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■ 「もうGoogleを使うのはやめないか?」 デジタルの巨人たちの“行動追跡”から逃れる方法2018.10.11

 欧州でのGDPR施行など、知らぬ間に個人情報を企業に利用されている現状を懸念する動きが広がりつつあります。とはいえ、いわゆる“デジタルの巨人たち”が提供するサービスを使わずに生活するのは厳しいのも事実。そんな状況下で、「代替」のサービスを探す動きがあるのをご存じですか?

2018年10月10日 08時00分 公開

[宮田健,ITmedia]

予算もリソースも足りない会社が「働き方改革」を進めるには

 秋は多くのOSやアプリがアップデートされるタイミングです。毎年恒例のmacOSのアップデート、セキュリティ対策ソフト群、そしてWindows 10のメジャーアップデートも行われます(ただし、Windows 10はトラブルがあって一時停止されていますのでご注意を)。
 私自身も2018年9月25日に配信がスタートしたmacOS Mojaveを入れました。発表当時から「ダークモードの追加程度でさほど変化がない」といわれていたものの、個人的には、OSおよびWebブラウザ(Safari)のプライバシー保護機能に注目しており、最近ではメジャーな「Google Chrome」をサブに追いやり、Safariを常用するようになりました。

行動を「追跡」されるのが当たり前だからこそ
 インターネット上のサービスは、メール、検索、ドキュメント作成、地図、ストレージなど、そのほとんどが“無料”で使えるようになりました。これって、よく考えるとものすごいことだと思いませんか?
 今ではWebブラウザも「無料で使えて当たり前」と誰もが考えています。古くからインターネットに親しんでいる方は「Netscape」というブラウザをパッケージで買ってセットアップした経験があるかもしれませんが、もはや、それも忘れられつつある歴史なのかもしれません。近ごろはOSの大規模アップグレードですら無料ですし。
 ビジネスの原則に照らし合わせれば、それなりの工数を費やして開発したサービスを無料で提供できるということは、その投資を上回る何らかのリターンがあるはずです。サービスによっては、ごく一部の有料会員が全ての無料会員をまかなう、いわゆる「フリーミアム」的なビジネスモデルもあるでしょうが、ユーザーの利用状況を“追跡”し、そのデータを元に商売する、というケースも少なくありません。
 最近では、そのような追跡に関する懸念も大きくなりつつあります。欧州におけるGDPR(EU一般データ保護規則)の展開も、「どこまでが個人に属し、個人が管理すべき情報なのか」をはっきりさせるためのものだと思っています。
 「気にしないから考えない」のではなく、気にする人が一人でもいれば、それを保護するための仕組みを考えるべきでしょう。インターネット創生期の偉人、ティム・バーナーズ=リー氏が「個人情報をユーザーの手に戻すプロジェクト」、Solidを立ち上げたのも、現在のいき過ぎた情報集約をなんとかしたい、という思いの表れでしょう。
みんなが使うサービスの「代替」を持っておこう
 しかし、私たちの周りにはすでにとても便利な無料サービスがあふれていて、もはやそれらなしにはIT生活ができないほどになっています。無料ではありませんが、スマートフォンだって、利用履歴を取得されるデバイスであることを忘れてはいけません。
 私自身、メールはGmailを、検索はGoogleを多用しています。SNSは使わない判断をすれば何とかなるかもしれませんが、特にGoogleに関しては依存度が非常に高いと言わざるを得ません。皆さんもGoogleマイアクティビティを眺めてみれば、その依存度をはっきりと理解できるのではないかと思います。可視化できる仕組みを用意しているGoogleも立派ですね。
 そんなことをしているうちに、なかなか面白いページを教えてもらいました。Googleをやめたとして、“次はどうする”というのをみんなで投票する「No More Google」というページです。

 例えばWebブラウザの場合、シェアの高いGoogle Chromeの代わりに、FirefoxやVivaldi、Safariがランクインしていますし、あまりに強力になり過ぎたGoogle検索の代わりに、プライバシー保護と非トラッキングを掲げるDuck Duck Goが選ばれています。その他にも、私も聞いたことがなかったサービスがいっぱいあり、試しにWeb解析サービスのGoogle Analyticsの代替として名前が挙がっている「Matomo」(Piwik)を少し触ってみたところ、十分代替になり得るツールでびっくりしました。

 企業システムでは「ロックインはよくない」ということが定説になっていますが、個人でもこれは同様です。特定のサービスや企業に依存してしまうと、情報漏えいなどの問題に巻き込まれる可能性が高まります。
 幸い個人利用においては、サービスのスイッチングコストもさほどではありません。クラウドストレージサービスの乗り換えも簡単ですし、Webブラウザの変更もブックマークの移行程度で済むでしょう。常に“代わりはいくらでもいる”という状況を作っておくことは、無料サービスを利用する際の「自己防御」として、今後重要になっていくかもしれません。
 私もNo More Googleを見てから、iPhoneとmacOSの標準検索エンジンをDuck Duck Goに変えてみました。検索に若干コツがいりますが、思えば昔の検索エンジンは全てこんな感じで、答えが一発で出てくることなどありませんでしたね。少し懐かしい思いを持ちつつも、「一発で答えが出てくるのは、むしろ恐ろしいことではないか」とも感じます。
 今、もしかしたら“デジタルの巨人たち”の手のひらに乗せられているかも――そう感じたときには、ぜひ代替案を。変えてみたら意外と快適だった、と感じるかもしれませんよ。