抗日軍事パレードを「平和の祭典」と強弁する中国に向けられた冷たい視線…

抗日軍事パレードを「平和の祭典」と強弁する中国に向けられた冷たい視線…

 中国政府が「抗日戦争勝利70年記念行事」のメーンに据えた北京での大規模軍事パレードは、国際社会の注目を集めた。中国メディアは「平和への総意を示した」などと自賛したが、これに同意する論調は西側メディアにはまず見当たらなかった。中国のイメージをめぐる自身の認識と周囲の認識の間には埋めがたいギャップがある。

「平和の祭典」?

 軍事パレードは9月3日、天安門前を東西に延びる大通りの長安街で行われた。中国人民解放軍の50部隊、1万2000人が参加。「空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイル東風21D型など、新型兵器が初公開された。

 中国の習近平国家主席(62)はパレードに先立つ演説で、「中国は永遠に覇を唱えず、拡張も行わない」と語り、解放軍の兵員を30万人削減すると宣言した。

 中国の官製メディアの報道に基づけば、この一大イベントは「平和の祭典」だったようだ。

 中国の英字紙チャイナ・デーリー(電子版)は4日付社説で、「侵略と拡張は、中国の文化的DNAには含まれない」とした上で、パレードについて「軍事力を示すためのものではない」と強調。そこに込められた真のメッセージは、「戦争の残忍さと犠牲者」や「中国の平和への関与と平和を維持する能力」を思い起こさせることだったと指摘した。

 北京紙新京報(電子版)は4日付の社説で兵員削減方針を礼賛。「この特殊な時期において、軍縮が示す平和への誠意と模範的行動は、特別な価値がある」とし、「平和発展の成果であり、世界の平和を守る信念と決心の結晶だ」と分析する。

「威圧することを意図」

 もっとも、こうした中国側の主張は、対外的にはまるで通用しない。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(アジア版)は3日付の社説で、「経済の低迷に伴って、中国の指導者らは、国威を強調し、従来以上に実際には存在しないささいなことで諸外国を非難するようになった。軍事パレードもそうしたやっかいな傾向の表れの一つだ」と論じた。

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は4日付の社説で、より端的に「実際のところ、このイベントは、米国や近隣諸国を威圧することを意図して、軍事力をひけらかしたものである」と批判した。

 実際、中国共産党機関紙、人民日報は今年1月、自社のサイトで、最新の軍事力を誇示して、「日本を震え上がらせ、世界に向けて戦後の世界秩序を守る断固たる決意を示す」のがパレードの目的だと説明していた。いくら習氏が演説で「『平和』に18回言及した」(新京報社説)ところで、白々しく響くゆえんだ。

 「周辺国は、習氏の平和的な語り口を懐疑的に受け止めるだろう」

 英紙フィナンシャル・タイムズ(アジア版)も4日付社説でこう論じ、兵員削減について「軍縮どころか、中国が必要としている先進兵器の増強に、より多額の軍事費をまわせるようになる」と分析した。

現実を直視せよ

 中国国内向けに、リーダーとしての習氏の権威付けが図られたとの見方もあった。

 英誌エコノミスト(9月5日号)の記事は、「軍事パレードの真の目的は、誰が最高権力者かを示すことだった」との見出しで、「党と軍の汚職摘発に取り組んで3年近くがたった今、国家主席として、権力を掌握した姿を見せつける機会だった。海外からの来賓は、端役に過ぎなかった」と指摘した。

 式典を通じ、中国は70年以上も前の「抗日」を強調したが、香港のジャーナリスト、フランク・チン氏は、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ(電子版、18日付)への寄稿などで、アジア・太平洋の国々の間で、日本の好感度が中国よりも高い事実を指摘。「諸外国は、何世代も前に何が起こったかではなく、今何をしているかで日本を、そして中国をジャッジしている。中国も同じようにすべきだ」と訴えた。

 パレードをどう意義付け、どうアピールするかは当事者の自由かもしれないが、何かにつけて日本に対して「歴史の直視」を求める中国には、海外から厳しい目が向けられている現実を直視してもらいたい。(国際アナリスト EX)