天岩間別神

天岩間別神

別:〇天石門別神(あめのいわとわけのかみ)、天石戸別神櫛石窓神(くしいわまどのかみ)、豊石窓神(とよいわまどのかみ)

天石門別神


天石門別神

あめのいわとわけのかみ
別:〇天岩間別神天石戸別神櫛石窓神(クシイワマドノカミ)、豊石窓神(トヨイワマドノカミ)

天孫降臨に随伴する神々の一柱。天太玉神から生まれた子神格:山の神、石の神、門の神
神話には、「この神は御門を護る神さまなり」とある。
神名の石門は文字通り岩でできた扉を意味し、これに天がつくと、天上界の入り口にある堅固な門というふうに解釈される。天孫邇邇芸命が地上に降臨するときに、天照大神は、まず随伴する主立った神々を指名したあとで、知恵の神である思兼神、天岩戸の扉を怪力で開けた天手力男神とともに天石門別神を加えた。その役割は、天孫が地上で政治を行うときに、その宮殿の出入り口に在って天孫に奉仕し、悪霊の進入を防ぐというものであった。
実際に天石門別神は、古来、天皇の宮殿の四方の門に祀られていた。天皇が住む宮殿、宮中、内裏の中には、天皇家の始祖に関する神をはじめ、御膳の神や託宣の神といった様々な神が祀られていた。そうした主だった神とは別に、宮殿に付属する井戸の神や竈の神なども祀られていたが、その中で御門の神として祀られていたのが天石門別神と同一神とされる櫛石窓神豊石窓神であった。
この神の原像は、神名にもあるように岩と関係が深いようである。日本のみならず、世界各地でも石に神霊が宿るという信仰がある。各地の石神信仰や巨石信仰は今も生き続けている。当然、神社にも巨石、巨岩を御神体として神霊を祀っているところが多くある。天石門別神を祀る神社もそうしたもののひとつである。「石座(イワクラ)」ともいわれるように、神秘を感じさせる巨石や御神体山の上にある石などは、神の依り憑くところと考えられたのである。山の上にいる石の神、それは普段は気配しか感じられない山の神が、人間に見えるような形をとった依り代でもある。
万葉集に「河内王を豊前国(=大分県)の鏡山に葬る時」という題のつけられた「豊国の鏡の山の岩戸立て隠りにけらし」という歌がある。河内王が鏡山を墓として埋葬されたという歌だが、このときの岩戸とは死者が他界に行く入口を指している。古来から日本では他界に去った死者の霊は山の神となって生者の守り神となると考えられていた。つまり、このときの岩戸は生と死の境目を意味しているといえる。
天石門別神は、そういった理由で家の門、村の境など、あらゆる境界を司る神と考えられ、さらに他界から進入しようとするあらゆる災厄を防ぎ、人間の平穏な生活を守護する神とされたのである。石造りかどうかに関わらず、どこの門にでも宿っているという点で、マイナーな名前にも関わらず、身近な神であるといえるだろう。


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