可美葦牙彦舅尊
可美葦牙彦舅尊
うましあしかびひこぢのみこと
別:〇宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびこひつぢ)、宇麻志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)
宇麻志阿斯訶備比古遅神
うましあしかびひこぢのかみ
別:〇宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびこひつぢ)、可美葦牙彦舅尊(うまし あしかび ひこぢの みこと)
萌え出る葦の芽のような生命力を象徴する男神。
「うまし」は美称です。よい、美しい、といった意味があります。「うまし国」「うまし御路(みち)」など、多くの用例があります。
あしかび、 葦牙。葦はイネ科の植物で、河川敷や湿地帯に群生し、成長すると2メートル以上にもなります。すだれの材料。
牙(かび)は芽という意味で、黴(カビ)と同じ語源です。かつての日本列島の海辺や川辺や湖畔は葦で一面に覆われていたようで、成長も早く、自分たちの背丈よりもずっと高くなる葦が、見渡す限りに繁茂している姿は、古代人にとっては見慣れたものであり、また自然の生命力の驚異を感じさせるものでもあったと考えられます。そのような葦の勢いよく芽吹く姿に、この宇宙の生命の生成する力そのものを託すことで生み出された神格が、ウマシアシカビヒコヂの神なのでしょう。
ひこは、男性の美称です。古代においては、高貴な立場の男性の名前につけられていることが多いようです。さらに分解すると、「ひ」(ムスヒのヒと同じ。超自然的な霊的な力)+「こ」(子、男子という意味)となります。対応する女性の美称は「ひめ」です。これは「ひ」+「め」(女子という意味)と分解できます。これが現代でも使われている「おヒメさま」の語源です。男性に対しては、「おヒコさま」とは言いませんが、人名にしばしば用いられています。
ひこぢのぢ、も男性の美称です。古くは父を「ち」と呼びました。ここでは連濁により「ぢ」となっています。親父・伯父・叔父の「ぢ」はすべてこの意味です。このことからウマシアシカビヒコヂは男神と考えられます。一方、大系紀補注のように、日本書紀の伝承におけるこの神と泥の観念との関わりから、このヒコヂはコヒヂ(泥の古語)の転訛であろう、とする説もあります(日本書紀には多くの神話伝承が載っていて、そのいくつかにこの神の名前が出てきます。
(河)
→ 日本の神 家・氏 系図
→ 日本の神 家・氏 系図