2.4.3.大会社でない譲渡制限会社の機関設計

2.4.3.大会社でない譲渡制限会社の機関設計

 株式会社の4つのタイプのうち、数が最も多い「大会社でない譲渡制限会社」の機関設計にはどのようなものがあるのでしょうか。
 
 1.取締役のみ
 ----→「大会社でない譲渡制限会社」では、取締役を最低1名置けばいい。(会社法326条1項)
 これが基本設計である。取締役を1名以上置けばあとは任意となる。
 今まで有限会社で認められていた機関設計である。
 
 2.取締役+監査役
 ----→この形は、1番の基本形に監査役を任意に置いた場合だ。
 この形も、今まで有限会社で認められていた機関設計である。
 なお、この形の監査役の権限は定款で会計監査権限のみに限定することもできる。(会社法389条)
 
 3.取締役+監査役+会計監査人
 ----→この形は、1番の基本形に会計監査人を任意に置く場合だ。会計監査人を置くには、業務監査権限のある監査役を置くことが必要である。(会社法327条3項)
譲渡制限会社では会計監査人を置いても取締役会を設置する義務はない。
 「大会社でない譲渡制限会社」でも会計監査人を置くことができるようになった。
 
 4.取締役会+監査役
 ----→この形は、1番の基本形に取締役会を任意に設置した場合だ。取締役会を設置した場合は、監査役を必ず置かなければならない。(会社法327条2項・ただし、下記5番に例外あり)
 改正前の株式会社での機関設計である。
 なお、この形の監査役の権限は定款で会計監査権限のみに限定することもできる。(会社法389条)
 
 5.取締役会+会計参与
 ----→この形も1番の基本形に取締役会を任意に置いた場合であるが、上記4番の変形である。取締役会を設置した場合は、監査役を置かなければならないのが基本であるが、会計参与を置いた場合は例外的に監査役を置く必要がない。(会社法327条2項ただし書き)
 これは、上記4番の場合、会計監査権限のみの監査役でもいいことになっており(会社法389条)、会計について何も知らない会計監査権限のみの監査役を置くよりも公認会計士や税理士などの資格を持った会計参与を置く方が会社のためになるのではないかということで、取締役会を置いても会計参与を置けば監査役を置かなくてもいいことにしている。
 
 6.取締役会+監査役会
 ----→この形は1番の基本形に任意に監査役会を置いた場合である。
 会計監査人を置かなくても監査役会を設置できる。
 なお、監査役会を置く場合は、取締役会の設置義務がある。(会社法327条1項2号)
 
 7.取締役会+監査役+会計監査人
 ----→この形は、1番の基本形に取締役会と会計監査人を任意に置いた場合。会計監査人を置くには業務監査権限のある監査役が必ず必要である。(会社法327条3項)
「大会社でない譲渡制限会社」でも会計監査人を置くことができるようになった。
 
 8.取締役会+監査役会+会計監査人
 ----→この形は上記7番の場合に監査役でなく監査役会を置いた場合である。
監査役会を置いた場合は、取締役会の設置義務がある。(会社法327条1項2号)
 
 9.取締役会+委員会+会計監査人
 ----→この形は、委員会を設置した場合である。委員会を設置した場合は、取締役会と会計監査人を必ず置かなければならない。(会社法327条1項3号・327条5項)
 また、委員会を設置した場合は監査役を置くことはできない。(会社法327条4項)
 「大会社でない譲渡制限会社」でも委員会設置会社になることができるようになった。
 
 「大会社でない譲渡制限会社」では、以上9つのパターンの機関設計が考えられる。
なお、会計参与は、上記のどのパターンにも任意に設置できる。
 
 このように、「大会社でない譲渡制限会社」では定款に定めることにより自由に機関設計をすることができる。
 
▲ 新会社法の改正ポイント
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