「うつ病」の労災認定で「休業補償」は給与の8割支給 認定の条件

「うつ病」の労災認定で「休業補償」は給与の8割支給 認定の条件を解説
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by 小島 章彦

  2020年3月19日

  社会保障

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昨今、会社に勤めている人が長時間労働やパワハラやモラハラなどのストレスにより、うつ病になって休業をしなければならなくなるケースは少なくありません。

休みが長期間に及んで無給になった場合には、生活をしていくのが困難になってしまいます。

このような場合に、業務災害として労災保険の認定を受けることができるのでしょうか。

今回は、うつ病の労災認定について詳しく解説していきます。

目次

  労災の休業補償
  うつ病の労災認定
    条件1:労災の認定基準を満たした精神障害を発症している
    条件2:労災の認定基準を満たした精神障害を発症するおおよそ6か月の間に業務上による強い心理的な負荷が認められる
    条件3:強い心理的な負荷が業務外の要因によって認められたわけではない
  申請後、認定まで6か月以上かかる

労災の休業補償

うつ病のため労災の認定を受けた場合に支給されるのは「休業補償給付」です。

「休業補償給付」は、業務上の災害により休業せざるを得なくなった場合に4日目から支給されます。

支給額は、平均給与日額の60%です。

また、
平均給与日額の20%の「休業特別支給金」も支給されますので、あわせて平均給与日額の80%が支給される

のです。

「休業補償給付」の給付額は、健康保険の「傷病手当金」よりも高くなります。
うつ病の労災認定

うつ病の労災認定の条件

うつ病を発症した人が労災認定を受けるには、比較的大きな壁があります。
うつ病を発症して休業状態になった際に労働災害として認められるかは労働基準監督署の調査によって決まります。

労働基準監督署は、以下の条件を基準として「労災として認められるか否か」を判断し、条件をすべて満たせば労災が認められる可能性が高いと言えます。
条件1:労災の認定基準を満たした精神障害を発症している

精神障害であったとしても、あくまでも業務上の要因にて発症した障害でなければならず、認知症やアルコールなどによる精神障害は労災の対象外です。
条件2:労災の認定基準を満たした精神障害を発症するおおよそ6か月の間に業務上による強い心理的な負荷が認められる

発症前の6か月の間に仕事に要因があることにより、強い心理的な負荷が認められる出来事を示さなければなりません。

労災が認定されるには強い心理的負担でなければならず、中や小の心理的負担では認定されません。
条件3:強い心理的な負荷が業務外の要因によって認められたわけではない

業務外に心理的負担がかかるようなことがないことを証明する必要もあります。

例えば、身近な人を亡くしたり、離婚したりという要因がある人は、業務外での心理的負担と捉えられてしまうかもしれません。

うつ病で労災認定を受けるには、上記の条件をすべて満たしている必要があります。

労災が認定されるために大事なことは、
「あくまでも業務上の要因である」ということを証明する

ことなのです。

精神障害は比較的いろいろな要因が重なって起こるものであるため、業務だけの要因であることの証明はなかなか困難なことでもあります。

労災認定を受けるためには、業務上の要因であることを客観的に証明する必要があるのです。

医師による「診断書」などで業務上の精神障害であることを客観的に証明できるとよいでしょう。
申請後、認定まで6か月以上かかる

労災認定を申請した場合には、認定されるまでに一般的に6か月以上かかります。

時間もかかりますので、その間の生活資金の確保も難しい問題です。(執筆者:社会保険労務士、行政書士 小島 章彦)

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    うつ病 休業特別支給金 休業補償 休業補償給付 傷病手当金 労働基準監督署 労災 診断書

この記事を書いている人
小島 章彦
小島 章彦(こじまあきひろ)
大学を卒業後、信用金庫に8年、システム開発の会社に約20年勤務しています。また、その傍らライターの仕事も約2年行っています。社会保険労務士、行政書士、日商簿記3級の資格を所有していて、資格を生かした年金、労働、社会保険や、今まで携わってきた金融関係の記事を主にライティングしてきました。読者の方に分かりやすく理解していただくをモットーに記事を書いていきます。宜しくお願い致します。 【寄稿者にメッセージを送る】

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