「大東亜共栄圏」の実態
をテンプレートにして作成
開始行:
***「大東亜共栄圏」の実態 [#wd099e07]
日本軍占領下のアジア
沖縄県史料編集室編『沖縄戦研究Ⅱ』沖縄県教育委員会発行 、...
林 博史
これは新沖縄県史の一環として、沖縄戦の前史にあたる時期に...
''(1)「大東亜共栄圏」''
開戦以来、 次々と占領地域を広げていった日本軍は、1942...
日本軍はこれらの占領地に軍政をしき、陸軍が香港、フィリ...
軍政については大本営政府連絡会議が基本方針を決めたが、...
''(2)軍政の組織''
戦争時に占領地において占領軍が一般住民にたいして行政を...
陸軍では軍政は陸軍省の管掌とされ、南方軍指揮下の各軍に...
軍政を施行するにあたっては「極力残存統治機構ヲ利用スル...
軍人以外の軍政要員のために司政官という官職が設けられた...
''(3)資源の獲得と軍票''
軍政の最大の目的は重要資源の獲得のためであったが、開戦...
日本が取得することを期待した資源は、大本営陸軍部が作成...
最も重要視されていた石油について見ると、北ボルネオのミ...
日本軍は占領地に軍票を流通させた。日本軍は開戦前から現...
1942年3月に占領地の資源開発、為替管理、敵産管理などを目...
日本軍の軍政を財政的に支えた一つが阿片だった。イギリス...
''(4)経済の破綻と民衆生活''
東南アジアの諸地域はイギリス、フランス、オランダなどの...
蘭印の場合は、石油などの鉱産物やゴム、キナ皮、コショウ...
フィリピンの場合は、輸出入ともにほぼ全面的にアメリカに...
このように東南アジアはその域内ならびにアメリカ、イギリ...
日本とこれらの地域との関係は、1930年代においてはフィリ...
日本軍による占領によって、東南アジアと外部地域との交易...
ゴム、砂糖、コーヒーなどの輸出品は輸出先を失い、そこで働...
日本は1943年後半よりこの地域で必要な工業製品を地元で生...
食糧問題で最も深刻だったのはベトナムだった。ベトナム北...
日本軍の占領地域ではないが、インド東部のベンガル地方で19...
''(5)民族対策と民族主義''
東南アジアには多様な民族が混在していた。それらの民族間...
英領マラヤ(マレー半島とシンガポール)はもともとはマレー...
宗教については、マレー人はイスラム教、中国人は仏教や道...
中国人は中国を祖国と考え、インド人はインドを祖国と考え...
マレー人は各地のサルタンを政治的宗教的に支配者として仰...
1931年(昭和6)の満州事変、特に1937年(昭和12)の日中...
この政策の表れがシンガポールやマレー半島各地での華僑虐殺...
こうした残虐行為を含む華僑に対する強硬策は華僑の反発を...
一方、マレー人に対してはどうだったのか。すでに開戦前に日本...
その後、戦局が日本軍に不利になってきた1943年12月、日本軍...
こうしたことは東南アジア各地でも見られた。
ビルマでは、民族主義団体のタキン党(主人を意味する)が...
1943年8月日本はビルマに独立を与えたが、首相にはタキン党...
日本軍はビルマ進攻にあたって、民族主義運動を利用したが、...
''(6)領土拡張と大東亜会議''
日本軍が占領した地域を日本の領土にしてしまうのか、それ...
シンガポール占領前日の1942年2月14日大本営政府連絡会議...
1943年1月14日大本営政府連絡会議は「占領地帰属腹案」を...
ビルマに関しては、すでに1937年にイギリスがビルマをイン...
しかしこの独立は実質的には「独立」の名に値しないもので...
1943年2月1日の衆議院秘密会において南方の軍政状況を説...
この方針に基づき1943年8月1日ビルマが、10月14日フィリ...
その他の地域の扱いについては、1943年5月31日の御前会議...
六 其ノ他ノ占領地域ニ対スル方策ヲ左ノ通リ定ム 但シ(ロ...
(イ)「マライ」「スマトラ」「ジャワ」「ボルネオ」「セレ...
(ロ)前号各地域ニ於テハ原住民ノ民度ニ応ジ努メ...
(ハ)「ニューギニア」等(イ)以外ノ地域ノ処理ニ関シテハ...
(ニ)前記各地ニ於テハ当分軍政ヲ継続ス
つまり現在のマレーシア、シンガポール、インドネシアにあ...
このことは日本が東南アジア諸国を欧米帝国主義から解放し...
この御前会議の決定のなかで同年10月下旬ころに大東亜会議...
1943年6月大本営政府連絡会議はマレー北部の4つの州、ペ...
1943年11月5~6日に東京で大東亜会議が開催された。この...
会議では「大東亜共同宣言」を決議した。この中には「大東...
インドネシアに関しては、1944年9月小磯首相は議会で、将...
インドネシアと同じく日本の領土と決定したマラヤについて...
''(7)教育文化政策''
すでに植民地であり日本の領土であった朝鮮や台湾ほどには...
ただ長年にわたって植民地支配を行なってきた朝鮮や台湾と違...
現在でも戦時中に小学校教育をうけた人のなかには、唱歌を...
''(8)強制労働と労務動員''
日本軍は戦争遂行のために労働力の動員をはかった。特に人口...
泰緬鉄道の建設にあたっては捕虜だけではなく、民間のロウム...
泰緬鉄道の建設現場では、厳しいジャングルのなかでの激し...
当時、シンガポールの昭南博物館で働いていたコーナー氏はジ...
「彼らはタイへ船で輸送されたが、その船は途中シンガポー...
カトンには日本軍の慰安所があり、ロウムシャとともに女性...
東南アジアの住民とは言えないが、英軍兵士としてシンガポー...
香港では強制移住政策がとられ、占領当初の人口約150万人は45...
''(9)日本軍「慰安婦」''
太平洋戦争の開始前から日本軍は占領地での慰安所設置を計...
マレー進攻作戦においては、その作戦中から慰安所の設置がお...
東南アジアでは朝鮮や台湾、日本本土から連れてこられた女性...
第一にマラヤでは残っていた元からゆきさんに慰安婦集めを委...
第二に新聞などで募集したケースがある。シンガポール占領直...
第三に日本軍が駐留する地元の住民組織の幹部に慰安婦集めを...
第四に詐欺による募集である。いい仕事があるから、事務員や...
第五に暴力的な拉致によるケースである。日本兵が家に押し入...
徴集にあたって、物理的な暴力が使われていない場合でも連れ...
中国での事例としては、山西省盂県で、日本軍が女性たちを拉...
また戦争末期の1944年以降、ジャワの女性がマラヤやボルネ...
地元の女性ではないが、インドネシアで日本軍に抑留されてい...
慰安所における状況は、軍の上級機関が管理し、業者に経営...
日本軍兵士による地元女性に対する強姦事件も多かった。被害...
占領地の女性に対する強姦は慰安所の設置によってもなくなら...
''(10)住民虐殺・虐待''
アジア太平洋戦争における最初の大規模な残虐事件は、シンガポ...
戦後、日本軍関係者が作成した文書では約5000人を「厳重処分...
シンガポール粛清が始まった2月21日、第25軍はマレー...
日本軍はマレー半島の華僑全体を「抗日的」だとみなし、シン...
フィリピン、ビルマ、インドネシアなどでは戦争の末期に大規...
ビルマでは、これまでわかっているかぎりで最大規模の虐殺は1...
ビルマではインドからイギリス軍の反攻が行われ、それに呼...
侵略軍であった日本軍は住民から信頼されていなかったし、...
ところで、こうした日本軍の残虐行為はアジア民衆に対して...
サイパンには約2万人の日本の民間人が残っていたが、その半...
さらに1944年10月から米軍の反攻が始まったフィリピンでは、...
こうした状況がさらに大規模に生まれたのが沖縄戦であった。
''(11)捕虜虐待''
太平洋戦争において日本軍の捕虜になった連合軍将兵は約35...
戦争中の捕虜の扱いについては1929年(昭和4)に締結されたジ...
日本軍は国内外に捕虜収容所を設け捕虜を収容したが、その...
泰緬鉄道の建設には約6万5千人の捕虜が投入された。泰緬鉄...
戦局が悪化すると、捕虜たちの待遇が一層悪化したにとどま...
またボルネオ島東北部のサンダカンの捕虜収容所にいたイギ...
軍人だけでなく東南アジアにいた欧米の民間人も日本軍によっ...
捕虜も民間抑留者も、解放されてからも精神障害や身体障害、...
欧米諸国の兵士に対しては、一応捕虜にする措置がとられた...
''(12)中国占領地''
日本軍は満州を除く中国本土に約70万人、敗戦時には約100万...
1940年9月の第一期晋中作戦、すなわち山西省の抗日根拠地に...
こうした三光作戦や「無人区」化作戦によって、1941年から翌...
しかし、こうした日本軍の作戦は中国民衆を一層、抗日に追い...
''(13)植民地と満州の戦争動員''
日中戦争の開始以来、強化されていた皇民化政策は太平洋戦...
労働力不足を補うための朝鮮人強制連行は1939年の「募集」...
徴用令によって軍属として徴用された者も多く、一部は捕虜...
日本本土をはじめ南方、沖縄、サハリンなどに強制連行され...
台湾でも、日本語の使用と神社参拝の強要、改姓名という日...
満州では日本の兵站基地として石炭や鉄など重要物資の生産...
''(14)日本軍の特質''
日本軍がアジア各地でおこなったことを考えると日本軍の特質...
また軍はすべてが命令によって動く上下関係の厳しい組織であ...
軍隊に内在する論理が女性に対する性暴力を生み出す。一般...
しかし日本軍の問題を考える場合、こうした軍隊の持ってい...
第一に日清戦争・日露戦争以来培われてきた、アジア民衆に対す...
第二に日本軍が占領地の一般住民を敵視したことである。占領...
第三に日本軍の「現地調達」主義である。日本軍は各地で作...
略奪にあたって、住民の抵抗があれば、住民に対する残虐行...
中国など人が住んでいるところではこうした方法で食糧が調達...
第四に国際法を無視したことである。第一次世界大戦までは、...
第五に日本軍内部の非人間性である。日本軍でも「私的制裁」...
軍隊という組織そのものが持つ暴力性はこうした日本軍の特徴...
''(15)抗日闘争''
日本軍による過酷な占領に対して、各地で抗日闘争が繰り...
フィリピンではさまざまなゲリラ組織が作られたが、その中心...
マラヤでも多様なゲリラ組織が生まれた。最も強力だったの...
英軍からゲリラ用の訓練を受けた計165人は4つのグループに分...
中国国民党系の華僑は華僑抗日軍を組織、主に中北部で活動し...
インドからのマレー半島反攻を計画していたイギリス軍は136...
インドシナでは日本とフランスに反対するベトナム独立同盟会...
タイは当時、東南アジアでは唯一の独立国であったが、実質的...
ビルマではすでに見たように、ビルマでは日本軍によって育て...
インドネシアでは、オランダによって投獄されていたスカル...
太平洋戦争の当初、日本軍が東南アジア各地で欧米諸国の軍隊...
''(16)戦争被害と傷痕''
日中戦争~太平洋戦争下におけるアジア各国の被害は甚大...
なお日本の死者が約310万人、うち軍人軍属230万人、民間人8...
戦争被害は死者のみに限られない。家を焼かれたり破壊され...
人的物的被害とは異なるさまざまな傷痕も残している。マレ...
ビルマでは、多数派のビルマ族のほかにカレン族やカチン族...
植民地支配は通常、民族を分断し統治するという方法を取る...
日本軍は戦争後期になると日本軍を補うために現地の住民を...
[参考文献](単行本を中心にあげ、論文は一部を除いて省略...
石田甚太郎『ワラン・ヒヤ―日本軍によるフィリピン住民虐殺の...
岩武照彦『南方軍政論集』厳南堂書店、1989年
上羽修「撫順炭坑中国人労働者の大量死」『戦争責任研究』第1...
内海愛子、田辺寿夫編著『アジアから見た「大東亜共栄圏」』...
内海愛子、G.マコーマック、H.ネルソン『泰緬鉄道と日本の戦...
江口圭一『十五年戦争小史<新版>』青木書店、1991年
小田部雄次、林博史、山田朗『キーワード日本の戦争犯罪』雄...
許雲樵、蔡史君編『日本軍占領下のシンガポール』青木書店、1...
越田稜編『アジアの教科書に書かれた日本の戦争・東南アジア...
―― 『アジアの教科書に書かれた日本の戦争・東アジア編』...
小林英夫『大東亜共栄圏』岩波ブックレット、1988年
―― 『日本軍政下のアジア』岩波新書、1993年
桜本富雄『シンガポールは陥落せり』青木書店、1986年
シンガポール・ヘリテージ・ソサエティ編『シンガポール近い...
『世界』1994年2月号、<特集 白書・日本の戦争責任>
『戦争責任研究』各号所収の論文・資料(1998年9月現在、第21...
林博史『裁かれた戦争犯罪―イギリスの対日戦犯裁判』岩波書店...
―― 『華僑虐殺―日本軍支配下のマレー半島』すずさわ書店、19...
疋田康行編著『「南方共栄圏」-戦時日本の東南アジア経済支...
藤原彰、今井清一編『十五年戦争史』1~4、青木書店、1989年
防衛庁防衛研究所戦史部編『史料集 南方の軍政』朝雲新聞社...
姫田光義、陳平『もう一つの三光作戦』青木書店、1989年
油井大三郎、小菅信子『連合軍捕虜虐待と戦後責任』岩波ブッ...
吉川利治編著『近現代史のなかの日本と東南アジア』東京書籍...
吉見義明、林博史編著『共同研究 日本軍慰安婦』大月書店、1...
終了行:
***「大東亜共栄圏」の実態 [#wd099e07]
日本軍占領下のアジア
沖縄県史料編集室編『沖縄戦研究Ⅱ』沖縄県教育委員会発行 、...
林 博史
これは新沖縄県史の一環として、沖縄戦の前史にあたる時期に...
''(1)「大東亜共栄圏」''
開戦以来、 次々と占領地域を広げていった日本軍は、1942...
日本軍はこれらの占領地に軍政をしき、陸軍が香港、フィリ...
軍政については大本営政府連絡会議が基本方針を決めたが、...
''(2)軍政の組織''
戦争時に占領地において占領軍が一般住民にたいして行政を...
陸軍では軍政は陸軍省の管掌とされ、南方軍指揮下の各軍に...
軍政を施行するにあたっては「極力残存統治機構ヲ利用スル...
軍人以外の軍政要員のために司政官という官職が設けられた...
''(3)資源の獲得と軍票''
軍政の最大の目的は重要資源の獲得のためであったが、開戦...
日本が取得することを期待した資源は、大本営陸軍部が作成...
最も重要視されていた石油について見ると、北ボルネオのミ...
日本軍は占領地に軍票を流通させた。日本軍は開戦前から現...
1942年3月に占領地の資源開発、為替管理、敵産管理などを目...
日本軍の軍政を財政的に支えた一つが阿片だった。イギリス...
''(4)経済の破綻と民衆生活''
東南アジアの諸地域はイギリス、フランス、オランダなどの...
蘭印の場合は、石油などの鉱産物やゴム、キナ皮、コショウ...
フィリピンの場合は、輸出入ともにほぼ全面的にアメリカに...
このように東南アジアはその域内ならびにアメリカ、イギリ...
日本とこれらの地域との関係は、1930年代においてはフィリ...
日本軍による占領によって、東南アジアと外部地域との交易...
ゴム、砂糖、コーヒーなどの輸出品は輸出先を失い、そこで働...
日本は1943年後半よりこの地域で必要な工業製品を地元で生...
食糧問題で最も深刻だったのはベトナムだった。ベトナム北...
日本軍の占領地域ではないが、インド東部のベンガル地方で19...
''(5)民族対策と民族主義''
東南アジアには多様な民族が混在していた。それらの民族間...
英領マラヤ(マレー半島とシンガポール)はもともとはマレー...
宗教については、マレー人はイスラム教、中国人は仏教や道...
中国人は中国を祖国と考え、インド人はインドを祖国と考え...
マレー人は各地のサルタンを政治的宗教的に支配者として仰...
1931年(昭和6)の満州事変、特に1937年(昭和12)の日中...
この政策の表れがシンガポールやマレー半島各地での華僑虐殺...
こうした残虐行為を含む華僑に対する強硬策は華僑の反発を...
一方、マレー人に対してはどうだったのか。すでに開戦前に日本...
その後、戦局が日本軍に不利になってきた1943年12月、日本軍...
こうしたことは東南アジア各地でも見られた。
ビルマでは、民族主義団体のタキン党(主人を意味する)が...
1943年8月日本はビルマに独立を与えたが、首相にはタキン党...
日本軍はビルマ進攻にあたって、民族主義運動を利用したが、...
''(6)領土拡張と大東亜会議''
日本軍が占領した地域を日本の領土にしてしまうのか、それ...
シンガポール占領前日の1942年2月14日大本営政府連絡会議...
1943年1月14日大本営政府連絡会議は「占領地帰属腹案」を...
ビルマに関しては、すでに1937年にイギリスがビルマをイン...
しかしこの独立は実質的には「独立」の名に値しないもので...
1943年2月1日の衆議院秘密会において南方の軍政状況を説...
この方針に基づき1943年8月1日ビルマが、10月14日フィリ...
その他の地域の扱いについては、1943年5月31日の御前会議...
六 其ノ他ノ占領地域ニ対スル方策ヲ左ノ通リ定ム 但シ(ロ...
(イ)「マライ」「スマトラ」「ジャワ」「ボルネオ」「セレ...
(ロ)前号各地域ニ於テハ原住民ノ民度ニ応ジ努メ...
(ハ)「ニューギニア」等(イ)以外ノ地域ノ処理ニ関シテハ...
(ニ)前記各地ニ於テハ当分軍政ヲ継続ス
つまり現在のマレーシア、シンガポール、インドネシアにあ...
このことは日本が東南アジア諸国を欧米帝国主義から解放し...
この御前会議の決定のなかで同年10月下旬ころに大東亜会議...
1943年6月大本営政府連絡会議はマレー北部の4つの州、ペ...
1943年11月5~6日に東京で大東亜会議が開催された。この...
会議では「大東亜共同宣言」を決議した。この中には「大東...
インドネシアに関しては、1944年9月小磯首相は議会で、将...
インドネシアと同じく日本の領土と決定したマラヤについて...
''(7)教育文化政策''
すでに植民地であり日本の領土であった朝鮮や台湾ほどには...
ただ長年にわたって植民地支配を行なってきた朝鮮や台湾と違...
現在でも戦時中に小学校教育をうけた人のなかには、唱歌を...
''(8)強制労働と労務動員''
日本軍は戦争遂行のために労働力の動員をはかった。特に人口...
泰緬鉄道の建設にあたっては捕虜だけではなく、民間のロウム...
泰緬鉄道の建設現場では、厳しいジャングルのなかでの激し...
当時、シンガポールの昭南博物館で働いていたコーナー氏はジ...
「彼らはタイへ船で輸送されたが、その船は途中シンガポー...
カトンには日本軍の慰安所があり、ロウムシャとともに女性...
東南アジアの住民とは言えないが、英軍兵士としてシンガポー...
香港では強制移住政策がとられ、占領当初の人口約150万人は45...
''(9)日本軍「慰安婦」''
太平洋戦争の開始前から日本軍は占領地での慰安所設置を計...
マレー進攻作戦においては、その作戦中から慰安所の設置がお...
東南アジアでは朝鮮や台湾、日本本土から連れてこられた女性...
第一にマラヤでは残っていた元からゆきさんに慰安婦集めを委...
第二に新聞などで募集したケースがある。シンガポール占領直...
第三に日本軍が駐留する地元の住民組織の幹部に慰安婦集めを...
第四に詐欺による募集である。いい仕事があるから、事務員や...
第五に暴力的な拉致によるケースである。日本兵が家に押し入...
徴集にあたって、物理的な暴力が使われていない場合でも連れ...
中国での事例としては、山西省盂県で、日本軍が女性たちを拉...
また戦争末期の1944年以降、ジャワの女性がマラヤやボルネ...
地元の女性ではないが、インドネシアで日本軍に抑留されてい...
慰安所における状況は、軍の上級機関が管理し、業者に経営...
日本軍兵士による地元女性に対する強姦事件も多かった。被害...
占領地の女性に対する強姦は慰安所の設置によってもなくなら...
''(10)住民虐殺・虐待''
アジア太平洋戦争における最初の大規模な残虐事件は、シンガポ...
戦後、日本軍関係者が作成した文書では約5000人を「厳重処分...
シンガポール粛清が始まった2月21日、第25軍はマレー...
日本軍はマレー半島の華僑全体を「抗日的」だとみなし、シン...
フィリピン、ビルマ、インドネシアなどでは戦争の末期に大規...
ビルマでは、これまでわかっているかぎりで最大規模の虐殺は1...
ビルマではインドからイギリス軍の反攻が行われ、それに呼...
侵略軍であった日本軍は住民から信頼されていなかったし、...
ところで、こうした日本軍の残虐行為はアジア民衆に対して...
サイパンには約2万人の日本の民間人が残っていたが、その半...
さらに1944年10月から米軍の反攻が始まったフィリピンでは、...
こうした状況がさらに大規模に生まれたのが沖縄戦であった。
''(11)捕虜虐待''
太平洋戦争において日本軍の捕虜になった連合軍将兵は約35...
戦争中の捕虜の扱いについては1929年(昭和4)に締結されたジ...
日本軍は国内外に捕虜収容所を設け捕虜を収容したが、その...
泰緬鉄道の建設には約6万5千人の捕虜が投入された。泰緬鉄...
戦局が悪化すると、捕虜たちの待遇が一層悪化したにとどま...
またボルネオ島東北部のサンダカンの捕虜収容所にいたイギ...
軍人だけでなく東南アジアにいた欧米の民間人も日本軍によっ...
捕虜も民間抑留者も、解放されてからも精神障害や身体障害、...
欧米諸国の兵士に対しては、一応捕虜にする措置がとられた...
''(12)中国占領地''
日本軍は満州を除く中国本土に約70万人、敗戦時には約100万...
1940年9月の第一期晋中作戦、すなわち山西省の抗日根拠地に...
こうした三光作戦や「無人区」化作戦によって、1941年から翌...
しかし、こうした日本軍の作戦は中国民衆を一層、抗日に追い...
''(13)植民地と満州の戦争動員''
日中戦争の開始以来、強化されていた皇民化政策は太平洋戦...
労働力不足を補うための朝鮮人強制連行は1939年の「募集」...
徴用令によって軍属として徴用された者も多く、一部は捕虜...
日本本土をはじめ南方、沖縄、サハリンなどに強制連行され...
台湾でも、日本語の使用と神社参拝の強要、改姓名という日...
満州では日本の兵站基地として石炭や鉄など重要物資の生産...
''(14)日本軍の特質''
日本軍がアジア各地でおこなったことを考えると日本軍の特質...
また軍はすべてが命令によって動く上下関係の厳しい組織であ...
軍隊に内在する論理が女性に対する性暴力を生み出す。一般...
しかし日本軍の問題を考える場合、こうした軍隊の持ってい...
第一に日清戦争・日露戦争以来培われてきた、アジア民衆に対す...
第二に日本軍が占領地の一般住民を敵視したことである。占領...
第三に日本軍の「現地調達」主義である。日本軍は各地で作...
略奪にあたって、住民の抵抗があれば、住民に対する残虐行...
中国など人が住んでいるところではこうした方法で食糧が調達...
第四に国際法を無視したことである。第一次世界大戦までは、...
第五に日本軍内部の非人間性である。日本軍でも「私的制裁」...
軍隊という組織そのものが持つ暴力性はこうした日本軍の特徴...
''(15)抗日闘争''
日本軍による過酷な占領に対して、各地で抗日闘争が繰り...
フィリピンではさまざまなゲリラ組織が作られたが、その中心...
マラヤでも多様なゲリラ組織が生まれた。最も強力だったの...
英軍からゲリラ用の訓練を受けた計165人は4つのグループに分...
中国国民党系の華僑は華僑抗日軍を組織、主に中北部で活動し...
インドからのマレー半島反攻を計画していたイギリス軍は136...
インドシナでは日本とフランスに反対するベトナム独立同盟会...
タイは当時、東南アジアでは唯一の独立国であったが、実質的...
ビルマではすでに見たように、ビルマでは日本軍によって育て...
インドネシアでは、オランダによって投獄されていたスカル...
太平洋戦争の当初、日本軍が東南アジア各地で欧米諸国の軍隊...
''(16)戦争被害と傷痕''
日中戦争~太平洋戦争下におけるアジア各国の被害は甚大...
なお日本の死者が約310万人、うち軍人軍属230万人、民間人8...
戦争被害は死者のみに限られない。家を焼かれたり破壊され...
人的物的被害とは異なるさまざまな傷痕も残している。マレ...
ビルマでは、多数派のビルマ族のほかにカレン族やカチン族...
植民地支配は通常、民族を分断し統治するという方法を取る...
日本軍は戦争後期になると日本軍を補うために現地の住民を...
[参考文献](単行本を中心にあげ、論文は一部を除いて省略...
石田甚太郎『ワラン・ヒヤ―日本軍によるフィリピン住民虐殺の...
岩武照彦『南方軍政論集』厳南堂書店、1989年
上羽修「撫順炭坑中国人労働者の大量死」『戦争責任研究』第1...
内海愛子、田辺寿夫編著『アジアから見た「大東亜共栄圏」』...
内海愛子、G.マコーマック、H.ネルソン『泰緬鉄道と日本の戦...
江口圭一『十五年戦争小史<新版>』青木書店、1991年
小田部雄次、林博史、山田朗『キーワード日本の戦争犯罪』雄...
許雲樵、蔡史君編『日本軍占領下のシンガポール』青木書店、1...
越田稜編『アジアの教科書に書かれた日本の戦争・東南アジア...
―― 『アジアの教科書に書かれた日本の戦争・東アジア編』...
小林英夫『大東亜共栄圏』岩波ブックレット、1988年
―― 『日本軍政下のアジア』岩波新書、1993年
桜本富雄『シンガポールは陥落せり』青木書店、1986年
シンガポール・ヘリテージ・ソサエティ編『シンガポール近い...
『世界』1994年2月号、<特集 白書・日本の戦争責任>
『戦争責任研究』各号所収の論文・資料(1998年9月現在、第21...
林博史『裁かれた戦争犯罪―イギリスの対日戦犯裁判』岩波書店...
―― 『華僑虐殺―日本軍支配下のマレー半島』すずさわ書店、19...
疋田康行編著『「南方共栄圏」-戦時日本の東南アジア経済支...
藤原彰、今井清一編『十五年戦争史』1~4、青木書店、1989年
防衛庁防衛研究所戦史部編『史料集 南方の軍政』朝雲新聞社...
姫田光義、陳平『もう一つの三光作戦』青木書店、1989年
油井大三郎、小菅信子『連合軍捕虜虐待と戦後責任』岩波ブッ...
吉川利治編著『近現代史のなかの日本と東南アジア』東京書籍...
吉見義明、林博史編著『共同研究 日本軍慰安婦』大月書店、1...
ページ名: