IAEA、福島原発処理水の海洋放出計画にお墨付き

IAEA、福島原発処理水の海洋放出計画にお墨付き-安全と評価

小田翔子、Isabel Reynolds
2023年7月4日 17:58 JST 更新日時 2023年7月4日 20:00 JST
報告書を受けて日本は次の段階の決定が可能になる-グロッシ氏
日本の処理水放出計画を中国政府は厳しく批判
東京電力福島第一原子力発電所のタンクに保管されている大量の処理水を海洋に放出する計画について、国際原子力機関(IAEA)はグローバルな安全基準と合致していると評価した。

  同計画に関する2年間のレビューを終えたIAEAのグロッシ事務局長が4日、海洋放出プロセスの安全性に関する評価を盛り込んだ包括報告書を岸田文雄首相に手渡した。同局長はその序文で、太平洋への「処理水の制御された段階的な放出」による「人々や環境への放射性物質の影響は軽微」にとどまるとの見解を示した。

  IAEAの関係者が処理水放出のレビューを継続し、モニターを実施する。グロッシ氏は岸田首相と面会した際、レビュー終了で日本は「次の段階に進む」ための決定を下すことが可能になると語った。

Fukushima
処理水を保管するタンクPhotographer: PhilipFong/AFP/Getty Images
  放出時期の最終決定には日本の原子力規制委員会による評価も必要。放出される処理水は五輪の競泳用プールの約500杯分に相当する。放出の完了には数十年かかり、政府当局者は今年の夏頃に始める考えを示してきた。

  岸田首相は記者団に対し、「私は国際社会の責任あるリーダーとして日本や世界の人々の健康や環境に悪影響のある放出を認めることはないと申し上げてきた。引き続き科学的根拠に基づいて高い透明性をもって国内外に丁寧に説明してまいりたい」と語った。

  同計画については中国政府が厳しく批判。韓国では抗議デモが行われ、日本でも一部の住民や漁業関係者の反対に直面している。

  中国外務省は4日の声明で、日本政府に処理水放出計画を中止するようあらためて要求。計画を事実上承認したIAEAの報告書は遺憾だと表明した。

海洋放出は一般的
日本政府は原子力関連施設からのトリチウム排出が世界各国の原子力関連施設で広く行われていことを示すデータを開示

出典:環境省、経済産業省

  東京電力の計画では、原発事故で汚染された水からトリチウム(三重水素)以外の大半の放射性物質を除去してから海洋に放出する。

  処理水は現在、福島第一原発にある約1000基のタンクに保管されている。大量の海水で薄めた後、海底トンネルを通じて沖合に放出する。日本政府と東電は、2011年の東日本大震災と津波によって破壊された同原発の廃炉を進める上で、処理水の放出と貯蔵タンクの除去が必要だと主張している。

  IAEAは福島の現場にオフィスを開設する計画で、近隣諸国を安心させるために日本と協力していくと、グロッシ氏は述べた。

  グロッシ氏は7日には韓国を訪れ、朴振外相ら同国政府高官と会談する予定。


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