0o0dグッ

国生み

国生み
クニウミ

登場する神:天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神、国之常立神、伊邪那岐命伊邪那美命生島神、足島神

さて、日本神話ではあまり馴染みのない、天地の始まりの話をしよう。北欧神話やギリシア神話、聖書の記述などにおいて、この世界の始まりはすなわち天空を統べる主神の誕生と深く結びついており、宇宙の誕生はそれぞれ、オーディン、ゼウス、唯一神の存在と深く結びついている。ところが日本神話における主神、天照大神とこの神話は必ずしも結びつくものではない。このあたりが日本神話の特異な点でもあり、この話が人々にあまり知られていない理由ともなっている。また、男女の肉体の相違、さらには性交についてけっこうな描写をしており、書いていて気恥ずかしいものがある。前置きはもういいか。読んでいただければ分かるだろう。

さて、「古事記」の本文の冒頭は、「天地の初発(ハジメ)の時、高天原(タカマガハラ=天空世界)に成りませる神の名は、天之御中主神、次に高御産巣日神、次に神産巣日神・・・・」と始まっている。この三神が造化三神(ゾウカノサンシン)と呼ばれる始まりの神々である。さあ、聞き覚えのある神の名は見あたっただろうか?あまりそういう方はいらっしゃらないかと思う。この三神と、続けて現れた二神を合わせて別天神(コトアマツカミ)五神という。まあ、宇宙という概念があまりなかった日本であるから、この神々によって宇宙というよりも、天、地、冥府という枠組みが漠然と作られたものと考えていいだろう。

そのあとの国之常立神、豊雲野神と続き、その後五組十柱の神々までを神世七代といい、二神一組で表されるものの最後以外は夫婦神ではない。この神々がさらに世界の詳細を作ったと考えられる。その神世七代の最後の神々が伊邪那岐命伊邪那美命である。日本神話上初めての夫婦神である。

この岐美二神は、天神(天之御中主神以下三神)に「この漂える国をよく修理め(オサメ)固めて完成せよ」と言われて、玉飾りの矛を授かった。この矛は天之瓊矛(アメノヌボコ)といって、二神は天浮橋に立ってその矛を下し、海水をかき鳴らして引き上げると、矛先からしたたり落ちる塩が積もり重なって島となった。これが淤能碁呂嶋(オノゴロジマ)である。

二神はこの島に降って天之御柱を立て、八尋殿を建てた。ある時伊邪那岐命伊邪那美命に「おまえの体はどのようにできているのだ?」と問うと、伊邪那美命は「私の体は段々に整ってきましたが、一カ所だけ整わないところがあります」と答えた。 伊邪那岐命はこれに答えて、「わしの身も段々に整ってきたが、一カ所だけでき過ぎのところがある。だから、わしの身の余分なところでおまえの身の足りないところを刺し塞いで、国土を生もうと思うが如何」と言った。 伊邪那美命もこれに賛同して、二神で天之御柱を逆に廻って反対側で出会って契り合うことにした。

二神が出会ったとき、伊邪那美命が先に「なんとすばらしい男性よ」と唱え、あとから伊邪那岐命が「なんと美しい女性よ」と唱えたという。それぞれが言い終わったあと、伊邪那岐命は「女が先に唱えたのはよくなかった」と言ったが、いくら神々でもここまで来て簡単に止まるものではない。体位を立てて交わり、生まれたのが蛭子神(=水蛭子(ヒルコ))と淡島であった。 蛭子神は発育が悪く、3歳になっても足が立たなかったので、二神は後に葦船に乗せて彼を海に流してしまう。

さて、初めの国生みに失敗した二神は改めて天神に伺いを立て、順序を変えて唱え、今度は正常位で交わって、生まれた子が淡路島、四国、隠岐、九州、壱岐、対馬、本州(大倭豊秋津嶋(オオヤマトトヨアキツシマ))の大八島の神霊である。土地としての島を生むことは、同時にその土地に宿る神霊を生み出すことでもあったようだ。この大八島の神霊の代表格が、生島神、足島神である。このあと、さらに小さな島々を生んで、国を生み終えてからさらに神々を産んだ。多くの神々がこの時に産まれ、最後に産まれたのが迦具土神であった。火の神である彼を産んだ事による悲劇が、この先この二神を大きく引き裂いていくことになるが、それはこの次項の禊祓で語ることにしよう。

八百万の神々