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禊祓

禊祓
ミソギハラエ

登場する神:伊邪那岐命伊邪那美命、迦具土神、菊理姫神、天照大神、素盞鳴尊、月読神

国生みの神、伊邪那岐命伊邪那美命は、数多くの子を持っていた。(系図参照) もっとも、妻の伊邪那美命がちゃんと懐妊したうえで産まれた子の数はたいして多くもなく、体のどこかの部分や、吐瀉物、ひどいのでは大便や尿(ユバリ)から生まれたものもいる。

懐妊のうえで産まれた最後の子が、火の神迦具土神であった。しかし、炎の固まりを産んだ母体も無事ではすまず、伊邪那美命は陰部を焼かれてその命を失う。そのことを嘆き悲しんだ伊邪那岐命は、手にした十握剣で産まれたばかりの我が子の首を切り落としてしまった。
 さらに、伊邪那岐命は亡き我が妻を連れ戻すために黄泉の国へとおもむく。そして夫婦は、再びお互いの顔を見ることができた。そして、伊邪那岐命伊邪那美命に再び現世へ戻って作りかけの国を共に完成させようと頼む。 伊邪那美命は、すでに黄泉国の食事をとってしまっていたので現世には戻れない決まりになっていたが、黄泉神と相談してみると言って殿内に入っていった。その際、伊邪那美命は「決して私を御覧にならないでくださいね」と言い置いていたのだが、あまりに長いので待ちかねた伊邪那岐命は、櫛の柱をかいて火をともし、中を覗いてしまった。すると、伊邪那美命の身に蛆がたかり、八雷神が化生していた。

伊邪那岐命が驚いて逃げ帰ろうとすると、伊邪那美命は恥をかかされたことを恨んで、黄泉国の軍隊や八雷神を差し向けて追ってきた。最後には伊邪那美命自身が夫の後を追って黄泉平坂(ヨモツヒラサカ)という黄泉の国と現世との境目でついに追いついた。この二柱の神は、ここで激しい言い争いを展開する。

そこに現れたのが黄泉の国に通じる道の番人である黄泉守道者(ヨモツモリミチヒト)と菊理姫神であった。 菊理姫神は、両者の言い分をよく聞いたうえでうまくその場を収め、黄泉平坂を千引岩(チビキノイワ)で塞いだ。二神はその岩越しに、「あなたの国の人を一日に千人絞め殺しますよ」「ならばわしは一日に千五百の産屋を立てよう」と言い合って別れた。これは人間の寿命が定まったという神話でもあり、伊邪那美命はこのときから死の国の神、人間の寿命を司る神ともなった。結局、伊邪那岐命はなんとか無事に黄泉の国を脱出することができたわけである。

さて現世へと帰ってきた伊邪那岐命だが、冥界へ行ったままの体では何かと気分が悪い。そこで日向(ヒムカ=宮崎県)の橘小門(タチバナノオド)の阿波岐原(アワギハラ)というところでおこなったのが禊祓である。つまりは清涼な流れの中で、我と我が身を清める儀式のことである。さて、その禊祓の最中に不思議なことが起きた。 伊邪那岐命の両目と鼻から神が生まれてきたのだ。彼が望んでそうしたのか、洗ってみたら出てきたのかは定かでない。とにかく、そのときに左目から生まれたのが天照大神、右目から生まれたのが月読神、鼻から生まれたのが素盞鳴尊であった。彼らの持つ力はすさまじいものだったようで、伊邪那岐命天照大神には天(昼)を、月読神には夜を、そして素盞鳴尊には海原を、それぞれ治めるように命じたという。

彼ら三神は三貴神、または三貴子と呼ばれ、日本の神話を語るうえで欠かせない存在となってゆく。