「iPhoneは高い」と感じる人は世界を知らなすぎる

「iPhoneは高い」と感じる人は世界を知らなすぎる 「高価格帯・高品質」が売れない国になった日本

7/27 14:32 配信

東洋経済オンライン

「日本は物価も給料もいまだに激安」である。その事実を世界と比較して見てみましょう(写真:USSIE/PIXTA)

「外国人が観光地に殺到!」――最近よく見かけるこのニュース。もちろん、長く苦しかった観光業が復活するのは喜ばしいことですが、実は外国人がこぞって訪れているのは「日本が安い国」だからなのです。
元国連専門機関職員の谷本真由美さんは、「日本は物価も給料もいまだに激安」であり、その安さゆえに「海外から買われている」のだと言います。本稿では、谷本さんの最新刊『激安ニッポン』からの抜粋で、「日本の物価がいかに安いか」について、iPhoneやスニーカー、テレビCMなどの実例を挙げながら、紹介していきます。

■“ペラペラの服”を着る若者たち

 「日本では安いものしか売れない」ことを表している例はいくらでもあります。日本に帰ってハッと気がつくのは、日本の若い人たちは、他の先進国と「服の流行」がかなり違うという点です。

 若い人はトレンドに敏感なので、海外の若者たちは最新の流行りのスニーカーを履いていたり、トレンドの服を着ていたりします。

 一方、日本でまず気がつくのは、若い人の足元を見ても、北米や欧州で流行している最新モデルのスニーカーを履いている人がほとんどいないということです。少し新しいモデルを履いている人もいるかなと思っても、よく見ると2シーズンぐらい前のものです。

 しかも、他の国で流行っているNIKEなどではなく、海外では特に人気のないブランドのスニーカーを履いている人が非常に多いのです。つまり、「在庫が余っている古いもの」を選んでいる人が多いということです。

 これは日本人が服装にこだわらなくなったからでしょうか?  若い人の場合、そんなことはないと思います。今も昔も日本人ほど自分のイメージや見た目を気にする人たちはいません。しかし、最新モデルは2、3万円しますから、若い人たちにとってはもう買えない人が多いのです。

 さらにバッグを見ていてもこれはよくわかります。

 日本は20年ぐらい前に比べると、随分と安いバッグを持つ人が増えました。女性は布バッグや合成革のバッグが目立ち、他の先進国の人々に比べると、明らかに品質が低いものを持っているのです。

 さらに、若い人の着ている服を見ると、ブランド服を着ていないのはもちろん、明らかに生地がペラペラです。化学繊維の薄い生地の服や毛玉のついている服を着ている人が昔よりうんと増えました。

 他の先進国の若者たちは、もっと明らかに質がいい生地の服を着ています。彼らが着ているのは、一見カジュアルに見えても、実は高性能のアウトドア製品だったり、高級生地のメリノウールだったりするのです。

 店頭に並ぶ商品も日本とは違います。

 たとえば、イギリスやドイツだと、メリノウール100%のスポーツウェアやセーターが都市部のデパートで売られています。そこではTシャツ1枚が1万5000円ぐらい、セーターは1枚3万円ぐらいします。

 イギリスやドイツにも激安の衣料品店はあるのですが、同時に超高品質のものもよく売っているのです。

 つまり、若者にもそれだけ収入があり、生活に余裕があるということです。ところが日本だと、最近はこういった高価格帯・高品質の商品を探すのがかなり大変です。それだけお金がない人が増えてしまったのです。

 実際、外資系のアパレルブランドは、若者層の消費の冷え込みから苦戦が続き、日本から撤退するところが相次いでいます。たとえば、2019年にはフォーエバー21とアメリカンイーグルの2社が日本から撤退しました(フォーエバー21は2023年、規模を大幅に縮小させて日本に再上陸)。その他のブランドも店舗の閉店などを余儀なくされています。

 海外旅行に出かけ、ブランド品を次々買いあさっていた日本人はもはや、一部の富裕層を除いて、海外に出かけるどころか、日本にある海外ブランドの店にすら行けなくなっているのです。

■iPhoneは世界37の国の中で最安

 2022年、アップルが最新型の「iPhone14」を発売しました。日本での販売価格は11万9800円と10万円を超えていたことから、SNS上では「そろそろ買い替えたいけど、パソコン並みに高くて買えない」「もはや高級品で自分みたいな貧乏人には手が出ない」といった声が出ていました。

 しかし、日本人には意外と知られていませんが、iPhone14の販売価格は世界の中で日本が最も安いのです。世界での販売価格をまとめたものが下の表です。

 これを見ると、日本以外の国々の平均は14万8182円と、日本より2万8000円以上も高くなっています。また、最高値のトルコ(23万8454円)はなんと日本の約2倍の価格になっています。

 12万円弱で「高すぎる」と言っていた人にとっては、トルコの販売価格は驚くべき数値でしょう。アップルなどの外資系企業はきちんと市場調査やマーケティングを行っていますから、そういった分析を踏まえたうえで、日本での販売価格を最も安く設定しているわけです。つまり、日本は「安くしないと売れない」とみなされているのです。

 しかし、日本人は世界最安値のiPhone14ですら手が出ません。安価なAndroidスマホに乗り換えるか、どうしてもiPhoneが欲しい人は型落ちのiPhone13や、廉価版のSEシリーズなどを買うようになっています。

 実際、市場調査会社BCNがまとめた大手家電量販店における実売データによると、iPhone14の販売台数はiPhone13より31%減、iPhone12より69%減となっています。世界最安値のiPhoneすら買えず、型落ちや廉価版しか買えない。それが今の日本のスタンダードになってきているのです。

■日本では激安品の宣伝ばかり

 海外と日本を往復していると気がつくのですが、日本では他の先進国で大量に流されているハイスペックなマンション・最新モデルの自動車などの宣伝がほとんどありません。

 たとえば欧州だと、雑誌やテレビ、ネット広告でサムスンやLGなど、韓国企業の高級家電の宣伝がどんどん流れます。そういう広告は以前は日本メーカーの製品だったのですが、今や韓国メーカーのものが中心です。日本ではそういった広告を目にすることがどんどん減ってきています。

 また、欧州では高級車メーカーの最新型モデルが発売されると、あらゆる媒体に一斉に宣伝が流されます。ところが日本のテレビや雑誌で見かけるのは、超激安のファミリー向き軽自動車やコンパクトカーばかりです。

 化粧品も日本ではプチプラコスメを取り上げています。これは、アメリカや欧州でいうと、1ドルショップや1ポンドショップなどを使う低所得者向けの商品ばかりを取り上げるようなものです。

 これは日本人の美意識や消費意識が変わったからということが理由でしょうか?  そうではないでしょう。

 セルフイメージに恐ろしく気を使う日本人は化粧室で他人に見られることもある化粧品はいいものを揃えたいはずです。プチプラや100円ショップの化粧品はどんな材料を使っているかわからないので、不安に思っている人もいるでしょう。

 それでも結局お金がないので、安いものを買わざる得ないということなのです。そしてメーカー側も日本では高額な商品が売れないので、宣伝すら流さないわけです。

 一方、イギリスの朝のワイドショーで取り上げる化粧品は、欧州の一流メーカーの高級品が中心です。他の欧州各国やアメリカでも、日本のバブルの頃と同じように、高級ブランドの化粧品の宣伝はどんどん流れています。つまりそれだけお金を払う消費者がいるということなのです。

東洋経済オンライン

  • この筆者は、10万のスマホをやすいと思ってる?って、言うか、タイトルと内容が合わないような・・・ -- 2600 2023-07-28 (金) 12:30:37

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