6.発起設立と募集設立について

6.発起設立と募集設立について

 会社を設立するには、発起設立と募集設立がある。
 
 このうち、設立手続が簡単な発起設立で会社を設立するのが一般的で、募集設立で会社を設立するのは少数である。
 このため、発起設立に一本化する方向で検討されたが、下記事情を考慮して募集設立を存続させることになったようだ。
 
 1.多くの出資者がいる場合は、募集設立の方が使いやすい。
 2.発起人になりたがらない人もいる。
 3.外国人の発起人がいる場合、署名証明書の入手に困難を生じる。
 
 確かに、発起人になると原始定款に実印を押印する必要があり、公証役場で定款を認証する際には、間違いなく原始定款に発起人として記名押印したことを明らかにするため、印鑑証明書の添付を求められる。
 この場合、実印の押印や印鑑証明書を預けることをいやがる人がいることも事実である。
 また、外国人が発起人になる場合、日本に在留資格があり外国人登録している場合は、日本の印鑑証明書の発行を受けることが出来るが、外国人登録していない場合は、日本の印鑑証明書を発行してもらえない。
 この場合、定款に署名したサインが間違いなく本人の署名であることを国籍を有する本国官憲に証明してもらう必要があり、これがかなり面倒である。
 ただ、日本と同じ印鑑証明書の制度がある韓国などの場合は、韓国の印鑑証明書とその翻訳を付けるだけなので、この場合はそれほど大変ではないので発起設立の方がいいだろう。
 
 上記のような理由で募集設立の制度が残ったことになる。
 ただし、募集設立と発起設立では、下記の点に違いがある。
 
1.募集設立では、払込金保管証明書を金融機関に発行してもらう必要がある。(会社法64条)
なお、発起設立では、残高証明書などで足りる。
2.発起設立の場合における株式会社の設立時の取締役及び発起人(現物出資者又は財産の譲渡人を除く)が財産価格の調査について過失がないことを証明した場合には、填補責任を負わないものとする過失責任である(会社法52条2項)のに対し、募集設立の場合における株式会社の発起人及び設立時の取締役は、無過失の填補責任を負うものとされる。(会社法103条1項)
 これらは、募集設立の場合には、株式引受人を保護する必要があるからだ。
 
 このように、発起設立の方が断然設立しやすいので、余程のことがない限り発起設立で会社を設立することになる。
 
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