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電子帳簿保存法一問一答-電子取引関係

【電子取引関係】

令和3年7月

国 税 庁

目 次

Ⅰ 通則
【制度の概要等】

問1
電子取引の制度はどのような内容となっていますか。
問2
電子取引とは、どのようなものをいいますか。
問3
電子メールを受信した場合、どのように保存すればよいのでしょうか。
問4
当社は以下のような方法により仕入や経費の精算を行っていますが、データを保存しておけば出力した書面等の保存は必要ありませんか。
問5
電子取引には、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む。)が該当するとのことですが、全ての電子メールを保存しなければなりませんか。
問6
当社は、取引先からクラウドサービスを利用して請求書等を受領しておりますが、クラウドサービスを利用して受領した場合には、電子取引に該当しますか。
問7
いわゆるスマホアプリによる決済を行いましたが、この際にアプリ提供事
業者から利用明細等を受領する行為は、電子取引に該当しますか。 ・・・・・・・・ 5
問8 従業員が会社の経費等を立て替えた場合において、その従業員が支払先か
ら領収書を電子データで受領した行為は、会社としての電子取引に該当しま
すか。該当するとした場合には、どのように保存すればよいのでしょうか。 ・・・・・・・・ 5
問9 当社の課税期間は、令和3年4月1日から令和4年3月 31日までですが、
令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報については、課税期間の途
中であっても、令和3年度の税制改正後の要件で保存しなければならないの
でしょうか。 ・・・・・・・・ 6
問 10 当社の課税期間は、令和3年4月1日から令和4年3月 31日までですが、
令和4年1月1日以後に保存を行えば、同日前に行った電子取引の取引情報
について、令和3年度の税制改正後の保存要件に従って保存することは認め
られますか。 ・・・・・・・・ 6
Ⅱ 適用要件
【基本的事項】
問 11 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等を行う場合には、どのよう
な要件を満たさなければならないのでしょうか。 ・・・・・・・・ 7
問 12 妻と2人で事業を営んでいる個人事業主です。取引の相手方から電子メー
ルにPDFの請求書が添付されて送付されてきました。一般的なパソコン
使用しており、プリンタも持っていますが、特別な請求書等保存ソフトは使
用していません。どのように保存しておけばよいですか。 ・・・・・・・・ 7
問 13 ディスプレイやプリンタ等について、性能や事業の規模に応じた設置台数
等の要件はありますか。 ・・・・・・・・ 8
問 14 税務当局から電磁的記録の書面への出力を求められた場合には、画面印刷
(いわゆるハードコピー)による方法も認められますか。 ・・・・・・・・ 8
問 15 電磁的記録を外部記憶媒体へ保存する場合の要件はどういうものがありま
すか。 ・・・・・・・・ 9
問 16 電磁的記録の検索機能は、現在使用しているシステムにおいて確保しなけ
ればならないのでしょうか。 ・・・・・・・・ 9
問 17 保存対象となるデータ量が膨大であるため複数の保存媒体に保存してお
り、一課税期間を通じて検索できませんが、問題はありますか。 ・・・・・・・・ 9
問 18 バックアップデータの保存は要件となっていますか。 ・・・・・・・・ 10
問 19 いわゆるオンラインマニュアルやオンラインヘルプ機能にシステム概要書
と同等の内容が組み込まれている場合、システム概要書が備え付けられてい
るものと考えてもよいでしょうか。 ・・・・・・・・ 10
問 20 クラウドサービスの利用や、サーバを海外に置くことは認められますか。 ・・・・・・・・ 10
問 21 電子取引で授受したデータについて、所得税法・法人税法と消費税法で取
扱いにどのような違いがあるのですか。 ・・・・・・・・ 11
【保存方法】
問 22 請求書や領収書等を電子的に(データで)受け取った場合、どのように保
存すればよいですか。 ・・・・・・・・ 12
問 23 電子取引の取引データの保存について、複数の改ざん防止措置が混在する
ことは認められますか。また、電子データの格納先(保存場所)を複数に分
けることは認められますか。 ・・・・・・・・ 12
問 24 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に当たり、規則第4条第1項
第4号に規定する「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理
の規程」を定めて運用する措置を行うことを考えていますが、具体的にどの
ような規程を整備すればよいのでしょうか。 ・・・・・・・・ 13
問 25 当社は、電子取引の取引情報の保存サービスの提供を受け、同サービス利
用者同士の電子取引の取引情報については、同サービスにおいて保存されま
す。同サービス利用者は、同サービス提供者と契約し、同サービスの利用規
約に定めるデータ訂正等の防止に関する条項にのっとりデータの訂正削除を
行うこととなります。
このようにサービス提供者との契約によってデータの訂正等を防止する方
法についても、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規
程」を定める方法として認められますか。 ・・・・・・・・ 17
問 26 当社は、取引先との間で、クラウドサービスを利用し請求書を受領してい
ます。この場合において、取引先から確認のため電子メールでも請求書が送
られてきましたが、同一の請求書を2つの電子取引により受領したときには、
どちらの電子データを保存すればよいでしょうか。 ・・・・・・・・ 18
問 27 電子取引を行った場合において、取引情報をデータとして保存する場合、
どのような保存方法が認められるでしょうか。 ・・・・・・・・ 18
問 28 当社はスキャナ保存制度を利用しており、スキャニングした画像データを
管理するための文書管理システムで保有しております。今回、電子取引によ
り受領したPDFデータについても、この文書管理システムで管理すること
を検討していますが問題ありますでしょうか。 ・・・・・・・・ 19
問 29 当社はクラウドサービスを利用して取引先とXML形式の請求書等データ
(取引情報に関する文字の羅列)をクラウドサービス上で共有・保存してい
ますが、このような方法は認められますか。 ・・・・・・・・ 20
問 30 具体的にどのようなシステムであれば、訂正又は削除の履歴の確保の要件
を満たしているといえるのでしょうか。 ・・・・・・・・ 20
検索機能】
問 31 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に当たり、検索機能で注意す
べき点はありますか。 ・・・・・・・・ 21
問 32 規則第2条第6項第6号ハの「二以上の任意の記録項目を組み合わせて条
件を設定することができること」には、「AかつB」のほか「A又はB」と
いった組合せも含まれますか。また、一の記録項目により検索をし、それに
より探し出された記録事項を対象として、別の記録項目により絞り込みの検
索をする方式は、要件を満たすこととなりますか。 ・・・・・・・・ 21
問 33 当社には電子取引の取引データを保存するシステムがありませんが、電子
取引の取引データを保存する際の検索機能の確保の要件について、どのよう
な方法をとれば要件を満たすこととなりますか。 ・・・・・・・・ 22
問 34 電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存する際の要件のうち、検索
能の確保の要件が不要とされる場合の「判定期間に係る基準期間の売上高が
1,000万円以下の場合」とは、どのように判断すればよいのでしょうか。 ・・・・・・・・ 23
【タイムスタンプ】
問 35 一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプと
はどのようなものでしょうか。 ・・・・・・・・
問 36 「速やかに」タイムスタンプを付与することとしている場合で、やむを得
ない事由によりおおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与できない場合
は要件違反となるのでしょうか。 ・・・・・・・・ 24
問 37 「業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行う」とは何日以
内にタイムスタンプを付与すればよいのでしょうか。 ・・・・・・・・ 25
その他
問 38 自社で使用する電子取引用のソフト等について、電子帳簿保存法の要件を
満たしているか分からないのですが、どのようにしたらよいですか。 ・・・・・・・・ 26
問 39 公益社団法人日本文書情報マネジメント協会により認証されたソフトウェ
ア等とはどのようなものでしょうか。 ・・・・・・・・ 26
問 40 電子データに関連して改ざん等の不正が把握されたときには重加算税が加
重されるとのことですが、具体的にはどのような場合に加重の対象となるの
でしょうか 。 ・・・・・・・・ 27
問 41 電子取引等において、「災害その他やむを得ない事情」を証明した場合に
保存要件が不要となる旨の規定が設けられていますが、そのような事情があ
れば、電磁的記録の保存自体不要になるのでしょうか。 ・・・・・・・・ 27
問 42 電子取引の取引情報に係る電磁的記録について保存要件を満たして保存で
きないため、全て書面等に出力して保存していますが、これでは保存義務を
果たしていることにはならないため青色申告の承認が取り消されてしまうの
でしょうか。また、その電磁的記録や書面等は税務調査においてどのように
取り扱われるのでしょうか。 ・・・・・・・・ 28

用語の意義

本一問一答において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ次に定めるところによる。

法 ························· 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等
の特例に関する法律をいう。
令3改正法 ················· 所得税法等の一部を改正する法律(令和3年3月31日法律第11
号)をいう。
規則 ······················· 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等
の特例に関する法律施行規則をいう。
取扱通達 ··················· 平成 10 年5月 28 日付課法5-4ほか6課共同「電子帳簿保存
法取扱通達の制定について」(法令解釈通達)をいう。
国税 ······················· 法第2条第1号*1に規定する国税をいう。
国税関係帳簿書類 ··········· 法第2条第2号*2に規定する国税関係帳簿書類をいう。
国税関係帳簿 ··············· 法第2条第2号*3に規定する国税関係帳簿をいう。
国税関係書類 ··············· 法第2条第2号*4に規定する国税関係書類をいう。
電磁的記録 ················· 法第2条第3号*5に規定する電磁的記録をいう。
保存義務者 ················· 法第2条第4号*6に規定する保存義務者をいう。
電子取引 ··················· 法第2条第5号*7に規定する電子取引をいう。
スキャナ保存 ··············· 法第4条第3項前段*8の適用を受けている国税関係書類に係る電磁的記録による保存を
いう。

Ⅰ 通則
【制度の概要等】

問1
電子取引の制度はどのような内容となっていますか。
【回答】
所得税(源泉徴収に係る所得税を除きます。)及び法人税の保存義務者が取引情報(注文書、領収書等に通常記載される事項) を電磁的方式により授受する取引(電子取引)を行った場合には、その取引情報を電磁的記録により保存しなければならないという制度です(法7)。
【解説】
所得税法及び法人税法では、取引に関して相手方から受け取った注文書、領収書等や相手方に交付したこれらの書類の写しの保存義務が定められていますが、同様の取引情報を電子取引により授受した場合には、その取引情報に係る電磁的記録を一定の方法により保存しなければならないこととされています。
なお、帳簿書類の電磁的作成、備付け、保存に関しては、別冊「電子帳簿保存法一問一答
【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」において、スキャナ保存に関しては、別冊「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」において解説します。
(法7)
(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
問2
電子取引とは、どのようなものをいいますか。
【回答】
「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいいます(法2五)。
なお、この取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。
具体的には、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引
情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等をいいます。
(法2五)
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
五 電子取引 取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。
問3
電子メールを受信した場合、どのように保存すればよいのでしょうか。
【回答】
電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)を行った場合についても電子取引に該当するため(法2五)、その取引情報に係る電磁的記録の保存が必要となります(法7)。具体的に、この電磁的記録の保存とは、電子メール本文に取引情報が記載されている場合は当該電子メールを、電子メール添付ファイルにより取引情報(領収書等)が授受された場合は当該添付ファイルを、それぞれ、ハードディスク、コンパクトディスク、DVD、磁気テープ、クラウド(ストレージ)サービス等に記録・保存する状態にすることをいいます。
問4
当社は以下のような方法により仕入や経費の精算を行っていますが、データを保存しておけば出力した書面等の保存は必要ありませんか。
⑴ 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
⑵ インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショットを利用
⑶ 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
⑷ クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
⑸ 特定の取引に係るEDIシステムを利用
⑹ ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
⑺ 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領
【回答】
⑴~⑺のいずれも「電子取引」(法2五)に該当すると考えられますので、所定の方法により取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)に係るデータを保存しなければなりません(令和3年度の税制改正前はそのデータを出力した書面等により保存することも認められていましたが、改正後は、当該出力した書面等の保存措置が廃止され、当該出力した書面等は、保存書類(国税関係書類以外の書類)として取り扱わないこととされました。
データ保存に当たっては、以下の点に留意が必要です。
イ ⑴及び⑵については一般的に受領者側におけるデータの訂正削除が可能と考えますので、
受領したデータに規則第4条第1項第1号のタイムスタンプの付与が行われていない場合
には、受領者側でタイムスタンプを付与すること又は同項4号に定める事務処理規程に基
づき、適切にデータを管理することが必要です。また、対象となるデータは検索できる状
態で保存することが必要ですので、当該データが添付された電子メールについて、当該メ
ールソフト上で閲覧できるだけでは十分とは言えません。
ロ ⑶~⑸については、取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)に係るデータについて、訂正削除の記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用していれば、電子取引の保存に係る要件を満たすと考えられます。他方例えば、クラウド上で一時的に保存されたデータをダウンロードして保存するようなシステムの場合には、イと同様の点に留意する必要があります。
ハ ⑹及び⑺については、一般的に受領者側におけるデータの訂正削除が可能と考えますので、受領したデータに規則第4条第1項第1号のタイムスタンプの付与が行われていない場合には、受領者側でタイムスタンプを付与すること又は同項第4号に定める事務処理規程に基づき、適切にデータを管理することが必要です。
ニ ⑴~⑺のいずれの場合においても、データは各税法に定められた保存期間が満了するまで保存する必要があります。
ホ 取引慣行や社内のルール等により、データとは別に書面の請求書や領収書等を原本として受領している場合は、その原本(書面)を保存する必要があります。
ヘ 現行、消費税の仕入税額控除の適用に当たっては、必要な事項が記載された帳簿及び請求書等(書面)の保存が必要ですが、取引金額が3万円未満の場合や、3万円以上でも「電子取引」のようにデータのみが提供されるなど、書面での請求書等の交付を受けなかったことにやむを得ない理由がある場合には、帳簿のみを保存することにより仕入税額控除の適用を受けることができます。なお、令和5年10月以降は、帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を受けることができるのは、法令に規定された取引に限られることとなります。
したがって、「電子取引」を行った場合に仕入税額控除の適用を受けるためには、軽減税率の対象品目である旨や税率ごとに合計した対価の額など適格請求書等として必要な事項を満たすデータ(電子インボイス)の保存が必要となります。
また、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力した書面等については、保存書類(国税関係書類以外の書類)として取り扱わないこととされましたが、消費税法上、電子インボイスを整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面を保存した場合には、仕入税額控除の適用を受けることができます。
問5
電子取引には、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む。)が該当するとのことですが、全ての電子メールを保存しなければなりません
か。
【回答】
この取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、領収書等に通常記載される事項をいう(法2五)ことから、電子メールにおいて授受される情報の全てが取引情報に該当するものではありません。したがって、そのような取引情報の含まれていない電子メールを保存する必要はありません。
具体的には、電子メール本文に取引情報が記載されている場合は当該電子メールを保存する必要がありますが、電子メール添付ファイルにより授受された取引情報(領収書等)については当該添付ファイルのみを保存しておけばよいことになります。
問6
当社は、取引先からクラウドサービスを利用して請求書等を受領しておりますが、クラウドサービスを利用して受領した場合には、電子取引に該当しますか。
【回答】
クラウドサービスを利用して取引先から請求書等を受領した場合にも、電子取引に該当します。
【解説】
請求書等の授受についてクラウドサービスを利用する場合は、取引の相手方と直接取引情報を授受するものでなくても、請求書等のデータをクラウドサービスにアップロードし、そのデータを取引当事者双方で共有するものが一般的ですので、取引当事者双方でデータを共有するものも取引情報の授受にあたり、電子取引に該当します。
問7
いわゆるスマホアプリによる決済を行いましたが、この際にアプリ提供事業者から利用明細等を受領する行為は、電子取引に該当しますか。
【回答】
アプリ提供事業者から電磁的方式により利用明細等を受領する行為は、電子取引に該当します。そのため、当該利用明細等に係る取引データについて保存する必要があります。
【解説】
いわゆるスマホアプリを利用した際に、アプリ提供事業者から受領する利用明細に係る内容には、通常、支払日時、支払先、支払金額等が記載されていることから、法第2条第5号に規定する取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)に該当し、その取引情報の授受を電磁的方式より行う場合には、電子取引に該当しますので、取引データを保存する必要があります(保存方法については【問 27】等を参照してください。)。
※ 消費税の仕入税額控除に関しては、【問4】の回答を参照してください。 
問8
従業員が会社の経費等を立て替えた場合において、その従業員が支払先から領収書を電子データで受領した行為は、会社としての電子取引に該当しますか。該当するとした場合には、どのように保存すればよいのでしょうか。
【回答】
従業員が支払先から電子データにより領収書を受領する行為についても、その行為が会社の行為として行われる場合には、会社としての電子取引に該当します。そのため、この電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、従業員から集約し、会社として取りまとめて保存し、管理することが望ましいですが、一定の間、従業員のパソコンやスマートフォン等に保存しておきつつ、会社としても日付、金額、取引先検索条件に紐づく形でその保存状況を管理しておくことも認められます。
なお、この場合においても、規則第4条第1項各号に掲げる措置を行うとともに、税務調査の際には、その従業員が保存する電磁的記録について、税務職員の求めに応じて提出する等の対応ができるような体制を整えておく必要があり、電子データを検索して表示するときは、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるように管理しておく必要があります(【問 23】参照)。
【解説】
法人税法上、会社業務として従業員が立替払いした場合には、原則、当該支払が会社の費用として計上されるべきものであることから、従業員が立替払いで領収書を電子データで受領した行為は、会社の行為として、会社と支払先との電子取引に該当すると考えることができます。そのため、この電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、従業員から集約し、会社として保存し、管理する必要がありますが、会社の業務フロー上、打ち出された紙ベースでの業務処理が定着しており、直ちに電子データを集約する体制を構築することが困難な場合も存在することも想定され得ることから、一定の間、従業員のパソコンやスマートフォン等により、請求書データを格納する方法により保存することを認めることを明らかにしたものです。なお、この場合においても、当該電子データの真実性確保の要件等を満たす必要があることから、例えば、正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理規程に従って保存を行う等、規則第4条の規定に従って保存を行う必要があります。
また、このような場合であっても、本社の経理部等において一定の方法により規則性をもって検索することが可能な体制を構築することが求められるのは、税務調査の際には、税務職員の求めに応じて電磁的記録の提出を行う等の対応が求められることから、円滑に集約が行えるような状態として保存しておく必要があるためです。したがって、結果とし、税務調査の際に保存データの検索を行うに当たって特段の措置が取られておらず、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができないような場合には、会社として、その電磁的記録を適正に保存していたものとは認められない点に注意してください。
問9
当社の課税期間は、令和3年4月1日から令和4年3月31日までですが、令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報については、課税期間の途中であっても、令和3年度の税制改正後の要件で保存しなければならないのでしょうか。
【回答】
令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報については、改正後の保存要件により保存しなければなりません。
【解説】
令和3年度税制改正における電子帳簿保存法の改正の施行日は令和4年1月1日であり、同日以後に行う電子取引の取引情報については改正後の要件に従って保存を行う必要があります(令3改正法附則 82⑥)。
したがって、同一課税期間に行う電子取引の取引情報であっても、令和3年 12 月 31 日までに行う電子取引と令和4年1月1日以後行う電子取引とではその取引情報の保存要件が異なることとなりますので注意してください。
問 10
当社の課税期間は、令和3年4月1日から令和4年3月 31 日までですが、令和4年1月1日以後に保存を行えば、同日前に行った電子取引の取引情報について、令和3年度の税制改正後の保存要件に従って保存することは認められますか。
【回答】
令和4年1月1日前に行った電子取引の取引情報については、改正後の保存要件により保存することは認められません。
【解説】
令和3年度税制改正における電子帳簿保存法の改正の施行日は令和4年1月1日であり、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度に関する改正は、同日以後に行う電子取引の取引情報について適用することとされています(令3改正法附則 82⑥)。そのため、同日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、改正後の保存要件により保存を行わなければならないこととされています。一方で、同日前に行った電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、改正後の保存要件により保存することは認められませんので、その電磁的記録について、改正前の保存要件(記録項目が限定される等の措置が講じられる前の検索機能の確保の要件等)を満たせないものについては、その電磁的記録を出力した書面等を保存して頂く必要があります(同日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、今回の改正が適用され、電磁的記録を出力した書面等を保存する措置は廃止されますので注意してください。)。

Ⅱ 適用要件
【基本的事項】

問11
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等を行う場合には、どのような要件を満たさなければならないのでしょうか。
【回答】
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等に当たっては、真実性や可視性を確保するための要件を満たす必要があります(規則2②一イ 、二、⑥六、七、4①)。
なお、詳しくは下記の表をご覧ください。 ○ 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等を行う場合の要件の概要

要 件

電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合に限ります。)
(規2②一イ、⑥七、4①)

見読可能装置の備付け等(規2②二、4①)

検索機能の確保(規⑥六、4①)
次のいずれかの措置を行う(規4①)
一 タイムスタンプが付された後の授受
二 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
※ 括弧書の取扱いは、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関
する規程を定めている場合に限る。
三 データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
四 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け

問12
妻と2人で事業を営んでいる個人事業主です。取引の相手方から電子メールPDFの請求書が添付されて送付されてきました。一般的なパソコンを使用しており、プリンタも持っていますが、特別な請求書等保存ソフトは使用していません。どのように保存しておけばよいですか。
【回答】
例えば、以下のような方法で保存すれば要件を満たしていることとなります。
1 請求書データ(PDF)のファイル名に、規則性をもって内容を表示する。
例) 2022年(令和4年)10月31日に株式会社国税商事から受領した110,000円の請求書
⇒「20221031_㈱国税商事_110,000」
2 「取引の相手先」や「各月」など任意のフォルダに格納して保存する。
3 【問24】に記載の規程を作成し備え付ける。
※ 税務調査の際に、税務職員からダウンロードの求めがあった場合には、上記のデータに
ついて提出してください。
※ 判定期間に係る基準期間(通常は2年前です。)の売上高が 1,000 万円以下であり、上
記のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、上記1の設定は
不要です。
【解説】
令和3年度の税制改正により電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、電磁的記録を出力した書面等を保存する措置は廃止され、その電磁的記録(データ)を保存しなければならないこととされました。
請求書データ等の保存に当たっては、一定の要件に従った保存が必要ですが、上記の方法により保存することで要件を満たすこととなると考えられます。
なお、上記1の代わりに、索引簿を作成し、索引簿を使用して請求書等のデータを検索する方法によることも可能です。

(索引簿の作成例)
受領した請求書等データのファイル名に連番を付して、内容については索引簿で管理する。

※ 上記の索引簿(サンプル)については、こちらからダウンロードできます。

問13
ディスプレイやプリンタ等について、性能や事業の規模に応じた設置台数等の要件はありますか。
【回答】
ディスプレイやプリンタ等の性能や設置台数等は、要件とされていません。
【解説】
電磁的記録は、その特性として、肉眼で見るためにはディスプレイ等に出力する必要がありますが、これらの装置の性能や設置台数等については、①税務調査の際には、保存義務者が日常業務に使用しているものを使用することとなること、②日常業務用である限り一応の
性能及び事業の規模に応じた設置台数等が確保されていると考えられることなどから、法令上特に要件とはされていません。
ただし、規則第2条第2項第2号では、ディスプレイ等の備え付けとともに、「速やかに出力することができる」ことも要件とされています。このため、日常業務においてディスプレイ等を常時使用しているような場合には、税務調査では帳簿書類を確認する場面が多いことから、税務調査にディスプレイ等を優先的に使用することができるよう、事前に日常業務との調整などを行っておく必要があると考えます。
問14
税務当局から電磁的記録の書面への出力を求められた場合には、画面印刷(いわゆるハードコピー)による方法も認められますか。
【回答】
規則第2条第2項第2号において、電磁的記録の画面及び書面への出力は「整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができる」ことと規定されており、この場合の「整然とした形式」とは、書面により作成される場合の帳簿書類に準じた規則性を有する形
式をいいます(取扱通達4-8)。
そのため、整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できれば、画面印刷(いわゆるハードコピー)であっても認められます。
なお、この取扱いは、画面及び書面に出力することができるようにしておくことを意味するものであり、電子取引に係る電磁的記録を出力した書面等を保存することを認めるものではありませんので注意してください。
【解説】
税務調査の際の電磁的記録の画面及び書面への出力に当たっては、書面により作成される場合の帳簿書類に準じた規則性を有する形式になっている必要がありますが、その形式については定めがないため、画面印刷(いわゆるハードコピー)であっても要件を満たせば認め
られます。
問15
電磁的記録を外部記憶媒体へ保存する場合の要件はどういうものがありますか。
【回答】
記憶媒体の種類にかかわらず保存要件は同じであり、外部記憶媒体に限った要件はありません。
【解説】
電子帳簿保存法では、記憶媒体や保存すべき電磁的記録を限定する規定はないことから、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存媒体については保存義務者が任意に選択することができることとなります。
また、保存要件に関しても記憶媒体ごとに規定されていないことから、いずれの記憶媒体であっても同一の要件が適用されることとなります。
なお、実際のデータの保存に際しては、サーバ等で保存していた電磁的記録と外部記憶媒体に保存している電磁的記録は当然に同一のものでなければなりません。このため、必要に応じて電磁的記録の保存に関する責任者を定めるとともに、管理規則を作成し、これを備え付けるなど、管理・保管に万全を期すことが望ましいと考えられます。
問16
電磁的記録の検索機能は、現在使用しているシステムにおいて確保しなければならな
いのでしょうか。
【回答】
現在使用しているシステムにより検索できなくても差し支えありません。
【解説】
規則第2条第6項第6号に規定する検索機能については、特に電子計算機についての定めはなく、また、規則第2条第2項第2号に係る出力機能についても「当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機」を備え付ければよいこととされていることから、これらの規定を満たすことができる電子計算機であれば、現在の業務において使用している電子計算機でなくても差し支えないこととなります。
例えば、システム変更等をした場合に、変更前のデータについては、変更前のシステムにおいて検索機能を確保している場合などがこれに該当します。
なお、このような場合には、検索に使用する電磁的記録が要件を満たして保存してある電磁的記録と同一のものであることを確認できるようにしておく必要があります。
問17
保存対象となるデータ量が膨大であるため複数の保存媒体に保存しており、一課税期間を通じて検索できませんが、問題はありますか。
【回答】
保存されている電磁的記録は、原則として一課税期間を通じて検索をすることができる必要があります。
【解説】
国税関係書類の電磁的記録の検索機能については、「その範囲を指定して条件を設定することができる」とは、課税期間ごとに日付又は金額の任意の範囲を指定して条件設定を行い検索ができることをいうとされており(取扱通達4-10)、電子取引に係る電磁的記録も、原則として、一課税期間ごとに検索をすることができる必要があります。
しかしながら、データ量が膨大であるなどの理由で複数の保存媒体で保存せざるを得ない場合や、例えば、中間決算を組んでおり半期ごとに帳簿を作成している場合や取引先ごとに指定のEDIやプラットフォームがある場合など、一課税期間を通じて検索をすることが困難であることについて合理的な理由があるときには、その合理的な期間ごとに範囲を指定して検索をすることができれば差し支えありません。
なお、税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は、この範囲を指定して条件を設定できる機能(及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能)の確保は不要となります(また、この場合において、判定期間に係る基準期間における売上高が 1,000 万円以下の事業者については全ての検索機能の確保の要件が不要となります(【問34】参照)。)。
問18
バックアップデータの保存は要件となっていますか。
【回答】
バックアップデータの保存は要件となっていません。
【解説】
バックアップデータの保存については法令上の要件とはなっていませんが、電磁的記録は、記録の大量消滅に対する危険性が高く、経年変化等による記録状態の劣化等が生じるおそれがあることからすれば、保存期間中の可視性の確保という観点から、バックアップデータを
保存することが望まれます。
また、必要に応じて電磁的記録の保存に関する責任者を定めるとともに、管理規則を作成し、これを備え付けるなど、管理・保管に万全を期すことが望ましいと考えられます。
問19
いわゆるオンラインマニュアルやオンラインヘルプ機能にシステム概要書と同等の内容が組み込まれている場合、システム概要書が備え付けられているものと考えてもよいでしょうか。
【回答】
規則第2条第6項第7号において準用する同条第2項第1号のシステム関係書類等については、書面以外の方法により備え付けることもできることとしています(取扱通達4-6本文なお書)ので、いわゆるオンラインマニュアルやオンラインヘルプ機能にシステム概要書と同
等の内容が組み込まれている場合には、それが整然とした形式及び明瞭な状態で画面及び書面に、速やかに出力することができるものであれば、システム概要書が備え付けられているものとして取り扱って差し支えありません。
問20
クラウドサービスの利用や、サーバを海外に置くことは認められますか。
【回答】
規則第2条第2項第2号に規定する備付け及び保存をする場所(以下「保存場所」といいます。)に備え付けられている電子計算機とサーバとが通信回線で接続されているなどにより、保存場所において電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、規則第2条第2項第2号に規定する状態で速やかに出力することができるときは、クラウドサービスを利用する場合や、サーバを海外に置いている場合であっても、当該電磁的記録は保存場所に保存等がされているものとして取り扱われます。
【解説】
近年、コンピュータのネットワーク化が進展する中、通信回線のデータ送信の高速化も進み、コンピュータ間でデータの送受信が瞬時にできる状況となっていますが、電子帳簿保存法の趣旨(法第1条)を踏まえ、保存場所に備え付けられている電子計算機と国税関係帳簿
書類の作成に使用する電子計算機とが通信回線で接続されていることなどにより、保存場所において電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、それぞれの要件に従って、速やかに出力することができるときは、当該電磁的記録は保存場所に保存等がされているものとして取り扱われます(取扱通達4-7注書き)。
そして、現在、企業が会計処理をはじめとする業務処理を外部委託する場合には、受託企業の大半が国内外の複数の場所にあるコンピュータをネットワーク化してデータ処理し、国内外のサーバにデータを保存している状況となっていますが、前述の点を踏まえれば、仮に電磁的記録が海外にあるサーバに保存されている場合(保存要件を満たしている場合に限ります。)であっても、納税地にある電子計算機において電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力することができる等、当該取引情報の送付又は受領が紙ベースで行われたとした場合に納税地に保存されているのと同様の状態
にあれば、納税地に保存等がされているものとして取り扱われます。
なお、バックアップデータの保存については、法令上の要件とはなっていませんが、通信回線のトラブル等による出力障害を回避するという観点からバックアップデータを保存することが望まれます。
問21
電子取引で授受したデータについて、所得税法・法人税法と消費税法で取扱いにどのような違いがあるのですか。
【回答】
令和3年度の税制改正により、所得税(源泉徴収に係る所得税を除きます。)及び法人税に係る保存義務者については、令和4年1月1日以後行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録を書面やマイクロフィルム(以下「書面等」といいます。)に出力して保存する措置が廃
止されましたので、その電磁的記録を一定の要件の下、保存しなければならないこととされました。
一方、消費税に係る保存義務者が行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存については、その保存の有無が税額計算に影響を及ぼすことなどを勘案して、令和4年1月1日以後も引き続き、その電磁的記録を書面に出力することにより保存することも認められています(令和5年10月の適格請求書等保存方式の導入に伴う電子インボイスの保存についても、【問4】のとおり一定の方法により出力した書面の保存により仕入税額控除の適用が可能で
す。)。

【保存方法】

問22
請求書や領収書等を電子的に(データで)受け取った場合、どのように保存すればよいですか。
【回答】
電子的に受け取った請求書や領収書等については、データのまま保存しなければならないこととされており(法7)、その真実性を確保する観点から、以下のいずれかの条件を満たす必要があります(規4①)。
⑴ タイムスタンプが付与されたデータを受領(規4①一)
⑵ 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタ
ンプを付与(規4①二)
※ 括弧書の取扱いは、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの
各事項に処理に関する規程を定めている場合に限る。
⑶ データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシス
テムを利用(規4①三)
⑷ 訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け(規4①四)
また、事後的な確認のため、検索できるような状態で保存すること(規2⑥六)や、ディスプレイ等の備付け(規2②一イ、二)も必要となります。
問 23
電子取引の取引データの保存について、複数の改ざん防止措置が混在することは認
められますか。また、電子データの格納先(保存場所)を複数に分けることは認められ
ますか。
【回答】
電子取引の取引データの授受の方法は種々あることから、その授受したデータの様態に応じて複数の改ざん防止措置が混在しても差し支えありません。
また、電子データの格納先や保存方法についても、取引データの授受の方法等に応じて複数に分かれることは差し支えありませんが、電子データを検索して表示する場合には、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるように管理しておく必要があります。
【解説】
規則第4条第1項に規定する電子取引の取引データの保存要件(改ざん防止措置)については、それぞれ同項各号に掲げる措置(①タイムスタンプが付された後の授受②授受後速やかにタイムスタンプを付す等③データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又
は訂正削除ができないシステムを利用④訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け)のうちいずれかのものを行うこととされていますが、これらの措置は保存義務者の任意により自由に選択することが可能となっています。
電子取引に該当する取引データの授受の方法は種々であることからも、その授受したデータの様態に応じて複数の改ざん防止措置を使い分けることは認められます。
また、電子データの格納先や保存場所についても、例えば、取引の相手先ごとに取引データの授受を行うシステムが異なっている場合において、各取引データについて、必ず一つのシステムに集約して管理しなければならないとすることは合理的でないと考えられますので、取引データの授受の方法等に応じて保存場所が複数のシステムに分かれること等は差し支えありません。ただし、当該電子データについては、ディスプレイ等に整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておく必要があるため、例えば、A取引先についてはaシステムに、B取引先についてはbシステムに、それぞれ取引データが格納
されていることが分かるようにしておく等の管理が必要であると考えられます。
したがって、同じ取引先から毎月同一のシステムを介して請求書データをやり取りしているにもかかわらず、合理的な理由がない状態で規則性なく保存先を散逸させ、保存データの検索を行うに当たっても特段の措置がとられず、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができないような場合は、その保存方法については認められないこととなります。
問24
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に当たり、規則第4条第1項第4号に規定する「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」を定めて運用する措置を行うことを考えていますが、具体的にどのような規程を整備すればよいのでしょうか。
【回答】
規則第4条第1項第4号に規定する「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」は、当該規程によって電子取引の取引情報に係る電磁的記録の真実性を確保する観点から必要な措置として要件とされたものです。
この規程については、どこまで整備すればデータ改ざん等の不正を防ぐことができるのかについて、事業規模等を踏まえて個々に検討する必要がありますが、必要となる事項を定めた規程としては、例えば、次のようなものが考えられます。
なお、規程に沿った運用を行うに当たっては、業務ソフトに内蔵されたワークフロー機能で運用することとしても差し支えありません。

(法人の例)
※ 下記の規程(サンプル)については、こちらからダウンロードできます。

電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程 
 
第1章 総則 

(目的) 
第1条 この規程は、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法の特例に関する法律第7条に定められた電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務を履行するため、○○において行った電子取引の取引情報に係る電磁的記録を適正に保存するために必要な事項を定め、これに基づき保存することを目的とする。
 
(適用範囲) 
第2条 この規程は、○○の全ての役員及び従業員(契約社員、パートタイマー及び派遣社員を含む。以下同じ。)に対して適用する。 

(管理責任者) 
第3条 この規程の管理責任者は、●●とする。 

第2章 電子取引データの取扱い 

(電子取引の範囲) 
第4条 当社における電子取引の範囲は以下に掲げる取引とする。 
一 EDI取引 
二 電子メールを利用した請求書等の授受 
三 ■■(クラウドサービス)を利用した請求書等の授受 
四 ・・・・・・ 
記載に当たってはその範囲を具体的に記載してください 

(取引データの保存) 
第5条 取引先から受領した取引関係情報及び取引相手に提供した取引関係情報のうち、第6条に定めるデータについては、保存サーバ内に△△年間保存する。 

(対象となるデータ) 
第6条 保存する取引関係情報は以下のとおりとする。 
一 見積依頼情報 
二 見積回答情報 
三 確定注文情報 
四 注文請け情報 
五 納品情報 
六 支払情報 
七 ▲▲ 

(運用体制) 
第7条 保存する取引関係情報の管理責任者及び処理責任者は以下のとおりとする。 
一 管理責任者 ○○部△△課 課長 XXXX 
二 処理責任者 ○○部△△課 係長 XXXX 

(訂正削除の原則禁止) 
第8条 保存する取引関係情報の内容について、訂正及び削除をすることは原則禁止とする。 

(訂正削除を行う場合) 
第9条 業務処理上やむを得ない理由によって保存する取引関係情報を訂正または削除する場合は、処理責任者は「取引情報訂正・削除申請書」に以下の内容を記載の上、管理責任者へ提出すること。 
一 申請日 
二 取引伝票番号 
三 取引件名 
四 取引先名 
五 訂正・削除日付 
六 訂正・削除内容 
七 訂正・削除理由 
八 処理担当者名 
2 管理責任者は、「取引情報訂正・削除申請書」の提出を受けた場合は、正当な理由があると認める場合のみ承認する。 
3 管理責任者は、前項において承認した場合は、処理責任者に対して取引関係情報の訂正及び削除を指示する。 
4 処理責任者は、取引関係情報の訂正及び削除を行った場合は、当該取引関係情報に訂正・削除履歴がある旨の情報を付すとともに「取引情報訂正・削除完了報告書」を作成し、当該報告書を管理責任者に提出する。 
5 「取引情報訂正・削除申請書」及び「取引情報訂正・削除完了報告書」は、事後に訂正・削除履歴の確認作業が行えるよう整然とした形で、訂正・削除の対象となった取引データの保存期間が満了するまで保存する。 
 
附則 

(施行) 
第 10条 この規程は、令和○年○月○日から施行する。 

(個人事業者の例)
※ 下記の規程(サンプル)については、こちらからダウンロードできます。

電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程 

この規程は、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法の特例に関する法律第7条に定められた電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務を適正に履行するために必要な事項を定め、これに基づき保存することとする。 
(訂正削除の原則禁止) 
保存する取引関係情報の内容について、訂正及び削除をすることは原則禁止とする。 

(訂正削除を行う場合) 
業務処理上やむを得ない理由(正当な理由がある場合に限る。)によって保存する取引関係情報を訂正又は削除する場合は、「取引情報訂正・削除申請書」に以下の内容を記載の上、事後に訂正・削除履歴の確認作業が行えるよう整然とした形で、当該取引関係情報の保存期間に合わせて保存するとことをもって当該取引情報の訂正及び削除を行う。 
一 申請日 
二 取引伝票番号 
三 取引件名 
四 取引先名 
五 訂正・削除日付 
六 訂正・削除内容 
七 訂正・削除理由 
八 処理担当者名 

この規程は、令和○年○月○日から施行する。 
問25
当社は、電子取引の取引情報の保存サービスの提供を受け、同サービス利用者同士の電子取引の取引情報については、同サービスにおいて保存されます。同サービス利用者は、同サービス提供者と契約し、同サービスの利用規約に定めるデータ訂正等の防止に関する条項にのっとりデータの訂正削除を行うこととなります。
このようにサービス提供者との契約によってデータの訂正等を防止する方法についても、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」を定める方法として認められますか。
【回答】
共通のサービス利用者間の電子取引において、サービス提供者との契約によってデータの訂正等を防止する場合についても、規則第4条第1項第4号に規定する「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」を定める方法として認められます。
なお、電磁的記録の記録事項を訂正又は削除を行った場合に、訂正前若しくは削除前の記録事項及び訂正若しくは削除の内容がその電磁的記録又はその電磁的記録とは別の電磁的記録(訂正削除前の履歴ファイル)に自動的に記録されるシステム等を利用している場合には、規則第4条第1項第3号に定める方法として、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」を定める必要はありません。
【解説】
規則第4条第1項第4号に規定する「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」について、取扱通達7-5は、⑴「自らの規程のみによって防止する場合」と⑵「取引相手との契約によって防止する場合」を例示していますが、質問に係る保存サービ
スの契約自体は、サービス提供者と利用者が行うものであり、サービス利用者同士がデータ訂正等の防止に関する条項を含む契約を行わない限り、取扱通達7-5⑵には該当しません。
しかしながら、規則第4条第1項第4号が規程を要件としているのは、当該規程によって電子取引の取引情報に係る電磁的記録の真実性を確保することを目的としたものであり、この真実性を確保する手段については、必ずしも、取扱通達7-5⑴と⑵には限られません。
質問のケースにおいて、サービス利用者間にデータ訂正等の防止に関する条項を含む契約がなくても、同サービス利用者それぞれが、データ訂正等の防止に関する条項を含む契約をサービス提供者と行っていれば、同サービス利用者間で共通のデータ訂正等の防止に関する手続が担保されることとなります。このようにサービス提供者との契約によって防止する方法についても、規則第4条第1項第4号に規定する「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」を定める方法として認められます。
この場合、各利用者が定める規程には、取扱通達7-5⑵に準じて①~③の内容を含むことが考えられます。
① サービス提供者とデータ訂正等の防止に関する条項を含む契約を行うこと。
② 事前に上記契約を行うこと。
③ 電子取引の種類を問わないこと。
また、具体的な規程の例としては「電子取引の種類を問わず、電子取引を行う場合には、事前に、サービス提供相手とデータの訂正等を行わないことに関する具体的な条項を含んだ契約を締結すること。」等の条項を含む規程が考えられます。
なお、質問のケースにおいても、データ訂正等の防止に関する条項について、保存サービスの利用規約を引用する形で電子取引の取引相手と個別に契約を行うことも可能です(この場合、取扱通達7-5⑵「取引相手との契約によって防止する場合」に該当することになります。)。

1 取扱通達7-5⑵の関係図

2 本照会に係る関係図

問26
当社は、取引先との間で、クラウドサービスを利用し請求書を受領しています。この場合において、取引先から確認のため電子メールでも請求書が送られてきましたが、同一の請求書を2つの電子取引により受領したときには、どちらの電子データを保存すればよいでしょうか。
【回答】
請求書をクラウドサービスにより受領したものと電子メールにより受領したものがある場合のように、同一の請求書を2つの電子取引により受領したときについては、それが同一のものであるのであれば、いずれか一つの電子取引に係る請求書を保存しておけばよいことと
なります。
【解説】
電子取引の取引データについて、2つの電子取引により同一の取引データを受領した場合には、いずれの取引データを保存する必要があるのか問題となりますが、それらの取引データが同一の内容(データ形式が異なる場合を含みます。)であれば同一の請求書を重複して保存することとなるため、いずれかの電子取引に係る請求書を保存しておけばよいこととなります。
問27
電子取引を行った場合において、取引情報をデータとして保存する場合、どのような保存方法が認められるでしょうか。
【回答】
電子取引を行った場合には、取引情報を保存することとなりますが、例えば次に掲げる電子 甲(保存サービス) 乙 丙
請求
支払・領収

サービス利用規程
(データ訂正等の防止に関する条項を含む契約)

規程

乙 丙

請求
支払・領収

規程

契約(データ訂正等の防
止に関する条項を含む。)

取引の種類に応じて保存することが認められます。
1 電子メールに請求書等が添付された場合
⑴ 請求書等が添付された電子メールそのもの(電子メール本文に取引情報が記載されたも
のを含みます。)をサーバ等(運用委託しているものを含みます。以下同じです。)自社シ
ステムに保存する。
⑵ 添付された請求書等をサーバ等に保存する。
2 発行者のウェブサイトで領収書等をダウンロードする場合
PDF等をダウンロードできる場合
① ウェブサイトに領収書等を保存する。
② ウェブサイトから領収書等をダウンロードしてサーバ等に保存する。
HTMLデータで表示される場合
① ウェブサイト上に領収書を保存する。
② ウェブサイト上に表示される領収書をスクリーンショットし、サーバ等に保存する。
③ ウェブサイト上に表示されたHTMLデータを領収書の形式に変換(PDF等)し、サーバ等に保存する。
3 第三者等が管理するクラウドサービスを利用し領収書等を授受する場合
⑴ クラウドサービスに領収書等を保存する。
⑵ クラウドサービスから領収書等をダウンロードして、サーバ等に保存する。
4 従業員がスマートフォン等のアプリを利用して、経費を立て替えた場合
従業員のスマートフォン等に表示される領収書データを電子メールにより送信させて、自社システムに保存する。
なお、この場合にはいわゆるスクリーンショットによる領収書の画像データでも構いません。
おって、これらのデータを保存するサーバ等は可視性および真実性の要件を満たす必要がありますので注意してください。

【解説】
法第2条第5号において、電子取引とは、「取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいう。」と定義され、その取引情報の具体的な内容は、「取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される
事項」とされています。
この電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関して、授受した電磁的記録をそのまま上記の方法により保存することが認められますが、電子取引により受領した請求書等の取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)を確認し、改めてその取引情報のみをサーバ等に自ら入力することをもって電磁的記録の保存とすることは認められません。
問28
当社はスキャナ保存制度を利用しており、スキャニングした画像データを管理するための文書管理システムで保有しております。今回、電子取引により受領したPDFデータについても、この文書管理システムで管理することを検討していますが問題ありますでしょうか。
【回答】
電子取引により授受されたデータの保存に当たって、訂正削除履歴や検索などの機能要件を満たすのであれば、スキャナ保存と同じ文書管理システムで、電子取引のデータを保存しても問題はありません。
【解説】
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に当たっては、真実性や可視性を確保するための要件を満たす必要があります(【問 11】参照)が、例えばスキャナ保存の要件を備えた文書管理ソフトが電子取引の保存要件も満たしている場合には、当該文書管理ソフトを利
用して、電子取引により授受されたデータを保存することも可能であると考えられます。
問29
当社はクラウドサービスを利用して取引先とXML形式の請求書等データ(取引情報に関する文字の羅列)をクラウドサービス上で共有・保存していますが、このような方法は認められますか。
【回答】
保存されるデータがXML形式等の取引情報に関する文字の羅列であっても、請求書等のフォーマットや日付・金額等の項目ごとに並べた一覧表形式で表示する等により視覚的に確認・出力されるものについては、電子帳簿保存法の要件を満たすものとなります。
【解説】
規則第4条第1項では、法第7条に規定する保存義務者は、電子取引の取引情報に係る電磁的記録が規則第2条第2項第2号の要件に従って保存しなければならないこととされています。
これは、電子取引の取引情報に係る電磁的記録は、ディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力することが必要ですが、電子取引の取引情報に係る電磁的記録をXML形式(文字の羅列)で保存していたとしても、自社固有のフォーマットに変換するなどして、明瞭な状態で確認でき、速やかに出力することが可能な状態であればこれらの要件を満たすものと考えられます。
問30
具体的にどのようなシステムであれば、訂正又は削除の履歴の確保の要件を満たしているといえるのでしょうか。
【回答】
規則第4条第1項第3号に規定する訂正又は削除の履歴の確保の要件を満たしたシステムとは、例えば、
① 電磁的記録の記録事項に係る訂正・削除について、物理的にできない仕様とされているシステム
② 電磁的記録の記録事項を直接に訂正又は削除を行った場合には、訂正・削除前の電磁的記録の記録事項に係る訂正・削除の内容について、記録・保存を行うとともに、事後に検索・閲覧・出力ができるシステム
等が該当するものと考えます。
【解説】
規則第4条第1項第3号に規定する電子計算機処理システムについて、具体的には、例えば、他者であるクラウド事業者が提供するクラウドサービスにおいて取引情報をやりとり・保存し、利用者側では訂正削除できない、又は訂正削除の履歴(ヴァージョン管理)が全て残るクラウドシステムであれば、通常、当該電子計算機処理システムの要件を満たしているものと考えられます。

検索機能】

問31
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に当たり、検索機能で注意すべき点はありますか。
【回答】
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に当たり、以下の要件を満たす検索機能を確保する必要があります。
⑴ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先検索の条件として設定することができること。
⑵ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
⑶ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
【解説】
検索機能については、規則第2条第6項第6号で定められており、例えば、取引年月日、取引先名称及び取引金額により、二以上の記録項目を組み合わせて条件を設定することができることとされています。
また、日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができることとされています。取引情報の保存については、サーバ等に保存する場合や、クラウドサービス等を利用する場合が考えられますが、その保存方法にかかわらず、保存義務者はこれらの条件を満たして検索をすることができる必要があります。
なお、当該電磁的記録について、税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、(2)及び(3)の要件は不要となります(また、この場合において、判定期間に係る基準期間における売上高が 1,000 万円以下の事業者については全ての検索機能の確保の要件が不要となります(【問34】参照)。)。
問32
規則第2条第6項第6号ハの「二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること」には、「AかつB」のほか「A又はB」といった組合せも含まれますか。また、一の記録項目により検索をし、それにより探し出された記録事項を対象として、別の記録項目により絞り込みの検索をする方式は、要件を満たすこととなりますか。
【回答】
「A又はB」の組合せは必要ありません。また、段階的な検索ができるものも要件を満たすこととなります。
【解説】
検索機能については、規則第2条第6項第6号で、検索の条件として設定した記録項目(取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先)により、二以上の記録項目を組み合わせて条件を設定することができることとされています。この場合の二の記録項目の組合せとしては、「AかつB」と「A又はB」とが考えられますが、このうち、「A又はB」の組合せについては、それぞれの記録項目により二度検索するのと実質的に変わらない(当該組合せを求める意味がない)ことから、これを求めないこととしています。
また、「二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること」とは、必ずしも「AかつB」という組合せで検索できることのみをいうのではなく、一の記録項目(例えば「A」)により検索をし、それにより探し出された記録事項を対象として、別の記録項目(例えば「B」)により再度検索をする方式も結果は同じであることから要件を満たすこととなります。
なお、当該電磁的記録について、税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、この項目を組み合わせて条件を設定できる機能(及び範囲を指定して条件を設定できる機能)は不要となります(また、この場合において、判定期間に係る基準期間における売上高が1,000万円以下の事業者については全ての検索機能の確保の要件が不要となります(【問34】参照)。)。
問33
当社には電子取引の取引データを保存するシステムがありませんが、電子取引の取引データを保存する際の検索機能の確保の要件について、どのような方法をとれば要件を満たすこととなりますか。
【回答】 |電子取引の取引情報に係る電磁的記録(電子取引の取引データ)を保存するシステムがな
い場合に検索機能の確保の要件を満たす方法としては、例えば、エクセル等の表計算ソフトにより、取引データに係る取引年月日その他の日付、取引金額、取引先の情報を入力して一覧表を作成することにより、当該エクセル等の機能により、入力された項目間で範囲指定、二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件設定をすることが可能な状態であれば、検索機能の確保の要件を満たすものと考えられます。
その他、当該保存すべき取引データについて、税務職員のダウンロードの求めに応じることができるようにしておき、当該取引データのファイル名を「取引年月日その他の日付」、「取引金額」、「取引先」を含み、統一した順序で入力しておくことで、取引年月日その他の日付、取引金額、取引先検索の条件として設定することができるため、検索機能の確保の要件を満たすものと考えられます。
(一覧表の作成により検索機能を満たそうとする例)
ファイル名には①、②、・・・と通し番号を入力する。
エクセル等により以下の表を作成する。

(ファイル名の入力により検索機能を満たそうとする例)
2022 年(令和4年)11月 30日付の株式会社霞商事からの 20,000 円の請求書データの場合
⇒ 「20221130_㈱霞商事_20,000」)
※ 取引年月日その他の日付は和暦でも西暦でも構いませんが、混在は抽出機能の妨げとなることから、どちらかに統一して入力していただく必要があります。

【解説】
検索機能については、規則第2条第6項第6号で定められているとおり、①取引年月日その他の日付、取引金額、取引先検索の条件として設定することができること②日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること③二以
上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること、の3つの要件が求められています。
そこで、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存するための専用のソフトウェア等を使用していない場合でも、例えば、エクセル等の表計算ソフトにより、取引データに係る取引年月日その他の日付、取引金額、取引先の情報を入力した一覧表を作成することにより、エクセル等の表計算ソフトの機能によって、入力された項目間で範囲指定、2項目以上の組み合わせで条件設定の上抽出が可能であれば、上記①~③のいずれの機能も満たすものと考えられます。
この方法により保存する場合には、エクセル等の表計算ソフトの一覧表の通し番号を付すなどして、一覧表から取引データを検索できるようにする必要があります。
問34
電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存する際の要件のうち、検索機能の確保の要件が不要とされる場合の「判定期間に係る基準期間の売上高が1,000万円以下の場合」とは、どのように判断すればよいのでしょうか。
【回答】
個人事業者については、電子取引が行われた日の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの期間の売上高、法人については、電子取引が行われた日の属する事業年度の前々事業年度の売上高が1,000万円を超えるかどうかで判断します。
なお、売上高が1,000万円を超えるかどうかの判断基準については、消費税法第9条の小規模事業者に係る納税義務の免除の課税期間に係る基準期間における課税売上高の判断基準の例によりますが、例えば、判定期間に係る基準期間がない新規開業者、新設法人の初年(度)、翌年(度)の課税期間などについては、検索機能の確保の要件が不要となります。

【タイムスタンプ】

【回答】
タイムビジネスの信頼性向上を目的として、一般財団法人日本データ通信協会が定める基準を満たすものとして認定された時刻認証業務によって付与され、その有効性が証明されるものです。
また、認定を受けたタイムスタンプ事業者には、「タイムビジネス信頼・安心認定証」が交付され、以下に示す「タイムビジネス信頼・安心認定マーク」を使用できることから、その事業者の時刻認証業務が一般財団法人日本データ通信協会から認定されたものであるか否かについては、この認定マークによって判断することもできます。

《タイムビジネス信頼・安心認定マーク》

認定マークを使用できる場所
ホームページ名刺、説明書、宣伝広告用資料、取引書類 等
※ 認証番号等とは、一般財団法人日本データ通信協会から発行される認定番
号に続けて、認定回数を括弧内に記載しているものです。

(注) 使用するタイムスタンプは、規則第2条第6項第2号ロに規定する以下の要件を満たすものに限ります。
① 当該記録事項が変更されていないことについて、当該国税関係書類の保存期間を通じ、当該業務を行う者に対して確認する方法その他の方法により確認することができること。
② 課税期間中の任意の期間を指定し、当該期間内に付したタイムスタンプについて、一括して検証することができること。

問36
「速やかに」タイムスタンプを付与することとしている場合で、やむを得ない事由によりおおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与できない場合は要件違反となるのでしょうか。
【回答】
おおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与できない特別な事由がある場合に、そのおおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与することができない事由が解消した後直ちに付与したときには、速やかにタイムスタンプを付与したものとして取り扱われます。
【解説】
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の記録事項について、データ改ざんの可能性を低くする観点からは、電子取引により取引情報を授受した後直ちに行うことが望まれますが、休日等をまたいで処理する場合があることも勘案し、7営業日を基本とすることが合理的と考
えられます。
さらに、業種業態によっては必ずしも7営業日以内にタイムスタンプを付与することがで
問35
一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプとはどのようなものでしょうか。

認証番号等(※) きない場合(例えば、毎日事務所へ出勤しない勤務形態の社員がタイムスタンプの処理を行う場合等)も考えられ、それらを一律に排除することは経済実態上合理的ではないことから、おおむね7営業日以内に付与すれば速やかにタイムスタンプを付与しているものとして取り扱うこととされています。
また、おおむね7営業日でタイムスタンプを付与できないような特別な事由が存在する場合には、その事由が解消した後直ちに付与することによって、規則第4条第1項第2号に規定する「速やかに」タイムスタンプを付すことの目的は達せられると考えられます。
なお、規則第4条第3項の規定により、災害その他やむを得ない事情が生じ、保存要件を満たせなかったことを証明した場合には、保存要件を満たしていなくても電磁的記録の保存を行うことができることとされています。
おって、機器のメンテナンスを怠ったことにより、スキャナ機器の故障が生じた場合など明らかに保存義務者の責めに帰すべき事由が存在するときには、これらの取扱いはないこととなります。

問37
「業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行う」とは何日以内にタイムスタンプを付与すればよいのでしょうか。
【回答】
最長では、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を授受してから2か月とおおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与すればよいこととなります。
【解説】
「その業務の処理に係る通常の期間」とは、スキャナ保存における考え方と同様であり、それぞれの企業において採用している業務処理サイクルの期間をいい、また、おおむね7営業日以内に付与している場合には「速やかに」行っているものと取り扱う(取扱通達4-17)ことから、仮に2週間を業務処理サイクルとしている企業であれば2週間とおおむね7営業日以内、20日を業務処理サイクルとしている企業であれば20日とおおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与すればよいこととなります。
なお、最長2か月の業務処理サイクルであれば「その業務の処理に係る通常の期間」として取り扱う(取扱通達4-18)ことから、規則第4条第1項第2号ロに規定する「その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと」については、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を授受してから最長2か月とおおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与すればよいこととなります。
また、この場合、最長2か月とは暦の上での2か月をいうことから、例えば4月21日に受領した取引データの場合、業務処理サイクルの最長2か月は6月20日であり、そのおおむね7営業日後までにタイムスタンプを付与すればよいこととなります。

その他

問38
自社で使用する電子取引用のソフト等について、電子帳簿保存法の要件を満たしているか分からないのですが、どのようにしたらよいですか。
【回答】
まずは当該ソフトウェアの取扱説明書等で電子帳簿保存法の要件を満たしているか確認してください。また、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(以下「JIIMA」といいます。)において、市販のソフトウェア及びソフトウェアサービス(以下「ソフトウェア等」といいます。)を対象に、電子帳簿保存法における要件適合性の確認(認証)を行っており、JIIMAが確認(認証)したソフトウェア等については、そちらでも確認することができます。
【解説】
従前は、使用する電子取引用のソフト等が電子帳簿保存法の要件に適合しているかについて、商品の表示等のみに頼っている状況でした。こうした状況を踏まえ、保存義務者の予見可能性を向上させる観点から、JIIMAがソフトウェア等の法的要件認証制度を開始しました。
なお、電子帳簿保存法の保存等の要件には、事務手続関係書類の備付けに関する事項等、機能に関する事項以外の要件もあり、それらを含め全ての要件を満たす必要がありますので注意してください。
問39
公益社団法人日本文書情報マネジメント協会により認証されたソフトウェア等とはどの
ようなものでしょうか。
【回答】
公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(以下「JIIMA」といいます。)が電子帳簿保存法に規定する機能要件に適合するか機能の仕様について取扱説明書等で確認を行い、法的要件を満たしていると判断し認証されたソフトウェア等をいいます。
また、認証を受けたソフトウェア等は、国税庁及びJIIMAのホームページに記載される認証製品一覧表に明示されるほか、当該ソフトウェア等の説明書等に認証番号などが記載されています。
認証制度開始時からの電子帳簿(法4①)及びスキャナ保存(法4③)用のソフトウェア等に係る認証制度に加えて、令和3年4月以降は、電子書類(法4②)及び電子取引(法7)に係るソフトウェア等についても認証を行っています。
なお、認証を受けたソフトウェア等は、以下に示す「認証ロゴ」を使用できることから、そのソフトウェアがJIIMAから認証されたものであるか否かについては、この認証ロゴによって判断することもできます。ただし、以下の「認証ロゴ」は令和3年6月現在で使用しているものを記載していますので、使用に当たっては説明書等で認証番号などを確認していただくようお願いします。

(参考)
《認証ロゴ(令和3年6月現在使用されている主なもの)》
若しくは
認証ロゴを使用できる場所
認証製品の梱包材、製品マニュアル、技術マニュアル、仕様書 WEBページ 等
【国税庁 HP の掲載場所】
ホーム/法令等/その他法令解釈に関する情報/電子帳簿保存法関係/JIIMA認証情報リスト

問40
電子データに関連して改ざん等の不正が把握されたときには重加算税が加重されるとのことですが、具体的にはどのような場合に加重の対象となるのでしょうか 。
【回答】
電子取引により授受した取引データを削除、改ざんするなどして、売上除外や経費の水増しが行われた場合のほか、保存された取引データの内容が事業実態を表していないような場合(架空取引等)も重加算税の加重対象となります。
【解説】
重加算税の加重措置の対象範囲については、取扱通達8-21 を確認してください。
なお、電子帳簿保存法における電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務者は所得税(源泉徴収に係る所得税を除きます。)及び法人税の保存義務者に限られますが、消費税法令において保存することとされている電子データに関連して改ざん等の不正が把握された場合にも、法第8条第5項(電磁的記録の記録事項に関連した仮装・隠蔽の場合の重加算税の加重措置)と同様に、重加算税が 10%加重される(消費税法59 の2)など、消費税法令におyいて電磁的記録に関する取扱いを個別に規定しているものもあります。
問41
電子取引等において、「災害その他やむを得ない事情」を証明した場合に保存要件が不要となる旨の規定が設けられていますが、そのような事情があれば、電磁的記録の保存自体不要になるのでしょうか。
【回答】
保存義務が免除されるものではありませんので、電磁的記録の保存は必要になります。
【解説】
規則第4条第3項の規定は、災害その他やむを得ない事情により、保存要件に従って電磁的記録の保存をすることができなかったことを証明した場合には、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存要件を満たさなくても保存ができることを規定したものであり、保存義務が免除されているものではありません。
したがって、(検索機能の確保等の要件を満たせなくても)最低限、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しておく必要があり、当該電磁的記録を完全に消失してしまっている場合については、保存すべき電磁的記録の保存がないこととなります。
なお、電磁的記録については、災害等によりデータを保存していたパソコン本体が棄損した場合等、紙に比べてその確認が困難となる場面も多く想定されることから、納税者の責めに帰すべき事由がないときには、単に電磁的記録が存在しないことのみをもって、義務違反を問うことはありませんが、仮に当該電磁的記録が消失してしまった場合であっても、可能な範囲で合理的な方法(取引の相手先や金融機関等へ取引内容を照会するなど)により保存すべき取引情報を復元していただきたいと考えています。
おって、災害その他やむを得ない事情が止んだ後に行う電子取引については、規則第4条第3項の規定の適用はありません。そのため、電子取引の取引情報に係る電磁的記録について保存要件を備えた上で保存する必要がありますので注意してください。
(注)消費税法の「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等」については、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを事業者において証明した場合は、保存が不要とされているため、その請求書等のやり取りが電子取引により行われた場合のその電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存がなかった場合も同様(必ずしも復元は不要)の取扱いとなります。
問42
電子取引の取引情報に係る電磁的記録について保存要件を満たして保存できないた
め、全て書面等に出力して保存していますが、これでは保存義務を果たしていることにはならないため青色申告の承認が取り消されてしまうのでしょうか。また、その電磁的記録や書面等は税務調査においてどのように取り扱われるのでしょうか。
【回答】
令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、その電磁的記録を出力した書面等による保存をもって、当該電磁的記録の保存に代えることはできません。
したがって、災害等による事情がなく、その電磁的記録が保存要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます。
なお、青色申告の承認の取消しについては、違反の程度等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうか等を検討した上、その適用を判断しています。
また、その電磁的記録を要件に従って保存していない場合やその電磁的記録を出力した書面等を保存している場合については、その電磁的記録や書面等は、国税関係書類以外の書類とみなされません。
ただし、その申告内容の適正性については、税務調査において、納税者からの追加的な説明や資料提出、取引先の情報等を総合勘案して確認することとなります。
【解説】
電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、法第7条の規定により保存義務が課されていることから、その電磁的記録を保存する必要があります。そして、電子取引の取引情報に係る電磁的記録について要件を満たさず保存している場合や、その電磁的記録の保存に代えて書面出力を行っていた場合(※)には、保存すべき電磁的記録の保存がなかったものとして、青色申告の承認の取消の対象となり得ますので注意してください。
※ 令和3年度の税制改正前の電子取引の取引情報に係る電磁的記録を書面等に出力することにより保存を認める取扱いは廃止されています。
なお、青色申告の承認の取消しについては、「個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」に基づき、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうか等を検討した上で行うこととしています。
また、電磁的記録を要件に従って保存していない場合やその電磁的記録を出力した書面を保存している場合において、その要件に従って保存がされていない電磁的記録や出力した書面等については、他者から受領した電子データとの同一性が担保されないことから国税関係書類以外の書類とみなされません。
ただし、その申告内容の適正性については、税務調査において納税者からの追加的な説明や資料提出、取引先の情報等を総合勘案して確認することとなります。
なお、消費税に係る保存義務者が行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存については、その保存の有無が税額計算に影響を及ぼすことなどを勘案して、改正後も引き続き、その電磁的記録を出力した書面による保存が可能とされています。

*1 定義
*2 定義
*3 定義
*4 定義
*5 定義
*6 定義
*7 定義
*8 国税関係書類の電磁的記録による保存