神産巣日御祖神

神産巣日御祖神

かみむすびみおやのかみ
別:〇神皇産霊尊(かみむすびのみこと)、神産巣日神(かみむすびのかみ)

神産巣日神


神産巣日神

かみむすびのかみ
別:〇神皇産霊尊(かみむすびのみこと)、神産巣日御祖神(かみむすびみおやのかみ)

生命が生まれる神秘的な力が神格化した神様
出雲系の根本神。
天之御中主神高御産巣日神についで高天原に現れた神。造化三神(ゾウカノサンシン)の一柱。子は少彦名神(記)神格:生成力の本源神、出雲の神々の祖神
 神産巣日神は、高御産巣日神と同様に「産霊」の名を持ち、天地造化、万物生成の根本神という性格を持つことから、両神は本質的に同一神格とするのが定説になっている。また、一般的に高御産巣日神が男神的神格とされるのに対して、神産巣日神は女神的神格とされていて、それが個性の違いということになる。ただ、男女神といっても、この神と大国主命少彦名神との関係に見られる活動の特徴から一応区別されているもので、通常の夫婦のような関係にはない。たとえば、夫婦神として知られる伊邪那岐命伊邪那美命は、共同作業によって多くの神々を生みだしているが、神産巣日神高御産巣日神の間ではそのようなことはない。そもそも両神とも独身神(ヒトリガミ)といわれているのである。
 神産巣日神高御産巣日神の男女の区別は、一種の役割分担と考えた方がわかりやすい。本来、この二神は天之御中主神を三角形の頂点とする造化三神で、三神がワンセットになって、太初の混沌とした世界に天地を生みだし、万物を生成させる役割を果たしている。その中で、天の中央にいてもろもろの指令を発するのが天之御中主神で、それに従って実際に生成の作業を分担して行うのが、神産巣日神高御産巣日神というわけである。そして、その一方を担う神産巣日神の役割というのは、母神(大地母神)の立場で、たとえば穀物を育てる力を大地に与えることなのである。

 先に述べたように、神産巣日神は一般に大地母神的な性格の強い神とされている。そういう色彩を強くしている要因として、出雲地方での活動があげられる。たとえば、「出雲国風土記」では御祖命(ミオヤノミコト)と呼ばれ、出雲の神々の母なる神(祖神)として崇拝されている。一方の男性神格の高御産巣日神が、主に高天原を舞台に活動し、天孫降臨からその子孫の国土統一の守護心的な機能を発揮しているのに対して、神産巣日神は出雲地方と深く関わり、特に大国主命との関係はまるで母子関係のように密接である。
 たとえば、大国主命が兄妹の八十神に謀殺されたとき、討火貝比売(キカガイヒメ)と蛤貝比売(ウムガイヒメ)を遣わして蘇生させる。これは、使者の霊魂を再生させ、新たな生命力を生み出す母の役割をイメージさせる。その後、自分の手指の間から穀物神の少彦名神を化生させて、大国主命のパートナーとすることによって、自らが命じた国造りの事業をサポートさせるというのも、我が子を気遣う母心を思わせる。
 そうしたことから考えて、大国主命少彦名神と共に行った国造りの大事業は、実は万物の生成を司る神産巣日神の力がバックボーンとなっているといえる。さらにその国造りの中心的な事業は、農耕に関する文化の普及である。それを指示し、援助するという働きは、神産巣日神の本来の産霊の機能に関わる農耕神的な性格から発したものなのだ。

 もうひとつ、大国主命に関係することで、神産巣日神がやった大事なことがある。縁結びの信仰でおなじみの出雲大社の造営である。「出雲国風土記」には、神産巣日神が宮殿の造営を手がけ、自ら指示して出雲の神々を召集し、宮殿の建築を進めたとある。そのとき新宮殿のモデルにしたのが、自分の住んでいる天上の宮殿だったという。
 記紀神話では、国譲りをして隠退する大国主命が住むための宮殿ということになっているが、「出雲国風土記」には国譲りの話はなく、大国主命が隠退するようなこともない。つまり、神産巣日神が造営した宮殿(出雲大社)というのは、大事業を見事に成し遂げた息子に対する褒美として、有力者の母親が立派な家を建ててやったようなものである。

 以上のように、神産巣日神大国主命の国造りを支えた影の力であるといえる。したがって、神産巣日神は、国津神(土着神)の総元締めである大国主命を通じて、全国の数多の土地神を支配する偉大な力を持った神ということができる。



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