植民地、属領、保護国

プロフィール画像

white_namekoさん

2013/1/3022:06:09

植民地、属領、保護国…それぞれの違いを具体的に教えてください。

辞書の検索結果やwikiの検索結果の貼りつけは勘弁してください。
読んでもいまいちピンとこなかったので。

具体的な例とかを挙げて分かりやすく説明してもらえると助かります。

   共感した 0

閲覧数:

   2,945

回答数:

   2

お礼:

   100枚

違反報告
ベストアンサーに選ばれた回答

プロフィール画像

celtscepticさん

2013/2/418:37:19

残念ながら、きれいに分類する事は無理なのですが、植民地というのが、最も広い概念で、その中に保護国、直轄植民地、とかいった様々なものが含まれている、と考えて頂く方がよいと思います。

まず、↓の国立公文書館アジア歴史資料センターのWebにある、「仏領インドシナ」の説明をご覧ください。
http://www.jacar.go.jp/nichibei/word/index5.html

仏領インドシナを、「5直轄植民地、3保護国、1保護領、1租借地で構成され」る「フランスの植民地」と説明しています。つまり、細かい差異は無視して、いわゆる「欧米による植民地支配の時代」の産物は、ひとまとめにして「植民地」と呼ばれている、という事の、これはひとつの例です。

次に、保護国(保護領)ですが、これは、(少なくとも建前上は)、保護する側の国と保護される側の国が、条約などで合意して、外交・軍事などの主権を、保護される側が保護する側に委ねるケースをいいます。歴史上の例としては、1905年の第二次日韓協約で外交権を日本に接収されてから併合されるまでの大韓帝国、第一次大戦中から大戦後間もなくまでのエジプト(英国の保護国)などがあります。但し、既に述べたように、保護国(保護領)も、植民地の中に入れて語られる事が多いです。

属領ですが、これも甚だ広い概念で、Yahoo!国語辞書で調べても、大辞泉では「本国に付属した領土。属領地。」、大辞林でも「ある国に付属している領地。本国の支配下にある領土。」程度の定義しかありません。「付属している」という定義からして、政治・行政上も完全に本国と同じになっている場合(=つまり、本国の一部として完全に組み込まれた場合)は使いませんが、そうでなければ、かなり幅広く使われます。

例えば、国立公文書館アジア歴史資料センターのWebで見られる、RefナンバーがA08071975300の「外国船舶の日本内地及属領並管治地域間の貿易に関する件」という資料の5ページ目には、「外国船舶は日本内地と朝鮮、台湾等の属領地及び関東州、南洋に於ける管治地域との間…」とありますから、朝鮮と台湾を属領地と呼んでいるのは明らかです。(その一方で、朝鮮・台湾を植民地と呼んでいる資料も、アジア歴史資料センターでいくつも見られます。)
ですので、歴史を語っている場合は、属領は、非常に広い概念で、事実上植民地とほぼ同義、と考えた方がよい、と思います。

一方、現在、英語でいえば、dependencyとかdependent territoryなどと呼ばれる地域も存在します。これを、直訳すると「属領」になります。英国でいえば、中世以来の王室領であるマン島、チャネル諸島や、かつて植民地に組み入れてそのまま残っている(例えば)バミューダ諸島などが入ります。アメリカでは、グアム、プエルトリコ、北マリアナ諸島などが入ります。一般的には、かなり広範な自治権が認められていますが、外交・軍事などなんらかの権限が、英国なりアメリカなりに委ねられており、「独立国」ではない為に、今でも「dependency」(属領)という呼び方をします。こういう「属領」が、法的な面で、かつての植民地と本質的にどこが違うか、というと、本質的なところでの違いはありません。が、日本では「植民地」という言い方が否定的な意味を持って捉えられる事が多いので、そういう言い方はせず、英語の直訳で「属領」とされる事があります。(英国に於いては、colonyという言葉は、日本での植民地ほど否定的なニュアンスは持たないので、例えばバミューダをcolonyと呼んだりはしています。)

そんな訳で、歴史を語っている時は、植民地と属領はほぼ同義、現在を語っている時は、属領=dependency(何らかの権限が他国に委ねられている)で、植民地という言い方は(少なくとも日本語では)あまり言わない、といったところでしょうか…。

保護国(領)=英語ではprotectorate=は、第二次日韓協約がそうであるように、(少なくとも建前上は)相互が合意の上、外交権などをある国に委ねた訳で、それは、例えばバミューダが、独立するかしないかを住民投票した結果、dependency(=属領)に残っている訳ですから、植民地や保護領と一体どこが違うねん?、というと、(仕組みそのものには)本質的な違いはないのですが、そういう言い方は、少なくとも日本ではあまりしません。

全然、わかりやすい説明になっているとは思えませんが、実際に、こういう使い方がされているので、正しくお伝えしようとすると、こういう事になってしまいます。