決算業務の概要


 会社は株主などの出資者から資金を提供してもらい、それを使って経営を行っている。この資金をどう使ってどのように経営を行ったかを、定期的に所定のフォームで報告するのが決算である。
 この所定のフォームは決算書と呼ばれ、具体的には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書などがある。各フォームには表1の役割がある。
■表1 各決算書のフォーム
貸借対照表(B/S) 決算日における会社の財産の状況
損益計算書(P/L) 今期の財産運用の成果(利益)の状況
株主資本等変動計算書(S/E) 貸借対照表の純資産の変動状況
キャッシュ・フロー計算書(C/F) 今期の収入と支出の状況
 貸借対照表は決算日時点でのストック、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書は今期のフローを表す(図)。
■図 各決算書の関係

 特に売掛金・未収入金などの債権や買掛金・未払金などの債務について前月の残高が正しい金額になっているかを確認する。売掛金・未収入金については請求書の控えなどで金額を確かめ、入金遅れがないかを確認する。そして、状況により請求書の再発行などを行う。買掛金・未払金は翌月以降に支払う予定の金額が残高になっていることを支払予定などから確かめる。
 また、仮払金・仮受金などの勘定については、精算遅れがないかを確認し、早めに精算を行う。預り金については、社会保険料、源泉税、住民税などの項目別に、残高を確認する。

 次に、決算でどの位の利益が出るのかを予想する。決算予想は、以下のプロセスで行う。
① 前月までの月次決算を確定させる。
② 当月から期末月までの損益見込みを作成する。この金額は、予算が用いられることが多いが、科目によっては、前月までの平均値等を使う場合もある。
③ 月次決算で行わない決算整理事項を入れる。
④ 上記により算出した税引前利益に税務上の加減算項目を考慮して法人税、住民税、事業税の概算額を計算する。消費税は、前月までの仮払消費税、仮受消費税に期末月までの見込入力に係わる消費税を加味して算出する。

 月次決算を精緻に行っていれば、年次決算では、各勘定の残高を確認する作業、未払税金の計算、集計・組替作業位である。
 主な決算整理作業は表2の通りである。
■表2 主な決算整理事項
経費の確認、前払費用・未払費用の計上 総勘定元帳で経費の年間の取引を再確認し、説明のつかない異常な金額がないか確かめる。交際費は、会議費等との区分を確かめる。地代家賃やリース料など毎月定額のものは、12カ月分が記帳されているか確かめる。

	支出した費用のうち、翌期以降の収益に対応する分を前払費用として、当期の収益に貢献しているのに支払が済んでいないものを未払費用として計上する。

売上計上、売掛金、貸倒の確認 売上の計上は、業種や会社によって異なる。特に期末付近の売上の計上が会社の採用している計上基準と合っているか確認する。

	中小企業などで期中は現金主義で売上を計上している場合は、期末の売掛金が漏れなく計上されているか確認する。
	債権の回収状況について確認し、貸倒処理を行うかどうか検討する。

実地棚卸、仕入計上、買掛金の確認 仕入の計上漏れがないかどうか確認する。

	実地棚卸を行う。預かり在庫や預け在庫に注意する。期末の返品計上の漏れがないか確認する。
	棚卸減耗を計上する。

有価証券等の評価替え 子会社株式、関連会社株式、満期保有目的の債券以外は、時価に評価替えを行う。
固定資産の確認、減価償却 建設仮勘定の残高を検討し、固定資産の計上漏れがないか、修繕費として計上すべきものがないかを確認する。同様に、修繕費などの中に資本的支出(固定資産の価値を高めるもの)として固定資産に計上すべきものがないか確認する。

	固定資産に計上したものは、見積書などにより、勘定科目、耐用年数が適切か確認する。
	消耗品費の内容を検討し、20万円以上のもので固定資産になるものがないか、10万円以上のもので一括償却資産になるものがないかを確認する。
	中小企業の場合、30万円未満の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合、その年に一度に損金算入できる制度(平成18年1月1日からは合計300万円まで)があり、その適用を検討する。

消費税の課税区分の確認 消費税の税区分に誤りがないか再確認する。特に下記の項目が課税取引に含まれていないか注意する。
交際費-香典、祝い金など
● 通信費-海外との電話代
● 旅費交通費-海外渡航費

 決算業務では、総勘定元帳から試算表を作成し、決算整理事項を行って、決算書を作成する。特に決算整理業務では、仕入や未払費用の計上など一度締めた後に追加計上が必要となるケースも多い。
 このような場合に、会計ソフトを利用すると、仕訳を入力すれば、転記、集計作業が自動的に行われるので、時間の限られた決算業務に非常に有効である。また、一度設定を正確に行えば、転記・集計作業にミスがなく、検証作業も少なくて済む。
 入力についても効率的に行えるよう工夫されている。勘定科目コードは検索機能で検索できるし、よく使われる勘定科目などはあらかじめ候補として表示されるソフトもある。
 また、ヘルプ機能やわかりやすいマニュアルが用意されており、調べるのも容易である。ネットワーク対応版を利用すれば、複数の担当者による並行作業も可能となる。

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