中国撤退

相次ぐ日本企業の中国事業の撤退・縮小 製造業は現地企業がライバルに 百貨店は消費低迷
2024/8/1 19:53
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黄金崎 元
経済
産業・ビジネス
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6月末で閉鎖された百貨店「上海梅龍鎮伊勢丹」=3月26日、中国・上海市(共同)
6月末で閉鎖された百貨店「上海梅龍鎮伊勢丹」=3月26日、中国・上海市(共同)

日本企業による中国事業の撤退や縮小が相次いでいる。日本の自動車や鉄鋼メーカーは従来、現地で合弁会社を作って協力関係を築いてきたが、中国企業が力をつけライバルに成長。戦略転換を迫られる形となっている。米中の対立激化も中国離れを後押ししているほか、消費低迷のあおりを受けて百貨店や外食なども事業継続に見切りを付けている。大手主導の動きが中小事業者の中国市場退出を促すとの見方も出ている。

日本製鉄の森高弘副会長は1日の令和6年4~6月期連結決算の会見で、中国鉄鋼大手の宝山鋼鉄との自動車用鋼板の合弁事業の解消について「大きな役割が終わったということで撤退を決めた」と述べた。

宝山との協力関係は半世紀に及んだが、取引先の日本の自動車メーカーが現地で苦戦。鋼材市況の低迷の原因となる中国景気の減速もあり、将来性が見込めないと判断した。森氏は会見で「確たる政策もなく(景気低迷が)長引くのではないか」との見方を示した。

一部の事業は中国に残すが、合弁解消で中国の鋼材生産能力を7割削減する。日鉄は米鉄鋼大手USスチールの買収を進めており、米国市場に成長の活路を見いだす方針だ。

中国の自動車市場では、政府の振興策を受け、電気自動車(EV)が台頭。現地のEVメーカーの供給過剰による値下げ競争が激化し、ガソリン車中心の日本勢の販売は低迷している。

トヨタ自動車が1日発表した6年4~6月期連結決算も中国の販売台数は前年同期比で18%減った。「非常に大変な状況で、販売費を使ってでも耐え忍ばないといけない時期」(山本正裕経理本部本部長)という。

ホンダも四輪車の年間生産能力を削減する方針を示しており、日産自動車も現地の一部工場を閉鎖した。三菱自動車は中国の車両生産から撤退した。

一方、流通業界では、三越伊勢丹ホールディングスが個人消費の低迷やネット通販の拡大などの影響もあり、6月末に上海市の百貨店「上海梅龍鎮伊勢丹」を閉店した。同店の運営会社の令和5年12月期の営業損益は赤字だった。今年4月には天津市の伊勢丹2店舗を閉店。中国では天津市の伊勢丹1店舗のみとなる。

ハンバーガー店「モスバーガー」を展開するモスフードサービスも6月下旬に中国の6店舗すべてを閉店した。台湾企業との合弁で展開していたが、個人消費の低迷や今後の投資効果が見込めないと判断した。

日本企業の中国離れについて、東京財団政策研究所の柯隆主席研究員は「内需低迷が一番の原因で、不動産不況からの回復が見込めず、今後も事業縮小の動きは続くのではないか」と指摘。「大手の戦略転換で、下請けも芋づる式で事業を縮小する可能性が高い」と分析する。(黄金崎元)


日本企業悩む中国撤退 技術流出・有事懸念、事業継続に壁
安全保障とeconomy

安全保障とeconomy
2025年3月17日 5:00 (2025年3月20日 19:16更新)

人民大会堂で行われた全人代の閉幕式(3月11日、北京)=目良友樹撮影
日本企業に「中国離れ」の兆しが出てきた。中国経済の停滞に、技術流出や安全保障上の懸念も重なり、事業戦略を再検討するケースが増えている。世界最大級の人口を持つ市場はなお魅力的でも、反スパイ法や過剰生産問題といった独特のリスクを無視できなくなっている。

2023年に広島で開いた主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、議長国だった日本中国との結びつきが依然強い欧州に配慮し、対中経済関係は「デカップリング(分離)」ではなく「デリスキング(リスク低減)」だと定義づけた。

日本自身も中国との経済関係は親密で、安保上の懸念があったとしても完全に分断できないという意思を米欧との関係でも示した。それから2年もたたないうちに、中国から撤退する動きが増えている。

日本貿易振興機構(ジェトロ)によると23年の日本から中国への直接投資実行額は前年比15.3%減の39億ドルだった。三菱自動車は23年に中国での生産と販売から撤退し、ホンダは24年に合弁会社の従業員を削減することを決めた。

モスバーガーを展開するモスフードサービスは24年6月に上海市や福建省などで展開していた6店全てを閉店し、中国本土の事業から撤退した。個人消費低迷で業績が悪化したためだ。

中国経済の減速で先行きが見通しづらくなったことに加えて経済安保上のリスクも要因だ。

中国は23年7月にスパイ行為の摘発対象を改正前の「国家機密」の提供から「国家の安全と利益に関わる文書、データ、資料、物品」の提供や買収に拡大して施行した。摘発対象が広がる一方で法の運用基準が見えにくく、進出企業は警戒を強めた。

太陽光パネルや電気自動車(EV)を中国政府が補助金を使って中国企業に過剰生産させる問題もある。日本総合研究所の三浦有史主席研究員は「止まらない値下げ競争に外資企業が巻き込まれている」と指摘する。

「最先端分野で優位に立つ多くの中国企業と連携することは、実利主義で見れば日本企業にとってなお有益だ」とも語る。

それでも中国台湾を武力統一する可能性が拭えないことは事業継続のハードルになる。三浦氏は「安保面にメリットを見いだすことは難しく、中国に進出する民間企業の置かれた環境は厳しい」と話す。

外務省によると23年の中国国内の企業拠点数は3万1060と世界で最も多かった。貿易の依存度は日本が対中で20%、中国は対日で5.4%と、それぞれ1位2位につける。経済に陰りがみえる中国にとっても日中の経済関係の改善は急務だ。

石破茂首相は就任後、李強(リー・チャン)首相や習近平(シー・ジンピン)国家主席と会談し、互いの利益を追求する「戦略的互恵関係」の推進を確かめてきた。企業間交流がしぼまないよう、ビジネス環境の改善を求めるアプローチが欠かせない。