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2.6.7.取締役の責任について

2.6.7.取締役の責任について

 取締役の責任について改正前は、
 1.違法な利益の配当した場合
 2.株主の権利の行使に関する利益供与をした場合
 3.他の取締役に対し金銭の貸付をし未だ弁済のない場合
 4.利益相反取引
について取締役の責任は無過失責任(過失がなくても当然に責任を負う。)とされていた。
 ところが平成14年に導入された委員会設置会社では、上記1,3.4の行為について商法特例法により取締役の責任が過失責任(過失がなければ責任を負わない。)である旨明記された。
 
 このように取締役の会社に対する各種の責任について、委員会設置会社の場合とそれ以外の株式会社の場合とで均衡のとれない部分があるので、調整を図るため、すべての会社の取締役の責任は、原則として過失責任とし、今まで委員会設置会社以外では無過失責任とされていた上記1~4については、下記のように原則過失責任としながら、特別の規定を置いている。
 
 1.違法な利益の配当した場合については、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、責任を負わないとされ(会社法462条2項)過失責任である旨が明記された。
 なお、支払い義務が生じる場合、分配可能額を超えて分配された額は総株主の同意がある場合でも免除できないとされている。(462条3項)
 
 2.株主の権利の行使に関する利益供与をした場合の取締役の責任ついては、委員会設置会社でも改正前は無過失責任であった。
 改正後は、すべての会社の取締役の責任が、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合には、責任を負わない(会社法120条4項)とされた。
 ただし、当該利益の供与を実際にした取締役は、当然のことながら無過失責任のままで、注意を怠らなかったことを証明しても責任を免れない。
 この責任は、総株主の同意がなければ免除できない。(会社法120条5項)
 
 3.他の取締役に対し金銭の貸付をし未だ弁済のない場合については、下記の利益相反取引に含まれることになった。
 
 4.利益相反取引については、一般の任務懈怠と同じに規定している。(会社法423条)
 ただし、一般の任務懈怠と異なり、利益相反取引により会社に損害が生じた場合は、任務を怠ったと推定されることになっている。(会社法423条3項)
推定が働くので、立証責任が転換される結果、任務を怠らなかったことを証明しない限り、責任を負うことになる。
 なお、自己のために株式会社と直接利益相反取引をした取締役については、たとえ任務を怠らなかったことを証明しても、会社に損害がある以上、自己の利益を保持し続けることは許されないので、無過失責任とされている。(会社法428条)
 過失責任になったことにより、改正前利益相反取引の取締役の責任を総株主の議決権の3分の2以上の多数を以て之を免除できる規定は廃止された。
 ただし、利益相反取引については、一般の任務懈怠と同じく総株主の同意で免除できる。(会社法424条)責任の一部免除も直接利益相反取引をした取締役を除いて認められる。(会社法425条~428条)
 
 改正前にあった、「任務懈怠行為が取締役会の決議に基づいてなされたるときは、その決議に賛成した取締役は、その行為をしたものとみなす」という規定は廃止された。
 
 取締役会を設置していない株式会社における取締役の任務懈怠責任についても、他の機関設計をしている会社と同じく、株主総会による一部免除、定款の定めによる取締役の過半数の同意による一部免除、社外取締役の責任限定契約について認められる。(会社法425条~427条)
 
 取締役会を設置していない株式会社における利益相反取引及び競合取引については、株主総会の承認を要するものとした上、その承認決議は普通決議で足りるとしている。(会社法356条)
 
▲ 新会社法の改正ポイント
▲ 第2章 株式会社関係
▲ 2.6 取締役・取締役会
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