鉄道大国・日本の中小技術 南アで脚光

鉄道大国・日本の中小技術 南アで脚光 レール保存し安全運行

12/19(月) 13:30配信

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産経新聞
実証のため軌道に敷設された枕木に座屈防止板を設置する=9月、南アフリカ・ケープタウン(林総事提供)

〝鉄道大国ニッポン〟の安全運行を支える中小企業の技術がアフリカに根付こうとしている。鉄道の軌道のズレを防止する「座屈防止板」と呼ばれる製品の実証が南アフリカで行われており、その効果が認められつつある。南アは日本同様に総延長2万キロを超える鉄道網が敷かれているが、適切なメンテナンスが行われず、維持・管理策が急務。脱線などトラブル防止のため、日本の安全技術に対する期待が高まっている。

南アで実証を行っているのは、鉄道の保安装置などを手掛ける林総事(東京都大田区)だ。座屈防止板のほか、信号保安装置や軌道を分岐させる分岐器用部品などをJR東日本をはじめ国内の鉄道会社に納入している。

座屈防止板は、枕木の両端に取り付け、枕木の下に敷き詰められたバラスト(砂利、砕石)に打ち込むことで、軌道のズレを防止する。鉄道の高速化や地震対策、さらに温暖化によってレールがゆがむといった影響に対応するため、日本ではここ20年ほどで普及した技術という。林総事では海外にも納入実績があり、これまでに英国や香港、ベトナムに輸出した。

さらなる納入先として市場開拓を目指したのが南アだった。南アは左右のレール間隔を示す軌間が1065ミリと、日本でも広く普及している狭軌(1067ミリ)に近く、日本で使われている製品をそのまま持っていけるという利点があった。旅客、貨物合わせて2万キロを超える鉄道網も魅力で、「ポテンシャルが高い」(川名陽之介・海外業務本部長)と判断した。

このため、国際協力機構(JICA)の支援事業を活用して2016(平成28)年から調査を開始。17年には南ア旅客鉄道公社(PRASA)の軌道のうちヨハネスブルク、ダーバン、ケープタウンの3カ所にそれぞれ枕木10本分となる10セットの座屈防止板を設置、効果を検証した。

これによりPRASA側も効果を確認。新型コロナウイルス禍もあって時間はあいたものの、さらに大規模検証を行うことで合意した。ケープタウンなど3カ所に合計1000セット以上の座屈防止板を設置し、来年1年間をかけて改めて効果を検証することになっている。

実際に採用されるためには入札を経ることになるが、PRASAの担当者は「日本の技術、製品を考えたいと言ってくれている」(同)としており、手応えを感じている。今後、24年にかけて販売代理店や設置業者の選定のほか、一部部品の現地生産化など南アでビジネスを展開するための体制づくりを進めていく。

日本は、新幹線などの鉄道車両やシステムを海外に売り込むため、官民を挙げた「オールジャパン」体制で交通インフラ輸出に力を入れてきた。だが、アフリカでは近年、中国の支援による鉄道の開設が相次いでいる。こうした中で、林総事では南アで実績をつくれれば、モザンビークやナミビアなどの周辺国への波及効果が期待できるとみており、アフリカの鉄道の安全性向上に寄与したい考えだ。(高橋俊一)


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