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資金繰り破綻を回避するための金融機関とのつき合い方

資金繰り破綻を回避するための金融機関とのつき合い方

2007 / 9 / 19
山田ビジネスコンサルティング㈱ 税理士 天野祐一郎

 帝国データバンクによると、2007年上期の倒産件数は前年同期と比較して16.6%増加しています(2006年上期は4,625件、2007年上期は5,394件)。負債総額が減少する一方で倒産件数が大幅に増加しているのは、大型倒産の件数が少なくなり、中堅・中小・零細企業の倒産が増加していることを意味します。売上の減少や原価の高騰など営業上の問題点を契機に、金融機関の目線が厳しくなり、運転資金や設備投資に対する追加融資を受けられず、最終的に資金繰り破綻に陥ってしまうというケースが多々見受けられます。
(帝国データバンク倒産集計資料参考URL:http://www.tdb.co.jp/report/tosan/syukei/07kami.html

 中堅・中小・零細企業は資金調達の手段が限られており、資金を手当てしてくれる金融機関とのつき合い方は重要な経営課題の一つとなります。営業の内容は変わらずとも、金融機関とのつき合い方の良し悪しで、倒産する・しないが変わってくることさえあります。
 また、地方銀行の破綻、都市銀行の再編、不良債権処理問題等、金融機関を取り巻く環境が激変し、金融機関は厳しい枠組みの中で融資を行うようになりました。かつてのように、担保があれば資金調達が可能であった時代ではなく、各企業が個別具体的に財務力の審査を受けるようになりました。

 このような環境下において金融機関が企業をどのように見るのか、また、企業が金融機関に対してどのように接していくべきかについて以下まとめてみます。

1.格付け方法
 金融機関が貸出し企業に対し格付け評価を行う際には、金融検査マニュアル平成12年、金融庁の発足により、金融機関が金融検査マニュアルに従って金融庁に検査されることとなった)に従い、その企業の「収益性」と「安全性」を特に重視します。

 金融機関側から見る「収益性」は、会社がどれだけの収益を生むことができ、その収益をもとに貸付金を何年で回収することができるのかという視点で捉えられます。「安全性」については、会社の実態自己資本や資金状況から倒産するリスク、加えて、万が一倒産した場合に銀行が貸付金を回収することができるのかという貸付金の保全状況、の両方の視点から捉えられます。収益性と安全性を主な指標として、格付けは、正常先・要注意先・要管理先・破綻懸念先・実質破綻先の5段階に評価されます。新規取引・追加融資等を受けるには「正常先」でないと難しいケースが多いです。

 正常先と評価される最低限の要件として、一般事業会社の場合、借入金償還年数【(有利子負債合計-正常運転資金)÷税引き後キャッシュ・フロー】が7年~10年、実態自己資本がプラスであること、不動産事業会社の場合、借入金償還年数が20年~30年(不動産の耐用年数により変わることがある)、実態自己資本がプラスであることが必要です。

 これらは直近の決算書3期分によって単純に計算されますが、新規に取引をする場合や追加資金の要請などの場合には、事業計画書、時価貸借対照表、資金繰り表、借入返済予定表等様々な資料が必要になってくるケースがあります。特に事業計画書は、将来どれくらいの収益があり、借入金の返済がいかに可能であるかを示す資料ともなり、これら資料のなかで最も重要であるといえます。

 事業計画を作る際の注意点として、感情や思いを入れすぎないこと、言い換えると夢を語るだけの事業計画にならないこと、このような事業計画書を金融機関は評価してくれません。客観的で具体的な事業計画書が必要となります。その具体的な作成方法としては、客観的に分析した市場動向や企業の中で現実的に予想しえる定性・定量情報を成行き予測の損益計算書に加味する等の方法があります。

2.人的関係
 金融検査マニュアル、格付け等、金融機関は画一的に判断をすることを基本としているように見えますが、人的関係の良好ということも非常に重要なことです。良好な関係がなければ追加資金の要請や事業に関係のある情報の提供もいただけないでしょう。

 ただし、関係を良好にするといっても、ひたすら接待する必要があるわけではなく、例えば、業況の良くない時でも毎月月次の報告をしに金融機関を訪問したり、決算期には社長と税理士の先生で説明に行くなどして、継続的に金融機関に報告をし、おつき合いすることが、緊急時に対応してくれるきっかけになります。

3.RCC・サービサー対応
 取引金融機関の破綻、または金融機関からの格付けの低下により整理回収機構(RCC)、債権回収会社(サービサー)に債権が譲渡されることがあります。このような事態に陥った場合、まず落ち着いて対応することが重要です。名前だけ聞いて、突然、差し押さえ、競売をされるのではないかと相談されるケースが良くありますが、差し押さえ・競売をされるようなケースは少なく、むしろ経営状態及び財務状態を良くしていくチャンスであると捉えるべきです。

 RCCやサービサーに債権が譲渡される場合、概ね簿価よりも低い金額で行われることが多く、言い換えると債務カットを要請できるチャンスであると考えることもできます。
 この際に必要となる資料も上記で述べた銀行取引の際に必要な資料と同様で、なかでも重要な資料が事業計画書となります。客観的な事業計画を作成し、現在返済できる金額(返済期間10年~15年)を先方に示すことで、残債務についてカットを交渉していくという手順が考えられます。

http://nvc.nikkeibp.co.jp/report/keiri/rashinban/20070919_000738.html