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薬子の変
くすこのへん
平安初期の政治的事変。809年(大同4)4月，病気のために皇位を同母弟神野親王(嵯峨天皇)に譲った平城上皇(平城天皇)は，〈病を数処に避けて五遷〉し，この年12月に平城宮に居することとなった。一方この前後から嵯峨天皇も健康がすぐれず，翌810年(弘仁1)の朝賀は廃止され，7月には川原寺，長岡寺での誦経や伊勢大神宮への奉幣も行われた。このような事情のなかで，平城宮で健康を回復した上皇は，東宮時代にその後宮に入り寵愛していた藤原薬子(藤原種継の娘)とその兄藤原仲成らとともに重祚(ちようそ)(退位した天皇が再び即位すること)を企てた。同年9月に，薬子らは上皇の命により平城京への還都を断行し，諸司が二分し人心騒動するという決定的な対立となった。これに対応して嵯峨天皇は薬子の官位(尚侍，従三位)を影奪したが，上皇は徹底抗戦の挙に出て，畿内･紀伊の兵の徴発を単独で断行しようとした。しかし士卒の多くが逃亡し，みずからも川口道から東国に入ろうとして失敗して落髪出家し，仲成は射殺され，薬子は毒を飲んで自殺した。
従来この上皇重祚計画は藤原式家の勢力回復をはかろうとした仲成･薬子の策略によるものとして〈薬子の変〉と称されてきた。しかし，上の事情からも明らかなように，おそらく重祚計画の中心人物は上皇自身である可能性が強い。この事件が進展していた3月10日に，律令制の重要機能を非常時には天皇が掌握できるように蔵人所が設けられ，上皇に対する天皇権力が確立した。それとともに藤原式家の没落も決定づけた。
藤原薬子の変とは何か？
平城天皇は桓武天皇の次に登場しました。役所の統廃合など、幾つかの行政改革を実行した平城天皇でしたが、病気を理由に3年という短い期間で退位し、809年に弟の嵯峨天皇に位を譲りました。平城天皇は皇太子の時代から、長岡京遷都を指揮した藤原種継の娘、薬子をとても愛していましたが、この女性にはスキャンダルがつきもので、それが理由となって桓武天皇によって宮廷から追放されていました。
藤原薬子の変とは何か？
しかし、桓武天皇が死亡し、平城天皇に代がかわると、自分をかわいがってくれる天皇のもとで出世したいと考えていたのか、また宮廷に入り込んできます。けれど、たったの3年で平城天皇が辞めてしまい、これは薬子にしてみれば、とうてい納得できないものでした。そこで、どうにかして平城天皇を再び天皇にしたいと考えました。そのためには、まわりの協力を得ることが必要不可欠です。
ただ、「上皇をもう一度天皇にしましょう」と言ったところで、「なぜ？」と聞かれた時に、「だって、私、もっと出世したいんだもの」では、誰も賛同してくれません。そこで、「もう一度、都を平城京に戻すために、上皇を天皇に立ましょう」と理由をつけることにしました。そうすることによって、都を平城京に戻したいと思ってる人たちが自分に賛同してくれるだろうと画策したわけです。
ただ、考えてみてください。平城京から長岡京に都を移したのが784年です、810年ということは既に26年もたっています。「どうして今更平城京に都を戻すなんて面倒なことをするの？」ということで、まるで賛同を得ることが出来ません。
それでも聞く耳をもたず、宮殿などを奈良に建て始めたため、反逆と認定されてしまい、そのバックにいた兄の藤原仲成は殺され、薬子も自害をするしかなくなりました。これが薬子の変です。
平城上皇は剃髪して出家し、奈良に住み続けたことから、のちに平城天皇と称されました。ちなみに、天武や聖武などの天皇の漢字の部分の名称は、その人がこの世を去った後に贈られたもので、諡号といいます。とにかく、この変の結果、藤原四家の一つであった藤原式家が没落し、かわりに北家が勢力を増してくることになります。
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<meta name="Keywords" content="平城太上天皇,嵯峨天皇,薬子,安殿親王,桓武天皇,藤原仲成,観察使廃止,蔵人所,平城太上天皇の変,薬子の変,藤原四家,藤原四家の武家の没落,藤原四家の北家の台頭,藤原北家,藤原武家,冬嗣">
<meta name="Description" content="平城太上天皇の変（薬子の変） は、桓武天皇の死後の平安時代初期に起こった平城上皇と嵯峨天皇の抗争事件です。平城上皇と嵯峨天皇の関係は、桓武天皇の皇子であり、兄・平城は上皇、弟・嵯峨は天皇でありました。">
<title>平城太上天皇の変（薬子の変）</title>
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<div align="center">
<table width="900">
<tbody>
<tr>
<td valign="top" align="center" bgcolor="#f5f5f5"><a name="top"></a><br>
<font SIZE="5" FACE="ＭＳ 明朝"><b>平城太上天皇の変<br>
</b>（薬子の変）</font><br>
<br>
<div align="center">
<table width="90%" style='font-size : 11pt;font-family : "ＭＳ Pゴシック";line-height :1.5;'>
<tbody>
<tr>
<td valign="top" align="left">
<hr width="99%">
<dl>
<dt>平城太上天皇の変（薬子の変）
<dd><img src="kanmukeizu.gif" width="320" height="532" border="1" alt="桓武天皇系図" align="right" hspace="11"> 平城太上天皇の変（薬子の変） は、桓武天皇の死後の平安時代初期に起こった平城上皇と嵯峨天皇の抗争事件です。</dd>
<dd> </dd>
<dd> 平城上皇と嵯峨天皇の関係は、桓武天皇の皇子であり、兄・平城は上皇、弟・嵯峨は天皇でありました。<br>
抗争の原因は、いったんは弟・嵯峨天皇へ譲位した平城上皇が復権を画策したことにありました。そして、その抗争の具体的な経緯を分かり易くするため時系列の表にすると次の通りです。</dd>
</dl>
<dl>
<dd> 抗争の結果は、嵯峨天皇側の勝利に終わり、平城上皇は剃髪して出家し、薬子は、服毒自害します。一方、皇太子であった平城上皇の皇子・高岳親王は廃太子され、代わって大伴親王が立太子します。</dd>
<dt>
<dd> しかしこの抗争は、その後の朝廷における勢力地図を大きく変化させるものとなります。<br>
藤原四家の内、それまで勢力を維持してきた武家は、薬子と仲成の死により没落し、唯一、冬嗣が率いる北家のみとなったのです。そしてこの抗争の副産物ともいえる蔵人所と巧みな外戚の地位確保によって、北家は朝廷における絶大な権力をその後着々と掌握してゆくこととなるのです。</dd>
<dd><br>
なお、髙岳親王はその後数奇な人生を歩まれます。</dd>
<dd> 廃太子された後、空海から真言密教を学び、平城京に不退寺を建立するなど、高僧として名を馳せます。しかし、861年密教の奥義を求めて唐に渡り、さらに865年にはインドへ求法の旅に出立されましたが、インドには到達できず、マレーで客死されました。</dd>
</dl>
<dl>
<dd>
<table style="font-size : 11pt;line-height : 1.5;border-collapse : collapse;" border="1" width="750">
<tbody>
<tr>
<td align="center" width="35">西暦</td>
<td align="center" width="114">和暦</td>
<td align="center" width="575">出来事</td>
</tr>
<tr>
<td align="center">806</td>
<td valign="top" width="114">延暦25年 </td>
<td width="575">桓武天皇が崩御して皇太子・安殿親王（平城天皇）が即位</td>
</tr>
<tr>
<td align="center">809</td>
<td valign="top" width="114">大同4年4月</td>
<td width="575">平城天皇、発病。その病を「早良親王や伊予親王の祟り」と恐れ、その禍を避けるために譲位</td>
</tr>
<tr>
<td rowspan="9" align="center">810 </td>
<td valign="top" width="114">大同4年12月</td>
<td width="575">平城上皇、旧都・平城京へ移る（平城京北東の地に萱葺きの御所（萱の御所）を造営する）<br>
嵯峨天皇の観察使廃止案等によって、二所朝廷といわれる対立が起こる</td>
</tr>
<tr>
<td valign="top" width="114">大同5年3月</td>
<td width="575">嵯峨天皇,,、蔵人所を新たに設置</td>
</tr>
<tr>
<td valign="top">大同5年6月</td>
<td width="575">嵯峨天皇,,、観察使を廃止し参議を復活<font size="-1">（これにより平城上皇との関係悪化決定的となる）</font></td>
</tr>
<tr>
<td valign="top" width="114">大同5年9月6日 </td>
<td width="575">平城上皇、平城京遷都の詔勅を出す<br>
嵯峨天皇、この詔に従い坂上田村麻呂・藤原冬嗣・紀田上らを造宮使に任命し、平城京へ派遣する（実際は上皇側牽制が目的）</td>
</tr>
<tr>
<td valign="top" width="114">大同5年9月10日</td>
<td width="575">嵯峨天皇、藤原仲成を捕らえて右兵衛府に監禁、詔によって薬子の官位を剥奪</td>
</tr>
<tr>
<td valign="top" width="114">大同5年9月11日</td>
<td width="575">平城上皇、自ら薬子とともに輿にのって挙兵を目的に東国に向かう。<br>
しかし、大和国添上郡田村まで達したとき嵯峨天皇側兵士に阻まれて断念</td>
</tr>
<tr>
<td valign="top" width="114">大同5年9月12日</td>
<td width="575">平城上皇、平城京に戻り剃髮して出家。薬子は服毒自害。</td>
</tr>
<tr>
<td valign="top" width="114">大同5年9月13日</td>
<td width="575">嵯峨天皇、高岳親王（平城上皇第三皇子）を廃太子し、大伴親王を立太子させる</td>
</tr>
<tr>
<td valign="top" width="114">大同5年9月19日</td>
<td width="575">阿保親王（平城上皇第一皇子）、太宰府へ太宰権帥として左遷される</td>
</tr>
<tr>
<td align="center">823</td>
<td valign="top">弘仁14年4月</td>
<td>嵯峨天皇、大伴皇太子（淳和天皇）へ譲位する</td>
</tr>
<tr>
<td align="center">824</td>
<td valign="top">天長元年7月</td>
<td>平城上皇没（51才）、阿保親王、許され平安京へ還る</td>
</tr>
<tr>
<td align="center">826</td>
<td valign="top">天長3年</td>
<td>阿保親王、子息の行平・業平の両名の臣籍降下を願い出て許され在原朝臣姓を賜与される</td>
</tr>
<tr>
<td align="center">847</td>
<td valign="top">承和14年</td>
<td>「仁明天皇の勅により御殿を寺とする」（不退寺寺伝）</td>
</tr>
</tbody>
</table>
</dd>
</dl>
<p align="right"><a href="../6memo.htm"><img src="../1top/bo-mokuji.gif" width="40" height="20" border="0"></a>に戻る</p>
<hr width="99%">
</td>
</tr>
<tr>
<td valign="top" align="left"><font SIZE="-1">＜更新履歴＞</font>2015/2作成 2018/2補記改訂</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<br>
</div>
</td>
</tr>
<tr>
<td valign="top" align="right" bgcolor="#003466" height="15"><font COLOR="#f5f5f5" SIZE="-1" STYLE="font-size : 83%;"> </font><font color="#f5f5f5" size="-2" style="font-size : 67%;">平城太上天皇の変（薬子の変）</font></td>
</tr>
<tr>
<td valign="top" align="center" bgcolor="#666666"><a href="../index.html"><img src="../1top/bo-home.gif" width="90" height="20" border="0"></a><a href="../2koji.htm"><img src="../1top/bo-koji.gif" width="90" height="20" border="0"></a><img src="../1top/bo-top.gif" width="90" height="20" border="0"></td>
</tr>
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</div>
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