歴史・人名

1.人類の誕生

1.人類の誕生

 今から約200万年前から1万年前までの時代を更新世といい、地球の広い地域が氷河でおおわれていた氷河期が4回と、比較的おだやかな気候となった間氷期がその間に3回あった。

 その間氷期に、直立歩行をしたり、道具をつくり、火を使い、言葉を話す動物が出現した。

 その最初は、今から約400万年前、南アフリカの南部で発見されたアウストラロピテクスで、直立歩行をしていたことがわかった。この種の仲間を猿人という。

 次いで、50万年前ごろには、中国の北京郊外にある周口店で発見された北京原人は火を使用し、言葉を用いていたと考えられている。この種の仲間を原人という。

 さらに、20万年前ごろには、ドイツで発見されたネアンデルタール人は現在の人類に近づき、死者を葬る墓の習慣があったことがわかっており、この仲間を旧人といい、ヨーロッパやアフリカ、アジアなどで発見されている。ただし、いずれも洪積世の間で死滅し、現在の人類の祖先とは考えられていない。

 約4~5万年前に、フランス南部で発見されたクロマニョン人は、石器や骨角器を用いて狩や漁を行っていたことがわかり、体や顔つきは現在の人類とほとんど変わらず、知恵が発達し、現在の祖先にあたり、新人とよばれる。この種の仲間はアメリカ大陸やオーストラリアなど世界各国で発見され、日本でも沖縄県那覇市の山下町や具志頭村の港川でも発見されている。

 人類のおこりからクロマニョン人のころまでの約400万年以上の間、人類は洞穴に住み、動物の群れのような集団で獲物を求めながら不安定な生活をしていた。

 彼らは、石をうちかいた打製石器を使って狩や漁を行い、木の実なども採集していたことから、この時代を旧石器時代という。

 猿人のころの打製石器は小石のはしをうち割っただけのものだったが、原人は握斧(ハンド=アックス)とよばれる形の整ったものや鋭い刃をつけた石刃などをつくって進化させ、旧人は石槍をつくるようになった。新人になると、より精密な打製石器や骨角器をつくり、弓矢をつくっていた。

 さらに、クロマニョン人たちは洞窟に壁画を描き、スペイン北部のアルタミラやフランス南部のラスコーの牛や鹿などの絵が有名である。

2.農耕・牧畜のはじまり

 今から約1万年前、氷河時代が終わり、地球が比較的温暖な気候になると、人類は野生の動物を飼いならし、野生の植物を育てるようになった。こうした牧畜や農耕が始まると、今まで採集による不安定な生活から計画的な食糧生産を行うようになった。

 農耕や牧畜が始まった時期はまだ解明されていないが、およそ9000年前に西アジアで大麦や小麦の栽培が人類最初の農耕とされている。ただし、最初の頃の農法は、雨の水に頼る乾田農法と肥料を使わない略奪農法であった。

 大河の流域では、土地が肥え、温暖で雨が比較的少なかったため、麦類やあわ・きびなどの作物に適しており、作物の水を水路によって供給し、耕作地をうるおす灌漑による農法が発達していった。

 農耕と牧畜の生産経済によって、人々は耕地の近くに住み、家族同士がまとまって集落をつくるようになった。

 食料を保存したり煮るために土器をつくり、麻や羊毛で織物もつくるようにもなった。

 石器も今までの打製石器ではなく、表面を磨いたり、刃を磨いた磨製石器をつくるようになった。

 こうした時代を新石器時代という。

 農耕と牧畜が発展してくると、集落も大規模になり、生産にたずさわらず、道具をつくる職人や灌漑や治水、収穫物の管理をしたり、神を祭ったり、さらには集落を指導する立場の人間が現れ、職業や身分が異なり、貧富の差が生じるようになった。世界の農耕と青銅器・文字のはじめ

 集落の間で、水や耕地をめぐって対立がおこり、争いに勝った集落は、敗れた集落の人間を奴隷にしたり、税を納めさせ、広い土地と多くの人間を支配するようになり、やがて国家が生まれ、王や貴族といった支配する側と農民や奴隷など支配される側との区別ができるようになった。

 最初のころの国家は、神殿を中心とする都市に集落を形成した都市国家とよばれるもので、その中で文明が生まれ、都市国家が成長して統一国家となるととともに文明も発展していった。

 農耕と牧畜の発展と国家の成長の中で、今から約6000年前に、西アジアでは青銅器と鉄器が使われるようになり、およそ3000年前には西アジア・エジプトで使われるようになった。また、政治や商業、税の記録の必要性などから文字がつくられるようにもなった。

 灌漑による農耕は人口を増加させ、さらには文明を発展させていった。

 世界最古の文明は、今から約5000年前のエジプトのナイル川流域におきたエジプト文明と、西アジアのチグリス・ユーフラテス川流域におきたメソポタミア文明であった。

 ついで、今から約4500年前の今のパキスタンであるインダス川流域のインダス文明、今から約3500年前の中国の黄河流域の中国(黄河)文明であった。

 これらの4つの文明を四大文明という。四大文明また、エジプト・メソポタミアの地域をオリエントという。

時代区分人類の区別

 人類がおもに石器を道具として使用していた時代を石器時代または原始時代といい、打製石器を使用していた旧石器時代と、磨製石器を使用していた新石器時代とに分かれる。さらに、金属器を使う時代を金属器時代といい、青銅器時代と鉄器時代とに分かれる。

 人類の区別さ方法として、皮膚の色や毛髪といった身体的特徴によって分ける人種分類、言葉や宗教、習慣といった文化的特徴によって分ける民族分類、共通の言葉から生まれた同じ系列のグループとして分ける語族分類などがある。