太陽光発電で失われた土地の1位は「里山」、国立環境研究所が全国調査 太陽光 国立環境研究所は2021年3月29日、太陽光発電による土地改変の実態を明らかとするために、出力0.5MW(500kW)以上の発電容量を持つ国内の太陽光発電所を地図化し、規模や分布の特徴をまとめた調査結果を公表した。国内の0.5MW以上の太陽光発電所は8725カ所で、いわゆる里山と定義される環境に建設されているケースが多いことが分かった。 2012年にスタートした「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」以降、国内で急速に広まった太陽光発電。低炭素電源として期待される一方、設置方法によってはその場所の生物・生態系・水環境など、周辺自然環境への悪影響も懸念されている。しかし、これまで太陽光発電と自然環境との関係について、広域的な解析は行われていなかった。 そこで国立環境研究所の研究チームは出力0.5MW以上のすべての太陽光発電所を対象に、衛星画像や航空写真を活用し、太陽光パネルおよび付随施設の範囲をデジタルデータ化。また、太陽光発電設置前の自然生態系を把握するため、国土全体を「都市」「水田」「畑地」「自然林」「二次林・人工林」「自然・半自然草地」「人工草地」「自然裸地」「人工裸地」「水面」の土地被覆タイプに分類した。 こうしたモデル化による調査の結果、日本全体で0.5MW以上の太陽光発電施設が占める面積は合計229.211km2(日本の国土の0.079%)で、その66.36%を0.5~10MWの中規模施設が占めていた。これは比較的小型の規模の施設が、累積的に自然環境を損なっていることを意味する。失われた生態系の面積としては、二次林・人工林、人工草原、畑、水田が多い傾向がみられた。 自然保護区に該当する場所でも、合計1027施設、約35km2の太陽光発電施設が確認された。さらに鳥獣保護区内では605施設、合計約20km2、都道府県立自然公園内では245施設、合計約8km2、国立公園内では101施設、合計約5km2が確認された。これらのうち68.4%は0.5~10MWの中規模施設だった。 また、日本において大規模発電施設が建設されやすい場所に影響する要因としては、土地被覆だけでなく、地形の傾斜、地形的な日当たりの良さ、標高が低いこと、人口密度が高いことなどの影響が強く認められた。 なお、今回の調査結果を踏まえ、これまでと同様の立地条件で太陽光発電施設の設置場所が選択された場合、樹林や農地がさらに失われると予測。さらに、全体の施設面積が2倍になった場合、自然保護区内での建設は2.66倍に増加する可能性があると予測している。一方、設置面積を2倍にしても自然保護区での設置を制限し、都市での建設に誘導することができれば、樹林や農地の生態系の損失を1.3~3.5%程度抑制できるとしている。 &deco(gray,12){a:413 t:1 y:2}; |