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【世界史】第7回 ギリシア世界① 〜エーゲ文明

【世界史】第7回 ギリシア世界① 〜エーゲ文明

カテゴリ:

   世界史
   先史・古代

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1.古代ギリシア世界

  前回までに学んできたオリエント世界の影響を受けて、地中海沿岸の各地域でも文化圏を形成するようになります。古代地中海世界で大きな役割を果たしたのはギリシア人と古代イタリア人です。今回からギリシアの歴史(紀元前3000年頃〜前1世紀にかけて)を学んでいきます。民主政治の発展や哲学学、自然科学の発達といったギリシア時代の人々の功績は、今の私たちの生活にも大きな影響を与えています(古代ギリシアの哲学・思想は【倫理編】のこちらなどを参照下さい)。

 古代ギリシアは大きく分けて3つの時代があります。エーゲ文明と呼ばれる時代(前3000年頃〜)、ポリスの発展した時代(前1200年〜)、ヘレニズム時代(前330年〜)です。この講義では3つを順に紹介していきます。まず、エーゲ文明から見ていきましょう。

2.エーゲ文明

 東地中海沿岸では、ヨーロッパで初めての青銅器文明が誕生しました。これをエーゲ文明と呼びます。といっても、先ほどあげたようなギリシア文化として有名な制度や美術品の数々はこの時代のものではありません。あくまでギリシア文化のご先祖様のような位置づけでとらえておくといいます。

 エーゲ文明のまず前半のお話から。エーゲ文明はまずクレタ島という島で栄えます。紀元前3000年頃には住居があったといわれていますが、特に紀元前2000年頃から栄えたクレタ文明は、なんといっても宮殿建築が有名です。クノッソス宮殿という巨大な建築物の跡からは、宗教的権威をもった支配者がいたことが想像されます。クノッソス宮殿を発掘したのはイギリスのエヴァンズという人物です。ただ当時使われていた文字が未だに解読できていないためにどのような民族がこの文明をつくりだしたのかは不明です。ただ宮殿に城壁がないことなどから大きな争いのない平和な文明だったのだろうと推測されています。

 そして、エーゲ文明の後半はミケーネ文明が栄えます(前1600年頃〜)。ミケーネ文明は島ではなく現在のギリシア本土に位置します。クレタやオリエントの文明に影響を受け、ギリシア人の一派が作り出した文明であるとされています。ただクレタ文明と異なるのは、人々が軍事に関心があったとされることです。クレタ島に侵入し支配するようになり、トロイアと呼ばれる地域(現在の小アジアに位置します)にも進出しました。巨大な城塞や闘いの様子を描いた壁画などが発見され、クレタ文明とは異なり、平和的な文明ではなかったことが明らかとなっています。

 そして、この文明の跡を発掘したのがドイツの考古学者シュリーマンです。名前ぐらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。ミケーネ文明だけでなくトロイア文明が実在することを自らの発掘によって証明したミラクル(?)考古学者です(現在ではトロイアは前2600年頃に栄えていた文明であることがわかっています)。子どもの頃に「ホメロスの物語」を絵本などで読んで、あくまで伝説上の町であったはずのトロイアの町が実在する町だと信じ込んでいたのです。大人になった彼は異常なまでの熱意で発掘作業を続け、誰もが驚くような成果をあげます。トロイア文明の跡を本当に見つけたのでした。子どもの頃に信じた夢物語を大人になってから自らその実在を証明するというとんでもないことを彼はやってのけたのです。彼の書いた『古代への情熱』は今でも名著として残っているので興味のある人は是非読んでみましょう。また、このミケーネ文明などで使われていた線文字Bという文字はヴェントリスという人物によって解読されていることも併せて知っておいてください。