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国引き

国引き
クニヒキ

登場する神:大国主命

出雲の土地はその昔「狭布の稚国(サヌノワカコク)」といって、細長く未完成な国だった。この小さな国土を眺めてつぶやくものがいた。「この国は初めから小さくつくられておる。わたしが造り足して縫い合わせてやろう」。この物語の英雄、八束水臣津野命(ヤツカミズオミツノミコト)、より有名な名前を出すならば大国主命だ。 大国主命は八岐大蛇退治のあと、出雲の地に住み着いた素盞鳴尊の子孫である。

さて、そう言うが早いか、大国主命は大きな鋤を取り出してさっそく仕事にとりかかった。彼はまず新羅の国の余りを切り取ると、「国来、国来(クニコ、クニコ)」と言いながら、太い綱でこれを引き寄せ、出雲の国土に縫いつけた。こうして今の出雲大社のうしろあたりの土地が加わった。その土地を引き寄せた綱が園の長浜で、つなぎ止めた杭が三瓶山といわれている。

さらに、国引きは続く。続いて北方の佐伎(サキ)の国の余りを同じように引いてきたのが今の平田市周辺、さらに良波(ヨナミ)の国から引いてきたのが今の松江市の北部、最後に高志(コシ)の国から引いてきたのが今の美保関で、このときの綱が今の弓が浜、つなぎとめた杭が大山となった。

こうして国引きが終わり、大国主命は持っていた杖を森に突き立て、何を思ったか「おうえ!!」と叫んだと伝わる。おそらく大事業を終えて、自ら作り上げた国を見渡して、歓喜と気合いのこもった声を上げたのだろう。このために、この地方は「意宇(オウ)」と呼ばれるようになったという。