なぜ水素自動車はEVに負けてしまったか

惨敗のトヨタと日本政府。なぜ水素自動車はEVに負けてしまったか

国内2023.07.05 by 中島聡『週刊 Life is beautiful』

2050年までに実用化されている保証のない数多くの技術
水素の製造がグリーンでない点に関しては、さまざまな研究開発が行われており、太陽光の熱と水から水素を作る研究も行われており、将来はグリーン水素、もしくはグリーン・アンモニアが作れるようになる可能性があります。

水素からアンモニアを常温で安価に作る手法、アンモニアから水素を簡単に取り出す方法も研究開発されており、それら全てが解決すれば、再生可能エネルギーで作った水素(グリーン水素)をアンモニアの形で輸入し、そこから水素を取り出して燃料電池で発電するなどが可能になると考えられているのです。

ちなみに、5番目の資料に紹介されている「画期的なアンモニア合成法」は、大きなポテンシャルを持っているように思えます。

この記事によると、マメ科植物に共生する「根粒菌」という細菌がもつ「ニトロゲナーゼ」と呼ばれる酵素と同じく、モリブデンを含む触媒を用いて、常温・常圧で、ニトロゲナーゼに匹敵する速さで、人工的にアンモニアを合成することに成功したそうです。この技術が実用化できれば、大規模な設備が必要なハーバー・ボッシュ法と違って、太陽光パネルや風車に隣接した小規模な施設でアンモニアの生成、という活用方法が現実的になってきます。

ちなみに、記事には、水素まで触媒を使って水から作り出すと書いてありますが、水の分子から水素を取り出すにはエネルギーが必要であり、触媒を使っただけでは取り出すことは出来ません(エネルギーの保存則)。つまり、太陽光や風力で作った電気で水から水素を取り出し、その水素からアンモニアを生成することにより、水素を貯蔵・運搬しやすくする、という話です。

以上に書いた通り、現時点では数多くの技術が「開発中」であり、それらの技術が2050年までに実用化されている保証はないし、実際にコスト面で見合うものになるかどうかは不明です。既存の技術をデプロイするだけで、十分に実現可能な「再生可能エネルギーとEV」と比べると、かなり無理がある計画に私には思えます。

日本政府が考えている水素とアンモニアの関係を一つの図に表したものを、中小企業基盤整備機構の「エネルギーキャリアとは?」という記事に見つけたので、下に貼り付けておきます。

中小企業基盤整備機構の「エネルギーキャリアとは?」より
中小企業基盤整備機構の「エネルギーキャリアとは?」より

(『週刊 Life is beautiful』2023年7月4日号の一部抜粋

  • 惨敗のトヨタ・・・EVに負けてしまったか?とあるが、ほんと? -- 0706 2023-07-05 (水) 18:05:45
  • いつから水素自動車が負けたと勘違いしていた? -- 8374 2023-07-11 (火) 16:57:20

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