2.7.2.会計参与について

 大会社には、会計監査人の設置が義務づけられている(会社法328条)ので、計算書類の適正が確保されている。
 ところが、大会社でない会社には会計監査人の設置義務がないので、これらの会社の計算・会計の適正をどのように担保すべきかが問題となった。

 そこで、登場したのが会計参与である。
 会計参与とは、公認会計士又は税理士の資格を持つ会計のプロで、会計知識に乏しい取締役等と共同で会社の計算書類を作成させることにより、会社の計算書類の適正を確保するために置かれる、社外役員である。

 会計参与は、主に大会社でない会社の計算書類の適正を確保する制度として新しく創設されたが、大会社も含めてすべての会社で、定款に定めることにより、会計参与を設置することができる(会社法326条2項)、任意の制度である。

 計算・会計の適正を確保するための制度であるので、誰でもなれるわけではない。
 会計参与は、会計のプロフェッショナルである公認会計士(監査法人を含む。)又は税理士(税理士法人を含む。)でなければならない。(会社法333条1項)

 また、会計参与は、株式会社又はその子会社の取締役、執行役、監査役、会計監査人又は支配人その他の使用人を兼ねることができない。(会社法333条3項1号)
これは、計算・会計の適正を確保するためには、会社の業執行から独立させた機関にする必要があるからである。
 なお、顧問税理士を会計参与にすることは禁止されていない。

 会計監査人と会計参与を同一人物が兼務することは、計算書類作成者とそれを監査する立場の違いから兼務できないが、会計監査人を置いた会社に、さらに会計参与を置くことは妨げられない。
 これは、会計参与は会社の役員であり(会社法329条)、会社内部の機関として計算書類の作成をする立場である。これに対し、会計監査人は、会社の外部機関として、作成された計算書類を監査する立場であり、その職務は全く異なるからである。

 会計参与は、会社の役員として株主総会で選任される。(会社法329条)

 会計参与の任期は、取締役と同じく、原則2年であるが、譲渡制限会社については、10年に伸長できる。委員会設置会社では、1年である。(会社法334条1項で、332条の取締役の規定を準用している。)

 会計参与の報酬等については、定款にその額が定められていないときは、株主総会の決議により定めることになっている。(会社法379条)

 会計参与の職務としては、

 1 計算書類の作成
 会計参与は、取締役・執行役と共同して、計算書類を作成するものとする。(会社法374条1項・6項)
 この場合、共同して作成する必要があるので、それぞれが単独で作成することはできない。
 したがって、両者の合意の基でつくられる必要がある。
 合意できない場合は、辞任するか株主総会で意見の陳述をすることになる。(会社法377条)

 2 株主総会における説明義務
 会計参与は、株主総会において、計算書類に関して株主が求めた事項について説明しなければならない。(会社法314条)

 3 計算書類の保存
会計参与は、株式会社とは別に、計算書類を5年間保存しなければならない。(会社法378条1項)

 4 計算書類の開示
 株主及び株式会社の債権者は、会計参与に対して、計算書類の閲覧等を請求することができる。(会社法378条2項)

 5 その他
 会計参与は、計算書類を承認する取締役会への出席(会社法376条)、子会社への調査(会社法374条3項)など計算書類の作成に必要な権限を有している。

 会計参与の会社に対する責任については、取締役の任務懈怠責任と同じく会社法423条の損害賠償責任がある。
 この責任について、総株主の同意がなければ免除できない規定(会社法324条)、株主総会での責任一部免除規定(会社法325条)、定款の定めによる取締役(会)決議による責任一部免除規定(会社法326条)、責任限定契約規定(会社法347条)についての適用もある。
 また、この責任は株主代表訴訟の対象でもある。(会社法847条)

 会計参与の会社・第三者に対する責任については、悪意又は重大な過失があるときは、第三者に生じた損害を賠償する責任がある。(会社法429条1項)
 計算書類等に虚偽の記載をした場合は、その注意を怠らなかったことを証明しないときは、損害賠償責任を負うと定められている。(会社法429条2項2号)

 会計参与を設置したときは、会計参与を設置した旨及び当該会計参与の氏名又は名称及び会社法378条1項で規定している会計参与が保存を義務づけられている計算書類等の備え置き場所を登記するものとしている。(会社法911条3項16号)
 備え場所を登記事項としたのは、株主及び債権者に公示する必要があるためだ。
 
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▲ 第2章 株式会社関係
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Last-modified: 2024-04-09 (火) 10:17:59