1.2.2.何が変わらなかったのか
1.2.2.何が変わらなかったのか
「会社法制の現代化に関する要綱」に盛り込まれながら、国会審議で修正された項目が3つあります。
いずれも経団連など経済界からの強い要望で盛り込まれたと思われる項目ですが、規制緩和の行き過ぎになると判断され修正されました。
(1) 自己株式の市場売却
買取請求権に応じて取得した自己株式及び合併、分割及び営業全部の譲受けにより相手方の有する自己の株式を取得した場合の自己株式を新株発行類似の手続を経ずに市場取引により売却することができる旨の定款の定めがあるときは、市場取引により自己株式を売却することができると規定した会社法179条は削除された。
新株発行類似の手続をして売却することは費用倒れになるとの指摘から、このような規定をしたが、インサイダー取引や株価操作の危険があることから削除された。
(2)株主の権利行使に関する利益供与に係る供与行為者の責任
株主の権利行使に関する利益供与に係る取締役の責任については、無過失責任から過失責任へ責任が軽減され、利益供与を実際にした行為者の責任についても、過失責任とされたが、利益供与のような反社会的な行為を実際にした取締役の責任を軽減することは好ましくないとの判断から供与行為者に限って無過失責任が維持された。(会社法120条4項)
(3)株主代表訴訟を提起することができない場合
株主代表訴訟に係る訴えを提起することができない場合として盛り込まれた、「当該訴訟の追行により、会社の正当な利益が著しく害されること、会社に過大な費用の負担が生ずることその他これに準ずる事情が生ずることが、相当の確実さをもって予測される場合」という規定が、内容が不明確で、株主代表訴訟の提起を不当に制限しているとの懸念から削除された。(会社法847条・602条)
▲ 新会社法の改正ポイント
▲ 第1章 会社法改正の基本方針
▲ 1.2 実際、どうなったの?
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