法人は「年800万円まで」、個人事業主は「無制限」だが…

<接待交際費の経費算入>法人は「年800万円まで」、個人事業主は「無制限」だが…税務調査」で待ち受ける「思わぬ落とし穴」【税理士が解説】

12/4(月) 7:46配信
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン)

(※写真はイメージです/PIXTA)

事業を行う場合、「経費」の処理方法は「会社」か「個人事業主」かで異なります。本記事では、「プライベートな支出」と「接待交際費」に注目し、「会社」と「個人事業主」のそれぞれについて、税理士の関根俊輔氏の著書『改訂6版 個人事業と株式会社のメリット・デメリットがぜんぶわかる本』(新星出版社)から一部抜粋して紹介します。

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プライベートな支出の処理は「個人事業主」のほうがラク

事業を行う場合、事業の資金とプライベートの資金をどのように区別するかという問題があります。

この点について、会社の場合、会社の通帳からお金を引き出して、社長がプライベートな買い物に使うのはルール違反です。一方、個人事業は厳密に分けて処理する必要はなく、融通が利きます。以下、解説します。

◆会社は「公私の線引き」が厳しい

会社の場合、個人が出資した資本金は「会社の財産」となります。いったん会社に入ったお金は、たとえ社長であろうと勝手に使うことはできません。事業に必要なお金と、社長がプライベートで使うお金とは、厳密に分ける必要があります。

たとえば、事業には関係なく、社長がプライベートでダイヤの指輪を購入したとします。個人事業の帳簿であれば、この支出はプライベートな支出であると意思表示さえすれば、経費としては認められないものの、銀行などの口座から自由にお金を引き出せます。

ところが、会社の場合はそうはいきません。社長のプライベートな支出はあくまでも「会社からもらう『役員報酬』(給料)の中から支払う」のがルールだからです。

もしも勝手に会社のお金を使って支払ったら、それは経費として認められないどころか、社長に対する「貸付金」と認定されてしまいます。そして、その貸付金は、いずれ利息分もあわせて会社に返済しなくてはなりません。それが法人税法で定められたルールです。

「自分の会社なのだから、自分が使ったお金は会社に戻さなくてもいいだろう」と思ったら、アウトです。経費と認められない社長のプライベートな支出を会社のお金を使って行った場合は、すべて「役員賞与」という社長へのボーナスと認定され、所得税や住民税が課税されます。

さらに、金融機関から借入がある場合、社長への「貸付金」は悪い印象を与えてしまいます。なぜなら「信用して資金繰りのために貸したお金が、社長のプライベートに使われている」と思われるからです。こうなっては、次回の借入ができなくなることもあります。

◆個人事業は「自己否認」が認められる

一方、個人事業での場合、事業用のお金とプライベートのお金を厳密に分けて管理する必要はありません。なぜなら、「自己否認」という会計上の処理の仕方があるからです。

たとえば、携帯電話をプライベートでも仕事でも使っている場合、とりあえず帳簿には支払った使用料を全額載せておきます。そして、決算のときにこのうち半分はプライベートで使ったものとして、半額だけ経費に計上するということができます。これを「自己否認」といいます。

会社だと、こうした処理はできません。プライベートで使ったお金はあらかじめ経費扱いせず、つねに健全な会計処理を行うことが求められます。プライベートと仕事の線引きが苦手な人ほど、会社を設立したあとで帳簿の中身がぐちゃぐちゃになりがちです。個人事業ではなく会社を設立することを選ぶならば、公私の区別をきちんとつけることを心がける必要があります。
「接待交際費」は会社のほうがトク

会社が経費にできる接待交際費の上限は年間800万円までです。これに対し、個人事業主は原則として無制限ですが、思わぬ落とし穴もあります。

◆接待交際費を経費にできる金額

事業を始めると、取引先や関係者、あるいは同業者の方などと、いっしょに飲食をする機会や、事業を円滑に進める目的で、中元、歳暮などの贈答品を渡す機会も増えてきます。

こうした仕事の関係者を接待する目的の飲食代や、金品の贈り物代を、「接待交際費法人税法上の「交際費等」)」といいます。

接待交際費は、原則として、損金(法人税を計算する基準となる費用、損失)にはなりません。つまり、経費とは認められないことになっています。

ただし、これには例外があります。会社と個人事業主で異なります。

まず、資本金1億円以下の「会社」については、その支出が必要経費と認められれば、年間800万円まで(または接待飲食費の50%まで)を損金算入できます。

また「個人事業主」は、必要経費と認められれば、全額を損金算入できることになっています。

◆個人事業主の接待交際費は、経費にできない「家事費」との線引きが困難

では、接待交際費は、必要経費に算入できる上限額のない(使える経費の額に制限のない)個人事業主のほうが有利かというと、まったくそうではありません。

人事業主に多く見られる経費の1つに、「家事費」というのがあります。これは、自分や家族の生活費や個人的な支出のことで、所得税法上、これを必要経費とすることはできません。

ところが、いざ事業を進めると、家事費なのか、それとも必要経費なのか、迷ってしまう支出が発生します。これを「家事関連費」というのですが、個人事業主の場合、接待、交際の場面であっても、これを経費にするのは、実は至難のワザなのです。

たとえば関係者との飲食では、当然、個人事業主も食事をします。税務調査では、「それって飲食する必要はありましたか」とか「接待といいながら、ただ晩御飯を食べているだけですよね。それは家事費じゃないですか」などと、積極的に指摘されることになります。したがって、接待交際費として認めてもらいにくいといえます。

これに対し、会社は、会社の指揮命令に従い、接待を供用するという建前があります。そのため、金額的には制限されますが、その範囲内であれば接待交際費として認められるケースが多いのです。たとえば「スナック」や「キャバクラ」での接待でも、常識的な範囲内であれば、接待交際費として認められます。

日頃からランチミーティングや夜の会食、接待が多い方は、迷わず会社をつくることを検討すべきでしょう。

2023-12-04 (月) 11:03:22
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