口約束の効力の法的根拠について

口約束の効力の法的根拠について

中小企業勤めの35歳会社員です。会社から「5年後には課長にする」と言われていますが、信じていいのでしょうか?
6/3(月) 13:50配信

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ファイナンシャルフィールド
中小企業勤めの35歳会社員です。会社から「5年後には課長にする」と言われていますが、信じていいのでしょうか?

会社の上司から数年後の昇進を言い渡された場合、口約束だけでは信用していいのか分からなくなる方も多いでしょう。

例えば、中小企業に勤めている35歳の会社員が「5年後に課長にしてあげる」と会社から言われた場合、40歳で課長に昇進することが一般的なのか、課長に昇進した場合に給料はどのくらい上がるのかなど、気になることもたくさんあるはずです。

本記事では、口約束の効力の法的根拠についても含めて、詳しくご紹介します。

課長クラスの平均年齢は何歳?
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によると、課長クラスの方の平均年齢は男女計で49.2歳、男性が49.2歳、女性が49.4歳となっています。

今回の事例では、35歳の会社員が5年後の課長昇進を口約束で言い渡されたということなので、実現すれば40歳での課長昇進となります。

平均に比べると年齢が10歳近く若いことになるため、昇進は早い方といえるでしょう。

課長クラスの賃金の平均は?
同調査によると、課長クラスと非役職者の平均賃金には、以下のような違いがあることが分かっています。

勤続年数も含めて表1にまとめました。

表1

表1

※厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概要」を基に筆者作成

男女計の賃金を賞与(ボーナス)を含めずに年収に換算すると、課長クラスが588万9600円、非役職者が349万3200円になり、課長クラスへの昇進で年収230万円以上のアップが見込める可能性があります。

口約束の効力には法的根拠があるのか?
今回の事例のように、会社から「5年後には課長にしてあげる」と言われた場合、単なる口約束なので信用していいのか分からないという方も多いでしょう。

しかし、民法第五百二十二条には「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。」と記載されています。

つまり、契約の内容に対して相手が承諾すれば、口約束であっても成立するということです。

さらに、第二項では「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。」とされており、書面を作成しなくても契約が成立すると考えられます。

ただし、民法第百六十六条に「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。」とあるように、口約束の効力は5年で時効をむかえることがあるので注意が必要です。

口約束でも効力はあるが無効になる可能性も
課長クラスの平均年齢は49.2歳なので、35歳で「5年後に課長にしてあげる」と会社に言われたことが実現すれば、平均より早い昇進になるでしょう。

たとえ口約束であっても、民法上は効力があると考えられます。

しかし、約束をしてから5年たつと時効をむかえるため、実際にはどうなるか分からない部分もあると考えておくことをおすすめします。

出典
厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査の概況(14ページ)
デジタル庁 e-GOV法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百二十二条、第百六十六条

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部


https://news.yahoo.co.jp/articles/ab766de8c2686dd365aa62b7feb79f9f960bb792