。