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ha 新会社法

第1章 会社法改正の基本方針  …………………………………………………… 1
  1.1 はじめに ……………………………………………………………………… 1
    1.大改正にビックリ ……………………………………………………………… 1
    2.参考文献 …………………………………………………………………… 4
  1.2 実際、どうなったの?  ………………………………………………………… 4
    1.何が変わったのか  …………………………………………………………… 4
    2.何が変わらなかったのか  …………………………………………………… 4

第2章 株式会社関係 ……………………………………………………………… 6
  2.1 有限会社について …………………………………………………………… 6
    1.有限会社がなくなる ………………………………………………………… 6
    2.今までの有限会社について  ………………………………………………… 8
  2.2 最低資本金制度について …………………………………………………… 10
    1.最低資本金制度の廃止 …………………………………………………… 10
  2.3 設立手続について …………………………………………………………… 12
    1.類似商号規制の廃止 ……………………………………………………… 12
    2.払込金保管証明書の廃止 ………………………………………………… 14
    3.現物出資等の検査役調査不要範囲 ……………………………………… 15
    4.事後設立 …………………………………………………………………… 17
    5.定款の絶対的記載事項 …………………………………………………… 18
    6.発起設立と募集設立について ……………………………………………… 21
    7.設立無効の訴えについての変更点 ………………………………………… 23
  2.4 株式会社の機関設計 ……………………………………………………… 24
    1.株式会社の4つのタイプ ……………………………………………………… 24
    2.機関設計をするための基本規定 …………………………………………… 25
    3.大会社でない譲渡制限会社の機関設計 …………………………………… 28
    4.大会社でない公開会社の機関設計 ………………………………………… 31
    5.大会社である譲渡制限会社の機関設計 …………………………………… 33
    6.大会社である公開会社の機関設計 ………………………………………… 35
  2.5 株主・株主総会 ……………………………………………………………… 36
    1.取締役会を設置しない会社の株主総会 …………………………………… 36
    2.株主提案権と総会招集について …………………………………………… 39
    3.書面投票・電子投票について ……………………………………………… 41
  2.6 取締役・取締役会 …………………………………………………………… 43
    1.取締役の資格・員数・任期について ………………………………………… 43
    2.取締役等の選任・解任について …………………………………………… 46
    3.取締役会のない会社の取締役権限 ………………………………………… 47
    4.内部統制システムの構築について …………………………………………… 48
    5.取締役会の書面決議について ……………………………………………… 50
    6.取締役の登記について ……………………………………………………… 51
    7.取締役の責任について ……………………………………………………… 52
    8.株主代表訴訟について ……………………………………………………… 55
    9.特別取締役制度について …………………………………………………… 57
  2.7 その他の機関 ………………………………………………………………… 59
    1.監査役について ……………………………………………………………… 59
    2.会計参与について …………………………………………………………… 62
    3.会計監査人について ………………………………………………………… 66
    4.支配人について ……………………………………………………………… 69
    5.委員会設置会社について …………………………………………………… 70

第1章 会社法改正の基本方針 Date: 2006-06-18 (Sun) 
新会社法の改正ポイントをまとめました。
http://www.shorui.com/nonomi-1/

1.1 はじめに Date: 2006-06-18 (Sun) 

■ 1.大改正にビックリ Date: 2006-06-18 (Sun) 
有限会社」廃止へ
 2004年7月18日、日本経済新聞1面になんとも衝撃的な文字が掲載された。

 法務大臣の諮問機関である法制審議会が、有限会社制度を廃止し、株式会社に一本化する方針を固めたと掲載されていた。
 日々、会社設立をサポートをしている私にとっては、これからどのように実務に対応したらいいのか頭の中が真っ白になった。

 実際、株式会社を設立する人よりも有限会社を設立する人の割合の方が多いので、実務に与える影響は大きい。
 その後、「最低資本金の撤廃による1円起業の恒久化」「合同会社の新設」など様々な改正が行われることが報道され、改正の中身が大規模な規制緩和であることが判明するにしたがい不安より期待が大きくなる。

 そして、2004年12月、会社法改正の指針となる「会社法制の現代化に関する要綱案」が発表され、会社法改正の中身がようやく把握できるようになった。
 そこに記載されていた会社法改正案の内容は、「今までの法律は、一体何だったのだろうか?」と思うくらいの規制緩和を推進した会社法改正案であった。

 そこで、会社法改正の指針となった「会社法制の現代化に関する要綱」の中身を見ながらに「新会社法」の概要を見ていきたいと思います。

■ 2.参考文献 Date: 2006-06-18 (Sun) 
会社法制現代化の概要 別冊商事法務編集部 編

法務省「会社法制の現代化に関する要綱」
1.2 実際、どうなったの? Date: 2006-06-18 (Sun) 

■ 1.何が変わったのか Date: 2006-06-18 (Sun) 
 今まで「商法第二編」、「有限会社法」、「商法特例法」に分散していた各規定を「会社法」というひとつの法典にまとめ、カタカナ文語体で書かれていた条文をひらがな口語体で書き、読みやすい法律にした。
 また、「公開会社」(会社法2条5号)「大会社」(会社法2条6号)など用語の定義・整理を行い、株主代表訴訟の原告適格(会社法851条)など解釈に疑義のあった部分を明確化するため、必要に応じて規定の整備を行った。

 そして、委員会設置会でない会社の取締役責任も原則として過失責任に軽減する(会社法120条・423条・462条)などして、各種制度間の規律不均衡の是正を行っている。
 また、最近の社会経済情勢の変化に対応するために組織再編など各種制度を見直し、最低資本金の撤廃や有限会社の廃止など、「会社法制の現代化」にふさわしい実質的改正を行った。

■ 2.何が変わらなかったのか Date: 2006-06-18 (Sun) 
 「会社法制の現代化に関する要綱」に盛り込まれながら、国会審議で修正された項目が3つあります。
 いずれも経団連など経済界からの強い要望で盛り込まれたと思われる項目ですが、規制緩和の行き過ぎになると判断され修正されました。

(1) 自己株式の市場売却
 買取請求権に応じて取得した自己株式及び合併、分割及び営業全部の譲受けにより相手方の有する自己の株式を取得した場合の自己株式を新株発行類似の手続を経ずに市場取引により売却することができる旨の定款の定めがあるときは、市場取引により自己株式を売却することができると規定した会社法179条は削除された。
 新株発行類似の手続をして売却することは費用倒れになるとの指摘から、このような規定をしたが、インサイダー取引や株価操作の危険があることから削除された。

(2)株主の権利行使に関する利益供与に係る供与行為者の責任
 株主の権利行使に関する利益供与に係る取締役の責任については、無過失責任から過失責任へ責任が軽減され、利益供与を実際にした行為者の責任についても、過失責任とされたが、利益供与のような反社会的な行為を実際にした取締役の責任を軽減することは好ましくないとの判断から供与行為者に限って無過失責任が維持された。(会社法120条4項)

(3)株主代表訴訟を提起することができない場合
 株主代表訴訟に係る訴えを提起することができない場合として盛り込まれた、「当該訴訟の追行により、会社の正当な利益が著しく害されること、会社に過大な費用の負担が生ずることその他これに準ずる事情が生ずることが、相当の確実さをもって予測される場合」という規定が、内容が不明確で、株主代表訴訟の提起を不当に制限しているとの懸念から削除された。(会社法847条・602条)
第2章 株式会社関係 Date: 2006-06-18 (Sun) 

2.1 有限会社について Date: 2006-06-18 (Sun) 

■ 1.有限会社がなくなる Date: 2006-06-18 (Sun) 
 資本金は5千万円、役員は取締役が6名、監査役1名、代表取締役1名、従業員は80名の地元(長野県上田市)では、結構有名な会社がある。
 当然、株式会社だと思っていた。ところが、この会社、実は有限会社であった。

 一方、有限会社より株式会社の方が格が上であると思ってか、有限会社で十分であるのに、名ばかりの株式会社を設立する人も多い。

 もともと株式会社は多くの株主から多くの資本を集め、大規模な事業を行う公開会社を前提にしており、有限会社は家族や友人など身近な人と小規模な事業を行う閉鎖的な会社を前提にしていた。
 ところが、現在設立される株式会社は、株式の譲渡制限をする閉鎖的な株式会社がほとんどで、限りなく有限会社に近い株式会社である。

 このように、理念どおりに株式会社有限会社の区分けができなくなっていることから、株式会社有限会社を統合して、ひとつの会社類型(株式会社)として規律することになった。

 ただし、理念どおりに区分けできなかった原因は有限会社に近い株式会社が多いことによるもので、株式会社側の制度問題である。有限会社制度については何ら問題が無い。
 したがって、有限会社が廃止されると言っても、有限会社という会社の種類がなくなるだけで、有限会社の制度自体は、株式会社制度のなかで存続する。
 つまり、定款で株式の譲渡制限の規定を設ければ、例えば取締役が1名だけの株式会社会社法326条1項)のように、今までは有限会社でしか認められていなかった機関設計が株式会社の機関設計として認められる。
 今までの有限会社と異なる点は、取締役・監査役任期が無期であったのが、最長でも10年までの有期になった(会社法332条・336条)ことと、決算公告が義務づけられた(会社法440条)ことぐらいである。その他の制度は、ほぼ今までの有限会社と同じ制度が株式会社制度の中で規定されている。
 したがって、有限会社という会社の種類は廃止されるが、有限会社制度自体は、株式会社制度の中に統合されたということである。

■ 2.今までの有限会社について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 会社法施行前に有限会社法に基づき設立された今までの有限会社は、会社法施行日以降は、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下整備法という。)2条により、会社法の規定による株式会社として存続することになる。

 ただし、株式会社として存続することになっても、整備法3条から44条に下記のような会社法の特則が規定されており、この規定が今までの有限会社に適用される結果、今までの有限会社と同一の制度が維持される。

【整備法の主な特則】
・その商号中には有限会社という文字を用いなければならない。(整備法3条1項)
・取締役の任期を定めた会社法332条の規定は適用しない。(整備法18条)
・決算書の公告を定めた会社法440条の規定は適用しない。(整備法28条)

 つまり、今までの有限会社は、整備法の特則が適用された株式会社(以下、この会社を「特例有限会社」という。)として存続する。
そして、特例有限会社は、今までの有限会社と全く同じであり、改正前も改正後も、制 度上何ら変わらないようにするために、整備法で特例が規定されているのである。

 したがって、会社法施行後でも今までの有限会社は「有限会社○○○」と商号に有限会社の文字をを付けなければならない。もし、「株式会社○○○」などと株式会社と誤認されるような表示をすると100万円以下の過料に処せられる。(整備法3条4項)

 「株式会社○○○」としたいのであれば、まず株主総会で商号の変更の手続をし、その後、特例有限会社解散の登記と商号変更後の株式会社設立登記をすることになる。(整備法45条・46条)

 商号の変更をすると、正真正銘の株式会社になり、整備法の特則を受けなくなるので、商号の中に株式会社の文字が入るかわりに、取締役の任期が有期となり、決算公告も必要になる。
 つまり、会社法施行後に設立した株式会社と同じとなり、二度と特例有限会社に戻ることはできない。

2.2 最低資本金制度について Date: 2006-06-18 (Sun) 

■ 1.最低資本金制度の廃止 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 今までは、株式会社を設立するには1000万円、有限会社を設立するには300万円の資本金が最低限必要でした。これが最低資本金制度です。
 今回の改正で、株式会社制度と有限会社制度が統合されたので、最低資本金は300万円になるのかと思いましたが、この最低資本金制度は廃止され、資本金1円から会社設立登記ができるようになりました。

 なぜ、最低資本金制度があったかというと、会社債権者保護のためです。
 株式会社有限会社は物的会社と呼ばれ、株主は出資した額以上に責任を問われない有限責任を負うだけなので、会社債権者を保護するために会社が最低限保有すべき財産を設立時に出資させていたのです。

 しかし、会社設立時に、最低資本金の出資を要求している一方で、会社設立後に会社の財産が資本金に満たなくなっても増資を要求していないため、会社の資本金よりも会社の財産が少ない会社がかなりありました。

 もともと会社債権者保護については、最低資本金制度、会社財産の開示制度、取締役の責任の3つの規定で行うことになっていました。
 このうち、最低資本金については設立時にのみ最低資本金を要求しても意味がないため廃止し、会社財産の開示制度と取締役の責任を強化することによって会社債権者を保護することになりました。

 具体的には、最低資本金制度を廃止して、会計参与制度の創設などで計算書類の適正を確保し、すべての株式会社に対し貸借対照表の公告を義務づける。(会社法440条)
 配当や自己株式の取得など株主に対する会社財産の払い戻しについては、統一的な財源規制(会社法461条)をし、これに違反して配当をした取締役の責任は、分配可能額超過分については、総株主の同意があっても免除できない(会社法462条3項)ことにした。
 また、会社の純資産額が300万円を超えるまでは、剰余金の分配はできないことにしています。(会社法458条)
 以上のような措置をとることにより会社債権者の保護をはかっています。

 最低資本金制度が導入されたのは平成2年でした。5年間の猶予期間の中で株式会社は1000万円にしなければ有限会社等に組織変更するか解散するしかありませんでした。
 零細な株式会社を資本金1000万円にすることは、大変苦労なことでした。
 ちょうど、司法書士になったばかりの時で、増資の登記がたくさんあって良かったのですが、最低資本金が廃止されることになり、一体あの時の苦労は何だったんだろうか?と今は思います。

2.3 設立手続について Date: 2006-06-18 (Sun) 

■ 1.類似商号規制の廃止 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 会社設立手続の中で一番面倒であったのが「類似商号調査」と「目的の適格性調査」である。

 改正前は、商法に「他人が登記した商号は、同一の市町村内において同一の営業のために、これを登記することができない」と記載され、商業登記法にも 「商号の登記は、同一市町村内においては、同一の営業のため他人が登記したものと判然区別することができないときは、することができない」と規定されていたので、会社を設立する時は、商号と本店・目的を決めた段階で、本店所在地を管轄する法務局で、同一市町村に同一営業の類似商号が登記されているかどうか調査する必要があった。

 また、会社の目的は、類似商号調査の関係で、「同一営業」であるかどうか判別することが容易にできるように、具体的で明確に記載しなければならないとされていた。
 この具体的で明確に記載する基準が大変曖昧だったため、既に登記されている目的を参考に目的を決める必要があり、新規に行われるようになった事業などは、会社の目的としてなかなか認められない傾向にあった。
 そのため、事前に法務局で目的表現が適格かどうか調査する必要があり、類似商号調査とともに、迅速な会社設立手続をするうえで障害になっていた。
 類似商号規制が廃止されると、目的の適格性についてもかなり規制が緩和されると思われる。

 このように、迅速な会社設立手続の障害になっているのに加えて、実際の企業活動が広域化しており同一市町村という規定が実態にそぐわないため類似商号規制は廃止された。
 ただし、改正後にも「何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない」(会社法8条)との規定があるので、不正の目的をもって他の会社であると誤認させる商号の使用は当然できない。あくまでも類似の商号があっても会社設立登記をすることができるようになっただけなのでその点は注意が必要だ。

 ただし、類似商号規制は廃止されたが、設立しようとしている会社と同一住所に同一商号の会社が既にある場合は、住所を変えなければ同じ商号の会社を設立することはでない。(商業登記法27条)これは同一住所に同一商号の会社が複数存在すると会社の特定が難しくなるためである。

 余談であるが、法務局職員の接客態度はあまり良くないので、調査に行って喧嘩してくる人もいるぐらいで、結構精神的にも負担のかかる調査であった。
 類似商号規制の廃止により、実際に目的の適格性がどの程度緩和されるかにもよるが、類似商号と目的の適格性調査をしなくてもよくなれば、かなり手続的に楽になることは間違いない。

2.払込金保管証明書の廃止 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 類似商号調査と並んで厄介だった手続に銀行に払込金保管証明書を発行してもらう手続がありました。

 会社設立登記の添付書類として、間違いなく出資金が払い込まれたことを証明するため、銀行が発行した払込金保管証明書を添付する必要がありました。
 この払込金保管証明書を銀行が簡単に発行してくれれば問題ないのですが、取引がない銀行へ依頼すると審査が厳しく、発行してくれないケースや審査に長時間掛かるなど、迅速な会社設立の障害となっていました。

 また、会社設立登記が完了して銀行に設立後の登記簿謄本を持っていくまで、払い込んだ出資金を引き出せない規定になっていたので、登記完了まで出資金を使うことが出来ず開業資金に困ることもありました。

 このようなことから発起設立の場合は、払込金保管証明書でなく銀行口座の残高証明書でも、かまわないことになりました。
 残高証明であれば、一定の手数料を払えば、すぐに簡単に発行してもらえるので、手続が簡単迅速になります。

 なお、募集設立の場合は、今までどおり払込金保管証明書の添付が必要です。(会社法64条)
 残高証明書でいいのは発起設立の場合だけです。

3.現物出資等の検査役調査不要範囲 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 会社設立後に営業に使う車やパソコンを現物出資や財産引受けしたいという人が結構多い。

 現物出資や財産引受けする場合、定款に記載した現物出資や財産引受けをする財産の価格が適正かどうか調査するため、裁判所の選任する検査役の調査を受けなければならない。
 ただし、取締役及び発起人が事後的に填補責任を負えるぐらいの少額な財産であれば、万一の場合、取締役や発起人に責任をとらせれば済むことなので、検査役の調査を不要としている。

 今回の改正によって、この検査役の調査を必要としない範囲が広がった。
 今までは、資本金の5分の1を超えず、かつ、500万円以下の財産については、検査役の調査を不要としていたが、填補責任をとらせることがで可能な額は資本金の額とは無関係であることから、資本金の5分の1を超えない額という規制を廃止して、資本金の額に関係なく500万円以下の財産については、検査役の調査を不要とした。(会社法33条10項1号)
 これにより、例えは資本金1000万円の株式会社を設立する場合は200万円を超えない額まで検査役の調査が不要であったのが、500万円を超えない額まで検査役の調査が不要になった。

 また、「取引所の相場のある有価証券」も検査役の調査が不要であったが、この範囲も広がり「市場価格のある有価証券」に拡大されたので、店頭登録株式なども市場価格を超えなければ検査役の調査が不要になる。(会社法33条10項2号)

 これにより、現物出資や財産引受けを伴う会社設立が多くなると思われる。

 なお、改正により発起設立の場合における設立時の取締役及び発起人(現物出資者又は財産の譲渡人を除く)の責任が無過失責任から過失責任へ軽減され、財産価格の調査について過失がないことを証明した場合には、填補責任を負わないものとされた。(会社法52条2項)
 ただし、募集設立の場合の発起人及び設立時の取締役の責任は、今までどおり無過失填補責任である。(会社法103条1項)

■ 4.事後設立 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 会社設立後2年内に、その成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものを取得することを事後設立という。

 この事後設立については、資本金の5%以上の対価で取得する場合には株主総会の特別決議が必要であり、検査役の調査も必要とされていた。

 この事後設立については、会社財産の一般取引は取締役の善管注意義務によって、その適正価格を確保するべきであり、検査役の調査によって適正価格を決めることはなじまないということで、検査役の調査制度は全面廃止された。

 また、営業全部の譲受けなどとの並びから、事後設立についても、譲り受け財産が純資産額に対する割合の合計が20%以下の場合には、株主総会の特別決議を要しないとされた。

 そして、組織再編の規制緩和により、新設合併、新設分割又は株式移転により設立された会社については、事後設立規制が一切課せられないことになった。

会社法467条1項5号)

■ 5.定款の絶対的記載事項 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 会社法改正により、原始定款に絶対に記載しなければならない事項が下記のように変更になった。(会社法27条)

1.目的
2.商号
3.本店の所在地
4.設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
5,発起人の氏名又は名称及び住所

 改正前と比べると、
会社の設立に際して発行する株式の総数」というのが、「設立に際して出資される価額又はその最低額」に変更されている。
 また、「会社が発行する株式の総数」と「会社が公告を為す方法」というのが削除されている。

 「会社の設立に際して発行する株式の総数」というのが、「設立に際して出資される価額又はその最低額」に変更された点については、設立時に出資される額と設立に際して発行する株式総数は実際には関連性がないので、設立時の発行株式数を定めるより設立時の出資額を直接定めた方が出資の確実性がわかるので「設立に際して出資される価額又はその最低額」を記載させることにした。(会社法27条)

 なお、発起人が割り当てを受ける設立時発行株式の数やそれと引き換えに払い込む額は、定款で定めていない場合は、発起人全員の同意で定めなければならない(会社法32条)とされている。

 発起人や株式引受人が期日までに払込をしないときは、当該払込をすることにより株主となる権利を失う。(会社法36条3項・63条3項)
 失権株が出た場合でも、改正前の発起人などの引受・担保責任が廃止されたので、定款で定めた「設立に際して出資される価額又はその最低額」以上の出資がされているときには、そのまま設立を行うことができる。
 ただし、発起人は1株以上の引受をしなければならない(会社法25条2項)ので、失権して1株も引受けない結果となった場合は、設立無効原因となる。

 「会社が発行する株式の総数(以下、発行可能株式総数という)」については、、原始定款に記載していない場合は、設立の時までに発起設立の場合は発起人全員の同意、募集設立の場合は創立総会の決議によって、定款を変更して「発行可能株式総数」を定めを設けなければならないと規定している。(会社法37条・98条)

 これは、設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない(会社法37条3項)規定との関係で、株式の引受状況を見ながら設立時までに定款に定るようにしたと思われる。

 会社が公告をする方法は絶対的記載事項から任意的記載事項になったので、定款に記載するかどうかは自由であるが、その定めがない場合は官報となる。(会社法939条)

 なお、発起設立で原始定款に任意記載事項として定めることが多かった設立時の取締役の選任については、下記の手順となる。

1.発起設立の場合において、定款で設立時の取締役等を定めていないときは、発起人による出資の履行後、引き受けた株式の議決権の過半数をもって、設立時の取締役等を定めるものとする。(会社法40条)
なお、定款で設立時の取締役を定められた者は、出資の履行が完了したときに、設立時の取締役に選任されたものとみなすことになっている。(会社法38条3項)

2.募集設立の場合においては、創立総会の決議により設立時の取締役等を選任するものとする。(会社法88条)

■ 6.発起設立と募集設立について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 会社を設立するには、発起設立と募集設立がある。

 このうち、設立手続が簡単な発起設立で会社を設立するのが一般的で、募集設立で会社を設立するのは少数である。
 このため、発起設立に一本化する方向で検討されたが、下記事情を考慮して募集設立を存続させることになったようだ。

 1.多くの出資者がいる場合は、募集設立の方が使いやすい。
 2.発起人になりたがらない人もいる。
 3.外国人の発起人がいる場合、署名証明書の入手に困難を生じる。

 確かに、発起人になると原始定款に実印を押印する必要があり、公証役場で定款を認証する際には、間違いなく原始定款に発起人として記名押印したことを明らかにするため、印鑑証明書の添付を求められる。
 この場合、実印の押印や印鑑証明書を預けることをいやがる人がいることも事実である。
 また、外国人が発起人になる場合、日本に在留資格があり外国人登録している場合は、日本印鑑証明書の発行を受けることが出来るが、外国人登録していない場合は、日本印鑑証明書を発行してもらえない。
 この場合、定款に署名したサインが間違いなく本人の署名であることを国籍を有する本国官憲に証明してもらう必要があり、これがかなり面倒である。
 ただ、日本と同じ印鑑証明書の制度がある韓国などの場合は、韓国の印鑑証明書とその翻訳を付けるだけなので、この場合はそれほど大変ではないので発起設立の方がいいだろう。

 上記のような理由で募集設立の制度が残ったことになる。
 ただし、募集設立と発起設立では、下記の点に違いがある。

1.募集設立では、払込金保管証明書を金融機関に発行してもらう必要がある。(会社法64条)
なお、発起設立では、残高証明書などで足りる。
2.発起設立の場合における株式会社の設立時の取締役及び発起人(現物出資者又は財産の譲渡人を除く)が財産価格の調査について過失がないことを証明した場合には、填補責任を負わないものとする過失責任である(会社法52条2項)のに対し、募集設立の場合における株式会社の発起人及び設立時の取締役は、無過失の填補責任を負うものとされる。(会社法103条1項)
 これらは、募集設立の場合には、株式引受人を保護する必要があるからだ。

 このように、発起設立の方が断然設立しやすいので、余程のことがない限り発起設立で会社を設立することになる。

■ 7.設立無効の訴えについての変更点 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 会社設立に無効原因がある場合は、会社の設立の日から2年以内に訴えをもってのみ会社設立の無効を主張することができる。(会社法828条1項1号)

 設立無効の訴えについては、株主が株式会社の設立の無効の訴えを提起した場合においては、裁判所は、被告の請求により、相当の担保の提供を命ずることができるように改正された。(会社法836条1項)

 これは、濫訴防止や将来の損害賠償責任に対する担保が必要であるとの判断による改正である。

2.4 株式会社の機関設計 Date: 2006-06-18 (Sun) 

■ 1.株式会社の4つのタイプ Date: 2006-06-18 (Sun) 
 今まで、株式会社を設立するには、取締役が最低3名、監査役が最低1名必要であった。

 会社法では、有限会社株式会社に統合されたので、今まで有限会社のみで認められていた取締役1名だけの会社株式会社でも認められるようになった。
 このように、株式会社の機関(取締役会、監査役監査役会、会計参与、会計監査人又は三委員会等)設計を柔軟に行うことが出来るようになった。

 ただし、全く自由に決めることが出来るわけではない。
 不特定多数の人が株主になるかもしれない株式の譲渡制限をしていない会社では、ある程度厳格な機関設計が必要である。
 また、株主の数や会社債権者の数が多い大会社についても同じである。
 そこで、下記4つの会社タイプに分けて、採用できる機関設計に違いを持たせている。

 1.株式の譲渡制限をしている大会社でない会社
 2.株式の譲渡制限をしている大会社
 3.株式の譲渡制限をしていない大会社でない会社
 4.株式の譲渡制限をしていない大会社

 なお、大会社とは、資本金5億円以上であるか、負債が200億円以上ある会社のことである。

2.機関設計をするための基本規定 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 会社機関設計の基本は、会社法326条から328条に規定されている。

 株式会社には取締役が最低1名いればよく、その他の機関につては任意であり、置いても置かなくてもかまわない。置く場合には、定款に記載する必要である。(会社法326条)

 しかし、不特定多数の人が株主になるかもしれない公開会社大会社については、一定のガバナンスが必要でり、また選択する機関設計によっては規制も必要である。
 そこで、会社法では下記のような規制が規定されている。(会社法327条・328条)

 株式の譲渡制限をしていない会社監査役会を設置した会社及び委員会設置会社については、取締役会の設置が義務づけられ、これらの会社では、必ず取締役会を置く必要がある。(327条1項)

 また、取締役会を置いている会社では、株主総会の権限が制限され(会社法295条2項)、会社の業務執行は取締役会が行うことになるので(会社法362条2項)、取締役会を監督する機関として監査役を必ず置かなければならないことになっている。(327条2項)

 監査役は基本的には業務監査権限と会計監査権限の二つの権限を持つのが原則である(会社法381条1項)が、大会社でない譲渡制限会社では、業務監査を監査役に任せるよりも株主が直接監督する方が効果的な場合もある。

 そこで、監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く譲渡制限会社の場合、定款に定めることによって、監査役の権限を会計監査権限だけにすることができる。(会社法389条)
 そして、この場合には株主の監督権限は強化されることになっている。(会社法367条・357条・360条)

 したがって、大会社でない譲渡制限会社では、取締役会を設置しても会計監査権限のみの監査役がいればいいことになる。ということは、会計について何も知らない会計監査権限のみの監査役を置くよりも公認会計士や税理士などの資格を持った会計参与を置く方が会社のためになるのではないかということで、大会社でない譲渡制限会社の場合は、取締役会を置いても会計参与を置けば監査役を置かなくてもいいことにしたのである。(327条2項ただし書き)

 大会社では、株式の譲渡制限をしても会計監査人を必ず置かなければならないので(会社法328条2項)必ず業務監査権限のある監査役を置く必要がある。(会社法327条3項)したがって、会計参与を置いても監査役は必要になる。

 なお、会計監査人を置くと委員会設置会社を除いて業務監査権限のある監査役を置かなければならない(会社法327条3項)のは、会計監査人が経営陣から独立した機関にするためである。
 つまり、会計監査人の選任及び解任には監査役の同意を必要にし(会社法344条)、会計監査人の報酬についても監査役の同意を必要としている。(会社法399条)これにより会計監査人の独立を担保しているのである。

 その他、委員会設置会社監査役を置いてはならない旨規定している。(会社法327条4項)
 これは、委員会設置会社には監査委員会があるためである。

 また、委員会設置会社は、会計監査人を置かなければならない旨規定されている。(会社法327条5項)
 これは、委員会設置会社では執行役に大きな権限が与えられるため、その業務の適正を確保するため、財務の監督を会計監査人に行わせる必要があるからである。

 大会社では会計監査人を必ず置かなければならないことになっている。(会社法328条・委員会を置いた場合は、会社法327条5項)
 そして、株式の譲渡制限をしていない大会社では、委員会設置会社を除いて、監査役会を置く必要がある。(会社法328条1項)

 以上の基本規定に基づいて、4つの会社タイプ別に、機関設計を決めることになる。

■ 3.大会社でない譲渡制限会社の機関設計 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 株式会社の4つのタイプのうち、数が最も多い「大会社でない譲渡制限会社」の機関設計にはどのようなものがあるのでしょうか。

 1.取締役のみ
 ----→「大会社でない譲渡制限会社」では、取締役を最低1名置けばいい。(会社法326条1項)
 これが基本設計である。取締役を1名以上置けばあとは任意となる。
 今まで有限会社で認められていた機関設計である。

 2.取締役+監査役
 ----→この形は、1番の基本形に監査役を任意に置いた場合だ。
 この形も、今まで有限会社で認められていた機関設計である。
 なお、この形の監査役の権限は定款で会計監査権限のみに限定することもできる。(会社法389条)

 3.取締役+監査役+会計監査人
 ----→この形は、1番の基本形に会計監査人を任意に置く場合だ。会計監査人を置くには、業務監査権限のある監査役を置くことが必要である。(会社法327条3項)
譲渡制限会社では会計監査人を置いても取締役会を設置する義務はない。
 「大会社でない譲渡制限会社」でも会計監査人を置くことができるようになった。

 4.取締役会+監査役
 ----→この形は、1番の基本形に取締役会を任意に設置した場合だ。取締役会を設置した場合は、監査役を必ず置かなければならない。(会社法327条2項・ただし、下記5番に例外あり)
 改正前の株式会社での機関設計である。
 なお、この形の監査役の権限は定款で会計監査権限のみに限定することもできる。(会社法389条)

 5.取締役会+会計参与
 ----→この形も1番の基本形に取締役会を任意に置いた場合であるが、上記4番の変形である。取締役会を設置した場合は、監査役を置かなければならないのが基本であるが、会計参与を置いた場合は例外的に監査役を置く必要がない。(会社法327条2項ただし書き)
 これは、上記4番の場合、会計監査権限のみの監査役でもいいことになっており(会社法389条)、会計について何も知らない会計監査権限のみの監査役を置くよりも公認会計士や税理士などの資格を持った会計参与を置く方が会社のためになるのではないかということで、取締役会を置いても会計参与を置けば監査役を置かなくてもいいことにしている。

 6.取締役会+監査役
 ----→この形は1番の基本形に任意に監査役会を置いた場合である。
 会計監査人を置かなくても監査役会を設置できる。
 なお、監査役会を置く場合は、取締役会の設置義務がある。(会社法327条1項2号)

 7.取締役会+監査役+会計監査人
 ----→この形は、1番の基本形に取締役会と会計監査人を任意に置いた場合。会計監査人を置くには業務監査権限のある監査役が必ず必要である。(会社法327条3項)
大会社でない譲渡制限会社」でも会計監査人を置くことができるようになった。

 8.取締役会+監査役会+会計監査人
 ----→この形は上記7番の場合に監査役でなく監査役会を置いた場合である。
監査役会を置いた場合は、取締役会の設置義務がある。(会社法327条1項2号)

 9.取締役会+委員会+会計監査人
 ----→この形は、委員会を設置した場合である。委員会を設置した場合は、取締役会と会計監査人を必ず置かなければならない。(会社法327条1項3号・327条5項)
 また、委員会を設置した場合は監査役を置くことはできない。(会社法327条4項)
 「大会社でない譲渡制限会社」でも委員会設置会社になることができるようになった。

 「大会社でない譲渡制限会社」では、以上9つのパターンの機関設計が考えられる。
なお、会計参与は、上記のどのパターンにも任意に設置できる。

 このように、「大会社でない譲渡制限会社」では定款に定めることにより自由に機関設計をすることができる。

■ 4.大会社でない公開会社の機関設計 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 大会社でない公開会社の機関設計については、下記のようなパターンがある。
 なお、ここで言う公開会社とは、株式の譲渡制限をしていない会社のことである。

 1.取締役会+監査役
 ----→公開会社では必ず取締役会を設置しなければならない。(会社法327条1項1号)
 そして、取締役会を設置すると監査役を必ず置かなければならない(会社法327条2項)。
 したがって、大会社でない株式の譲渡制限をしていない会社では、この形が基本となる。
 この形は、従来の株式会社の機関設計と同じである。
 ただし、監査役の権限を会計監査権限のみにすることはできず、業務監査権限も保有している。

 2.取締役会+監査役
 ----→この形は上記1番の基本形に監査役でなく監査役会を置いた場合である。
 会計監査人を置かなくても監査役会を設置できる。

 3.取締役会+監査役+会計監査人
 ----→この形は、上記1番の基本形に任意に会計監査人を置いた場合である。
 改正により大会社でなくても会計監査人を置くことができるようになった。

 4.取締役会+監査役会+会計監査人
 ----→この形は上記3番の場合に監査役でなく監査役会を置いた場合である。

 5.取締役会+委員会+会計監査人
 ----→この形は、委員会を設置した場合である。
 委員会を設置した場合は、会計監査人を必ず置かなければならない。(会社法327条5項)
 委員会を設置した場合は、監査役を置くことができない。(会社法327条4項)

 「大会社でない公開会社」では、以上5つのパターンの機関設計が考えられる。
 なお、会計参与は、上記のどのパターンにも任意に設置できる。

5.大会社である譲渡制限会社の機関設計 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 企業の100%子会社などに多い、資本金5億円以上または負債200億円以上の株式会社で株式譲渡制限をしている会社の機関設計には、下記のようなパターンがある。

 1.取締役+監査役+会計監査人
 ----→大会社である株式譲渡制限会社は会計監査人を必ず置かなければならない。(会社法328条2項)
 また、会計監査人を置いた場合は業務監査権限を有する監査役を置く必要もある。(会社法327条3項)
 ただし、譲渡制限会社では会計監査人を置いても取締役会を設置する義務はない。
 この形が大会社である譲渡制限会社の基本形だ。

 2.取締役会+監査役+会計監査人
 ----→1番の基本形に取締役会を任意に置いた形である。

 3.取締役会+監査役会+会計監査人
 ----→1番の基本形に監査役会を任意に置いた形である。
 監査役会を置く場合は、取締役会を置く必要がある。(会社法327条1項2号)

 4.取締役会+委員会+会計監査人
 ----→この形は、委員会を設置した場合である。
 委員会を置いた場合は、取締役会を置く必要がある。(会社法237条1項3号)
 また、委員会設置会社は、監査役を置くことはできない。(会社法327条4項)

 「大会社である譲渡制限会社」では、以上4つのパターンの機関設計が考えられる。
 なお、会計参与は、上記のどのパターンにも任意に設置できる。

■ 6.大会社である公開会社の機関設計 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 上場会社に多い、資本金5億円以上または負債200億円以上の株式会社で株式譲渡制限をしていない会社(以下公開会社という)の機関設計には、下記のようなパターンがある。

 1.取締役会+監査役会+会計監査人
 ----→公開会社なので、取締役会を置かなければならない。(会社法327条1項1号)
 また、公開大会社なので監査役会と会計監査人も必ず置かなければならない。(会社法328条1項)1番の形が公開大会社の基本形だ。

 2.取締役会+委員会+会計監査人
 ----→委員会を設置した場合の形だ。
 委員会を設置すると監査役会を置くことができない。(会社法327条4項)
 委員会を設置すると会計監査人を置かなければならない。(会社法327条5項)

 「大会社である公開会社」では、以上2つのパターンの機関設計が考えられる。
 なお、会計参与は、上記のどのパターンにも任意に設置できる。

2.5 株主・株主総会 Date: 2006-06-18 (Sun) 

■ 1.取締役会を設置しない会社の株主総会 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 取締役会を設置していない会社は、有限会社型の株式会社である。
 したがって、取締役会を設置していない株式会社の株主総会の規定は、今までの有限会社法の規定と可能な限り同じにしてある。

 取締役会を設置しない株式会社の株主総会は、下記の規律に従うことになる。

 1.株主総会は、会社法に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。(会社法295条1項)
つまり、一切の事項について決議することができるので、株主総会は万能の機関ということになる。これは、今までの有限会社と同じ規律である。
 ちなみに、取締役会を設置すると会社法で規定する事項と定款に定めた事項のみしか決議することができなくなる。(会社法295条2項)

 これは、株式の譲渡制限をしていない会社(以下公開会社という)には、必ず取締役会を設置しなければならないことと関係している。
 公開会社の場合、株式の譲渡により頻繁に株主の変動が起こるので、株主が直接会社経営に参画することは少ない。
 そこで、取締役会と監査役の設置を義務づけた上で、取締役や監査役の選任解任を通じて間接的に会社経営に参画させることが適しているので、株主総会の権限を限定している。
 一方、株式の譲渡制限をしている会社(取締役会を設置する義務がない)では、株主の変動が少なく、会社との利害関係が長期にわたることが多いので、株主に直接会社の経営に参画させる機会を与えようと株主総会が万能の機関となっている。

 2.株主総会の招集通知は、会日の1週間前(定款で短縮可能)までに発すれば足りるとしている。
 原則は2週間前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。(会社法299条1項)
 この原則を譲渡制限会社の場合は1週間前までにすれば良く、且つ取締役会設置会社でなければ定款でこの期間を短縮できると規定して、今までの有限会社と同じ規律にしている。(会社法299条1項)

 3.取締役会を設置していない会社では、株主総会の招集通知は、書面又は電磁的方法によらないことができる(会社法299条2項)。したがて、口頭ですれば足りる。これについても、今までの有限会社と同じ規律である。

 4.取締役会を設置していない会社では、招集通知を発送する必要がないので、株主総会招集通知への会議の目的事項の記載又は記録は要しないことになる。(会社法299条4項参照)

 5.株主提案権は、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の100分の1以上の議決権又は300個以上の議決権を6ヶ月前から(非公開会社の場合は6ヶ月前という規制はない)引き続き有する株主が、総会の8週間前に議題(株主総会の目的)を提出することになっている。(会社法303条2項)
 これに対して、取締役会を設置していない会社では、各株主は単独株主権として総会における議題提案権を有し、いつでも株主提案権を行使できる。(会社法303条1項)つまり、議題提案権の行使に制限はない。
 したがって、会議の目的以外の議題を当日提案することも可能である。(会社法309条5項)

 6.前記3番に記載したとおり、取締役会を設置していない会社は、招集通知を発送する必要がないので、当然株主総会招集通知への計算書類及び監査報告書の添付を要しない。(会社法437条)

 7.株主が議決権を統一しないで行使する場合は、取締役会設置会社では、総会の3日前までに議決権を統一しないで行使する旨及び理由を通知しなければならない。(313条2項)
 これに対して、取締役会を設置していない会社では、前記4番のとおり会議の目的が通知されず、また株主総会に万能の権限があり株主に強い権限が与えられているため、議決権の不統一行使については、事前通知を要しない。(会社法313条2項)

 以上が、取締役会を設置していない会社の株主総会についての特則である。

2.株主提案権と総会招集について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 株主総会の株主提案権と総会招集については、下記のような改正が行われている。

 1.株主提案権の行使期限についは、原則としては株主総会の日の8週間までに請求する必要があるが、定款をもってこれを短縮することができるようになった。(会社法303条2項)
 これは、株主提案権行使の拡充を定款自治に任せるべきだとの考えにようるものと思われる。

 2.株主総会は定款に別段の定めある場合を除いて本店の所在地または、その隣接する場所で招集しなければならなかったが、これを廃止した。
 これは、最近では本店の所在地やその近辺に多くの株主がいるわけではなく広範囲に株主がいる場合が多いので、株主の利便性を考え、株主の集まりやすい場所で招集できるようにするため廃止されたと思われる。

 3.株主総会に係わる招集の手続及び決議の方法を調査させるため当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申し立てをすることができる。
 この検査役の選任を請求することができるのは、一定の要件を満たした株主のみであった。
 ただ、事前に株主総会が紛糾することが予想される場合などは、会社自身にも検査役の選任を請求できるようにして、総会手続の公平さを証明させた方が、後々問題が起こらないであろうということで、株式会社にも総会検査役の選任を請求することができるようにした。(会社法306条1項)

 そして、裁判所は、総会検査役の報告があった場合において、必要があると認める時は、一定の期間内に株主総会を招集することを命じなければならない。
 しかし、総会の招集には多額の費用と時間が掛かることから、招集命令を出しにくいといった事情があった。
 そこで、総会の招集に代えて、株式会社に対しその調査結果の内容を総株主に対して通知するよう命ずることができるようにした。(会社法307条)
 この通知を受けた株主は決議取消の訴えを提起するなどして、決議の効力を争うことができるようになる。

 なお、株式会社の業務の執行に関し、不正の行為または法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときは、一定の要件を満たす株主は、当該株式会社の業務及び財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任を申し立てることができるが、この場合も株主総会の招集命令に加えて、調査結果の内容を総株主に対して通知するよう命ずることができるようにした。(会社法359条)

■ 3.書面投票・電子投票について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 書面投票制度と電子投票制度については、下記のような改正がされた。

 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができる場合がある。

 1.取締役ができる旨を定めた場合(会社法298条1項3号)
 2.株主の数が1000人以上の場合(会社法298条2項)

 1番は会社が任意に定めることができるが、2番の株主の数が1000人以上の場合は必ず定めなければならない。
 これは、株主の数が多いと直接総会に出席できない株主も多くなるので、できるだけ株主の意思を総会に反映させるために書面投票ができるよう義務づけた。

 この場合、招集通知を電磁的方法により受領することを承諾した株主に対しては、原則として、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供すれば足り、議決権行使書面の交付を要しないものとした。ただし、株主から請求があるときは、議決権行使書面の交付を要するものとする。(会社法301条2項)

 書面投票と電子投票とによる議決権の重複行使がされた場合においていずれの議決権行使を有効なものとして取り扱うかについて、株式会社があらかじめ定めることができること及び議決権行使を受け付けるべき期間について、株式会社があらかじめ合理的な定めを設けることができることを明確化するものとし、それらの定めについては、議決権行使書面等への記載を要するものとすることを法務省令で定めることになっている。
 これは、実務で重複して行使された場合、どちらを有効にするか判断が難しかったこと及び総会前日の午前0時まで電子投票の受付を待ってから集計しなければならないか疑義があったことによるものである。

2.6 取締役・取締役会 Date: 2006-06-18 (Sun) 

■ 1.取締役の資格・員数・任期について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 取締役の資格・員数・任期について、下記のような改正がされた。

 取締役の資格については、株式譲渡制限会社以外の株式会社は、定款をもっても取締役の資格を株主に限ることはできないものとされている。(会社法331条2項)
 したがって、株式譲渡制限をしている会社では、定款で株主に限る旨を定めることができる。これは、今までの有限会社で認められていたことである。
 譲渡制限をしていない会社では、不特定の株主が頻繁に入れ替わるので、取締役の人材を広く求めるべきであり、閉鎖的な株式譲渡制限会社では、その必要がないとの考えによるものと思われる。

 取締役の欠格事由から、破産手続開始の決定を受け復権していない者が外された。
 これは、経営していた会社が倒産し、会社の連帯保証人をしていた経営者自身も自己破産に追い込まれた場合でも、できるだけ早く再起ができるようにするためである。
 なお、会社経営者が自己破産をする場合、不動産などの財産が結構あるので、免責決定が出るのに時間が掛かり、再起が遅れるケースが多かった。

 これとは逆に証券取引法や各種倒産法制に定める罪を犯した者は、簡単に再起されては困るので、これらの罪を犯した者は、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年間は取締役になることができなくなった。(会社法331条3項)

 取締役の員数について、今までは3人以上が必要であったが、取締役会を設置しない株式会社の取締役の員数は、1人で足りるものとして(会社法326条1項)、今までの有限会社の機関設計を取り入れている。

 取締役の任期については、株式会社(委員会等設置会社を除く。)の取締役の任期は原則として選任後2年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとし、監査役の任期は選任後4年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとしている。(会社法332条・336条)
 監査役の任期の始期が「就任後」から「選任後」となっている点と取締役の任期が最終の決算期までが原則になったという点が改正点。

 ただし、株式譲渡制限会社については、定款で、これらの任期を最長選任後10年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時まで伸長することができるものとする。(会社法332条2項)
 今まで、有限会社では取締役の任期がなかったので、10年に伸長できるとしても規制強化になってしまった。
 なぜ10年なのかも意味不明。(会社法339条2項の取締役を正当な事由なく解任した場合の損害賠償の算定が困難になるので任期の定めを置いたとも云われているが、各界からの意見集約の妥協と考える。)

 休眠会社のみなし解散について、取締役の任期が最長10年以内になったので、今までの「5年」という期間については「12年」に延長した。(会社法472条)

 なお、最初の取締役の任期を1年以内としていた規定は廃止された。

 会計参与及び監査役の任期についても、公開会社でない株式会社においては、定款で10年に伸長できる。(会社法334条・336条)

 ただし、委員会等設置会社の取締役の任期は、選任後1年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までである。(会社法332条3項)

 また、次に掲げる定款変更をした場合には、取締役の任期は、当該定款変更の効力が生じた時に満了したものとみなすものとされる。(会社法332条4項)
 1 委員会等設置会社となる旨の定款変更
 2  委員会等設置会社となる旨の定款を廃止する旨の定款変更
 これは、委員会設置会社の取締役と委員会設置会社でない会社の取締役とでは、その権限が全く違うからである。

2.取締役等の選任・解任について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 役員を選任し又は解任する株主総会の定足数は、定款をもっても議決権を行使することができる株主の有する議決権の総数の3分の1未満とすることはできない。(会社法341条)
 これについては、改正前にも同じように規定されていた。(ただし、有限会社法には同じような規定はなかった。)

 今まで、取締役の選任は普通決議であったが、解任については特別決議であった。
 今回の改正で、株式会社の取締役(累積投票によって選任されたものを除く。)の解任決議の要件が普通決議に変更された。(会社法341条)

 これは、組織再編などで素早い会社経営を実現させるため株主総会決議を経ずに取締役の権限だけで行うことができることが拡大したので、取締役の選任・解任を通じて、株主が取締役をコントロールする必要性が高くなったことによるものと思われる。

 ただし、累積投票によって選任された取締役については、少数派の意見を尊重するという累積投票の趣旨からして、普通決議で解任できるというのは適当でないので、今までどおり特別決議によることになる。また、監査役についても、その職責から普通決議での解任は適当でないので、今までどおり特別決議が要件である。(会社法309条2項7号)

3.取締役会のない会社の取締役権限 Date: 2006-06-18 (Sun) 
 取締役会を設置していない場合の取締役の権限は、次のとおりである。

 1.各取締役が株式会社の業務執行・代表権を有する。(会社法348条・349条)

 2.複数の取締役を設置する場合には、原則として、業務執行の意思決定は、取締役の過半数をもって決する。(会社法348条2項)

 3.定款又は株主総会の決議をもって一部の取締役を代表すべき取締役とすること、定款をもって取締役の互選により代表すべき取締役を定めることができる。(会社法349条3項)

 このように、取締役会を設置していない会社の取締役の権限については、いままで有限会社法で規定されていた規定が、ほぼそのまま規定されている。

■ 4.内部統制システムの構築について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 最近の起業不祥事をみると、法令遵守違反、いわゆるコンプライアンスの欠如が問題となっている。法令遵守を徹底させるには、コンプライアンスを守るための会社内部のシステム(以下内部統制システムという)が必要である。

 このため、会社法では「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を大会社に義務づけている。(会社法348条4項、362条5項、416条2項)
 したがって、大会社でない会社では、内部統制システムの構築の決定は任意である。

 この内部統制システムの構築の決定は、重要な業務執行の決定になるので、取締役が二人以上の会社や取締役会設置会社では、その決定を取締役に委任することはできない。
会社法348条3項、362条4項、416条3項)
 つまり、取締役会の専権事項である。

 そして、下記のように規定されていた旧法務省令について、所要の整備を行ったうえで、内部統制システムの構築の決定に関する決議の概要を事業報告書に記載すべきとしている。

 1 監査委員会の職務を補助すべき使用人に関する事項
 2 前号の使用人の執行役からの独立性の確保に関する事項
 3 執行役及び使用人が監査委員会に報告すべき事項その他の監査委員会に対する報告に関する事項
 4 執行役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する事項
 5 損失の危険の管理に関する規程その他の体制に関する事項
 6 執行役の職務の執行が法令及び定款に適合し、かつ、効率的に行われることを確保するための体制に関するその他の事項
(参考として、改正前の商法施行規則193条)

5.取締役会の書面決議について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 改正前は、取締役会の書面決議について認められていなかった。

 改正後は、取締役会の決議の目的である事項につき、取締役の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、業務監査権限のある監査役が異議を述べたときを除いて、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨の規定を定款で定めることができるようになった。(会社法370条)

 ただし、代表取締役代表執行役)等による取締役会への3ヶ月に一回以上の自己の職務執行状況の報告に関する取締役会については、現に開催しなければならないことになっている(会社法363条2項・372条2項)ので、最低3ヶ月に一回以上は取締役会を開く必要がある。

 これに関連して、取締役、会計参与、監査役又は会計監査人が取締役の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を取締役会へ報告する必要がない旨規定されている。(会社法372条1項)

 これからは、電子メールでも取締役会の決議をすることができるようになった。

6.取締役の登記について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 共同代表取締役、共同代表執行役及び共同支配人の制度は廃止され、登記事項から削除された。(会社法911条3項参照)
 これは、共同代表制度は会社内部での単なる代表権の制限に過ぎず、外部的には表見代表取締役などにみなされ、公示制度として共同代表権の登記をすることに意味がないとの判断によるものと思われる。
 実際、共同代表にして代表権を制限している会社はあまりなかった。

 改正前は、すべての社外取締役(会社法2条15号)について、社外取締役である旨の登記をする必要があった。
 改正後は、責任限度額をあらかじめ定める契約を締結した社外取締役及び委員会設置会社の社外取締役並びに特別取締役の選定をした株式会社の社外取締役について、社外取締役である旨を登記事項とし、その余の株式会社の社外取締役については、社外取締役である旨を登記事項から削除した。(会社法911条3項21号・22号・25号)
これは法律上、必要的に規定されている社外取締役のみを登記事項とすれば、公示制度として問題ないからだと思われる。

■ 7.取締役の責任について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 取締役の責任について改正前は、
 1.違法な利益の配当した場合
 2.株主の権利の行使に関する利益供与をした場合
 3.他の取締役に対し金銭の貸付をし未だ弁済のない場合
 4.利益相反取引
について取締役の責任は無過失責任(過失がなくても当然に責任を負う。)とされていた。
 ところが平成14年に導入された委員会設置会社では、上記1,3.4の行為について商法特例法により取締役の責任が過失責任(過失がなければ責任を負わない。)である旨明記された。

 このように取締役の会社に対する各種の責任について、委員会設置会社の場合とそれ以外の株式会社の場合とで均衡のとれない部分があるので、調整を図るため、すべての会社の取締役の責任は、原則として過失責任とし、今まで委員会設置会社以外では無過失責任とされていた上記1~4については、下記のように原則過失責任としながら、特別の規定を置いている。

 1.違法な利益の配当した場合については、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、責任を負わないとされ(会社法462条2項)過失責任である旨が明記された。
 なお、支払い義務が生じる場合、分配可能額を超えて分配された額は総株主の同意がある場合でも免除できないとされている。(462条3項)

 2.株主の権利の行使に関する利益供与をした場合の取締役の責任ついては、委員会設置会社でも改正前は無過失責任であった。
 改正後は、すべての会社の取締役の責任が、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合には、責任を負わない(会社法120条4項)とされた。
 ただし、当該利益の供与を実際にした取締役は、当然のことながら無過失責任のままで、注意を怠らなかったことを証明しても責任を免れない。
 この責任は、総株主の同意がなければ免除できない。(会社法120条5項)

 3.他の取締役に対し金銭の貸付をし未だ弁済のない場合については、下記の利益相反取引に含まれることになった。

 4.利益相反取引については、一般の任務懈怠と同じに規定している。(会社法423条)
 ただし、一般の任務懈怠と異なり、利益相反取引により会社に損害が生じた場合は、任務を怠ったと推定されることになっている。(会社法423条3項)
推定が働くので、立証責任が転換される結果、任務を怠らなかったことを証明しない限り、責任を負うことになる。
 なお、自己のために株式会社と直接利益相反取引をした取締役については、たとえ任務を怠らなかったことを証明しても、会社に損害がある以上、自己の利益を保持し続けることは許されないので、無過失責任とされている。(会社法428条)
 過失責任になったことにより、改正前利益相反取引の取締役の責任を総株主の議決権の3分の2以上の多数を以て之を免除できる規定は廃止された。
 ただし、利益相反取引については、一般の任務懈怠と同じく総株主の同意で免除できる。(会社法424条)責任の一部免除も直接利益相反取引をした取締役を除いて認められる。(会社法425条~428条)

 改正前にあった、「任務懈怠行為が取締役会の決議に基づいてなされたるときは、その決議に賛成した取締役は、その行為をしたものとみなす」という規定は廃止された。

 取締役会を設置していない株式会社における取締役の任務懈怠責任についても、他の機関設計をしている会社と同じく、株主総会による一部免除、定款の定めによる取締役の過半数の同意による一部免除、社外取締役の責任限定契約について認められる。(会社法425条~427条)

 取締役会を設置していない株式会社における利益相反取引及び競合取引については、株主総会の承認を要するものとした上、その承認決議は普通決議で足りるとしている。(会社法356条)

■ 8.株主代表訴訟について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 株主代表訴訟については、下記のような変更が行われた。

 1.株主代表訴訟を提起することができない場合として、訴えの却下事由が法定された。

 責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、責任追及等の訴えの提起を会社に請求できないとした。(会社法847条1項ただし書き)
 これにより、もし株主が上記のような訴えを提起しても却下される。

 これは、総会屋等が株主代表訴訟を脅しとして使って、金銭等を会社に要求する場合に、訴権の濫用として訴え却下できるようにするためである。

 2.不提訴理由の通知制度が新設された。

 株主が会社に対し、役員等の責任を追求する訴えの提起を請求し(会社法847条1項)、会社が60日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合は、請求した株主が会社のために責任追及等の訴えを提起できる。(会社法847条3項)
 この場合に、当該株主又は取締役等の請求により、遅滞なく、当該株主又は取締役に対し、訴えを提起しなかった理由を、書面(不提訴理由書)をもって通知しなければならないとされた。(会社法847条4項)

 これは、訴えを提起しなかった理由を開示させることにより、会社側にしっかりとした社内調査をさせるためと、提訴後に必要となる訴訟資料を提供させるためだと思われる。この場合、会社の調査が取締役にとって有利な裁判資料になる可能性もあるので、当該株主以外に、取締役等からも理由の開示を請求できるようにしている。

 3.株主代表訴訟提起後に株主でなくなった者についての原告適格についての明文化の新設

 組織再編などにより、株式交換や株式移転が行われ、株主代表訴訟の原告である株主が、当該会社の株主でなくなった場合、原告適格を喪失するかどうかについて疑義があり、判例によれば原告適格を失うと解されていた。

 そこで、この点を解決するため、会社法では、完全子会社となる会社につき係属中の株主代表訴訟の原告が、株式交換・株式移転により完全子会社となる会社の株主たる地位を喪失する場合であっても、当該株式交換・株式移転により完全親会社となる会社の株主となるときは、当該原告は、当該株主代表訴訟の原告適格を喪失しない(会社法851条1項1号)とし、原告適格を喪失しない旨明確化した。

 これは、親会社株主として完全子会社に対する利害関係を有する以上、親会社を通じて原告適格は継続して保有していると考えられるためだと思われる。

 これと同じ理由で、合併の消滅会社につき係属中の株主代表訴訟の原告が、合併により消滅会社の株主たる地位を喪失する場合であっても、当該合併により存続会社等の株主となるときは、当該原告は、当該株主代表訴訟の原告適格を喪失しないものとしている。(会社法851条1項2号)

 したがって、組織再編行為の対価の柔軟化として、親会社の株式でなく現金などが交付されて、原告株主が親会社の株主にならない場合は、原告適格を喪失する。

■ 9.特別取締役制度について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 大会社になると取締役の数が多く、機動的に取締役会を開催することが困難である。
 そこで、取締役会の決定を機動的に行うことができるように、改正前は、重要財産委員会という機関が取締役会とは別にあった。

 改正前の重要財産委員会について簡単に述べると、

 1 重要財産委員会は取締役会の決議で設置する。
 2 取締役の数が10名以上必要である。
 3 取締役の中に社外取締役が1名以上必要である。
 4 重要財産委員会は取締役3人以上で組織する取締役会とは別の組織である。
 5 「重要なる財産の処分及び譲受」「多額の借財」の決定につき取締役会から具体的に委任を受けた事項につてのみ決定できる。

 とされていた。

 ところが、実際に重要財産委員会を置く会社はまれであり、会社法では以下の点の改正を行った。

 まず、重要財産委員会制度は廃止し、これにかわるものとして、特別取締役による取締役会の決議を創設した。

 特別取締役による取締役会の決議とは、重要財産委員会のように取締役会とは別の機関を設けるのでなく、あくまでも取締役会で決議する事項のうち会社法362条第4項第1号(重要な財産の処分及び譲受け)及び第2号(多額の借財)にあげる事項については、あらかじめ選定した3人以上の特別取締役だけで決議することができる(会社法373条1項)ということである。

 つまり、取締役会の決議は、決議に加わることができる取締役全員でするのが原則であるが(会社法369条1項)、上記の一定の事項については、あらかじめ定めた特別取締役だけで決議できる特則を設けたのである。

 改正前は決議する事項について、取締役会から具体的に委任される必要があったが、改正後は取締役会から上記一定の事項について包括的に委任されたものとして、当然に「重要なる財産の処分及び譲受け」「多額の借財」について決議ができる。

 特別取締役の選定をすることができる株式会社は、取締役会を設置した株式会社(委員会等設置会社を除く。)であって、次に掲げる要件に該当する必要がある。(会社法373条1項)

 1 取締役の数が6人以上であること。
 2 取締役のうち1人以上が社外取締役であること。

 改正前の10人以上から6人以上に取締役の数が緩和された。

 なお、特別取締役による取締役会の決議については,書面決議を認められない。(会社法373条4項で370条を除外している。)
 これは、制度の趣旨から、当然すぐに招集可能な取締役が特別取締役に選任されていると考えられるからである。

 また、特別取締役による取締役会を機動的に開催する必要があるので、監査役の出席義務についても、特則が設けられている。
 複数の監査役が設置された株式会社における特別取締役による取締役会については、監査役の互選により当該取締役会に出席すべき監査役を定めたときは、その定められた監査役以外の監査役は出席義務を負わないものとしている。(会社法383条ただし書き)
2.7 その他の機関 Date: 2006-06-18 (Sun) 

■ 1.監査役について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 今まで、資本金1億円以下の株式会社及び有限会社監査役権限は、会計監査権限だけで、業務監査権限はなかった。
 改正後は、すべての監査役は、業務監査権限を有する(会社法381条1項)と規定され、会計監査権限だけでなく業務監査権限も有するようになった。
 これは、大会社以外でのガバナンス強化を狙ったものだと思われる。

 ただ、大会社でない譲渡制限会社では、業務監査を監査役にさせるよりも、株主が直接取締役を監視・監督した方が会社のガバナンスが向上することもある。
 特に、取締役会設置会社では、取締役会を置くと株主総会における株主の権限が制限されてしまう(会社法295条2項)ので、直接株主が取締役を監視・監督する方がいい場合もある。

 そこで、会社法では、公開会社でない株式会社監査役会設置会社又は会計監査人設置会社を除く。)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる(会社法389条1項)と規定してる。
 この場合、大会社は会計監査人の設置義務がある(会社法328条2項)ので、この旨の規定を定款に定めることができる会社は、大会社でない譲渡制限会社のみである。

 業務監査権限のある監査役を置かない場合、会社法上、監査役設置会社ではないので(会社法2条9号)、以下のように株主の権限が強化され、株主が取締役の監視・監督をすることになる。

 1 株主は、裁判所の許可を得ることなく、取締役会の議事録を閲覧することができる。(会社法371条3項・2項)

 2 株主は、取締役が株式会社の目的の範囲内にない行為その他法令若しくは定款に違反する行為を行い又は行うおそれがある場合には、取締役会の招集を請求すること、及び一定の場合(会社法366条3項参照)には、自ら取締役会を招集することができる(会社法367条1項・3項)。

 3 株主は、自己の請求又は招集により開催された取締役会については、これに出席し、意見を述べることができる。(会社法367条4項)

 4 定款に基づく取締役の過半数の同意(取締役会を設置する場合には、取締役会の決議)による取締役等の責任の一部免除制度は、適用しない。(会社法426条1項)

 5 取締役は、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した場合には、株主にこれを報告しなければならない(会社法357条1項)。

 6 株主の取締役の違法行為差止請求権の行使要件につき、監査役が同請求権を行使する場合の行使要件(会社法385条)と同様、「回復することができない損害」でなく、「著しい損害」に要件に緩和する。(会社法360条1項・3項)

 また、補欠監査役・補欠取締役を予選することができること及びその手続等(定款の定めがなくても補欠監査役等の予選をすることができること、予選の効力は選任後最初に到来する定時株主総会の時までとすること等)を明確化するため、この点を法務省令で定めるとしている。(会社法329条2項)

 監査役会を設置しない株式会社において二人以上の監査役を設置する場合には、今までは監査役会の同意又は決議を要するものとされている事項については、監査役の過半数の同意を要するものとして規定するものとしている。(会社法343条1項・344条1項)

 なお、監査役の任期については、原則として4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会の終結の時までとされている(会社法336条1項)が、取締役と同様、譲渡制限会社においては、定款に規定することによって10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会の終結の時までに伸張することができる(会社法336条2項)とされている。

■ 2.会計参与について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 大会社には、会計監査人の設置が義務づけられている(会社法328条)ので、計算書類の適正が確保されている。
 ところが、大会社でない会社には会計監査人の設置義務がないので、これらの会社の計算・会計の適正をどのように担保すべきかが問題となった。

 そこで、登場したのが会計参与である。
 会計参与とは、公認会計士又は税理士の資格を持つ会計のプロで、会計知識に乏しい取締役等と共同で会社の計算書類を作成させることにより、会社の計算書類の適正を確保するために置かれる、社外役員である。

 会計参与は、主に大会社でない会社の計算書類の適正を確保する制度として新しく創設されたが、大会社も含めてすべての会社で、定款に定めることにより、会計参与を設置することができる(会社法326条2項)、任意の制度である。

 計算・会計の適正を確保するための制度であるので、誰でもなれるわけではない。
 会計参与は、会計のプロフェッショナルである公認会計士(監査法人を含む。)又は税理士(税理士法人を含む。)でなければならない。(会社法333条1項)

 また、会計参与は、株式会社又はその子会社の取締役、執行役、監査役、会計監査人又は支配人その他の使用人を兼ねることができない。(会社法333条3項1号)
これは、計算・会計の適正を確保するためには、会社の業執行から独立させた機関にする必要があるからである。
 なお、顧問税理士を会計参与にすることは禁止されていない。

 会計監査人と会計参与を同一人物が兼務することは、計算書類作成者とそれを監査する立場の違いから兼務できないが、会計監査人を置いた会社に、さらに会計参与を置くことは妨げられない。
 これは、会計参与は会社の役員であり(会社法329条)、会社内部の機関として計算書類の作成をする立場である。これに対し、会計監査人は、会社の外部機関として、作成された計算書類を監査する立場であり、その職務は全く異なるからである。

 会計参与は、会社の役員として株主総会で選任される。(会社法329条)

 会計参与の任期は、取締役と同じく、原則2年であるが、譲渡制限会社については、10年に伸長できる。委員会設置会社では、1年である。(会社法334条1項で、332条の取締役の規定を準用している。)

 会計参与の報酬等については、定款にその額が定められていないときは、株主総会の決議により定めることになっている。(会社法379条)

 会計参与の職務としては、

 1 計算書類の作成
 会計参与は、取締役・執行役と共同して、計算書類を作成するものとする。(会社法374条1項・6項)
 この場合、共同して作成する必要があるので、それぞれが単独で作成することはできない。
 したがって、両者の合意の基でつくられる必要がある。
 合意できない場合は、辞任するか株主総会で意見の陳述をすることになる。(会社法377条)

 2 株主総会における説明義務
 会計参与は、株主総会において、計算書類に関して株主が求めた事項について説明しなければならない。(会社法314条)

 3 計算書類の保存
会計参与は、株式会社とは別に、計算書類を5年間保存しなければならない。(会社法378条1項)

 4 計算書類の開示
 株主及び株式会社債権者は、会計参与に対して、計算書類の閲覧等を請求することができる。(会社法378条2項)

 5 その他
 会計参与は、計算書類を承認する取締役会への出席(会社法376条)、子会社への調査(会社法374条3項)など計算書類の作成に必要な権限を有している。

 会計参与の会社に対する責任については、取締役の任務懈怠責任と同じく会社法423条の損害賠償責任がある。
 この責任について、総株主の同意がなければ免除できない規定(会社法324条)、株主総会での責任一部免除規定(会社法325条)、定款の定めによる取締役(会)決議による責任一部免除規定(会社法326条)、責任限定契約規定(会社法347条)についての適用もある。
 また、この責任は株主代表訴訟の対象でもある。(会社法847条)

 会計参与の会社・第三者に対する責任については、悪意又は重大な過失があるときは、第三者に生じた損害を賠償する責任がある。(会社法429条1項)
 計算書類等に虚偽の記載をした場合は、その注意を怠らなかったことを証明しないときは、損害賠償責任を負うと定められている。(会社法429条2項2号)

 会計参与を設置したときは、会計参与を設置した旨及び当該会計参与の氏名又は名称及び会社法378条1項で規定している会計参与が保存を義務づけられている計算書類等の備え置き場所を登記するものとしている。(会社法911条3項16号)
 備え場所を登記事項としたのは、株主及び債権者に公示する必要があるためだ。

■ 3.会計監査人について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 改正前は、大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上の会社)だけが会計監査人を置くことができた。(正確に言えば、置く義務があった。)

 そして、改正前は中会社(資本金が1億円を超え5億円未満で、かつ負債200億円未満の会社)という区分があって、中会社では定款に定めることにより大会社の特例を受ける「みなし大会社」という制度があったので、定款で定めれば会計監査人を置くことが可能であった。

 しかし、資本金1億円以下かつ負債200億円未満の会社(以下、小会社という)では、会計監査人を置くことができなかった。
 また、小会社では、監査役の権限が会計監査権限のみで、業務監査権限を有していなかった。

 しかし、このような基準で、会社の規模を決めて、3つの区分で、会計監査人の設置・監査役の権限に差異を置くことは実益性が乏しく、小会社においてもガバナンスの強化が必要であることは当然でり、会社機関設計の柔軟化から、会社法により以下の点が改正された。

 1.大会社は会計監査人の設置義務があり(会社法328条)、その他の中会社・小会社は、定款に定めることにより、会計監査人を置くことができる(会社法326条2項)としている。(ただし、委員会を設置した場合は、会計監査人の設置義務がある(会社法327条5項))
 これにより、小会社でも会計監査人を任意に置くことが可能となた。

 2.小会社監査役も含め、すべての会社監査役は、原則として会計監査権限のほか業務監査権限も有する。(会社法381条1項)
 ただし、株式譲渡制限会社では、定款に定めることにより、会計監査権限のみに限定することもできる(会社法389条1項)としている。

 このように、小会社でも会計監査人を置くことが可能となり、監査役の権限も業務監査権限を有するようになったので、小会社と中会社での違いがなくなったので、小会社と中会社という区分を廃止した。
 したがって、改正後の会社規模での区分は、「大会社」と「大会社でない会社」の2区分になった。

 会計監査人の欠格事由として、公認会計士法の規定により会社の計算書類について監査することができない者及び本人またはその配偶者が当該会社子会社またはその役員などから会計監査人の業務以外の業務により継続的に報酬を受けいている場合(会社法337条3項)と規定し、改正前にあった、業務の停止処分を受け、その停止の期間を経過しない者などの規定は削除された。

 会計監査人の業務執行機関からの独立性を強化するため、会計監査人の選解任(会社法344条1項)だけでなく、会計監査人の報酬についても、その決定をするには、監査役の同意を得なければならない旨規定した。(会社法399条)

 会計監査人の株式会社に対する責任についても、取締役の任務懈怠責任と同じく会社法423条の損害賠償責任がある。
 この責任について、総株主の同意がなければ免除できない規定(会社法324条)、株主総会での責任一部免除規定(会社法325条)、定款の定めによる取締役(会)決議による責任一部免除規定(会社法326条)、責任限定契約規定(会社法347条)についも会計監査人に適用される。
 また、会計監査人の責任は株主代表訴訟の対象としている。(会社法847条)

 その他法務省令で、会計監査人が不適法意見を述べる場合又は監査のための必要な調査をすることができなかった旨を述べる場合には、決算公告において、その旨を明示しなければならないものと規定することになっている。

 会計監査人を設置した旨及び当該会計監査人の氏名又は名称は、登記事項である。(会社法911条3項19号)

■ 4.支配人について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 支配人は、「自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引を行うこと(競合取引)」だけでなく、「自ら営業を行うこと」「他の会社の取締役、執行役、使用人等になること」にも会社の許可が必要である。(会社法12条1項)

 この点改正前と変わらない。取締役の規制が競合避止義務のみ(会社法356条1項1号)だけであるのに比べると、規制が強いので、取締役並みに規制を緩和することも検討されたが見送られている。

 この会社の許諾を行う機関は、取締役会を設置した株式会社においては取締役会を、取締役会を設置しない株式会社においては取締役を許諾機関とするものとして、明定することになっている。

5.委員会設置会社について Date: 2006-06-18 (Sun) 
 改正前は、大会社(みなし大会社を含む)でなければ、委員会設置会社になることができなかったが、機関設計の柔軟化により、改正後は、すべての会社で委員会設置会社になることができるようになった。(会社法326条2項。ただし、会社法327条1項3号・5項により取締役会と会計監査人の設置義務が生じる。)

 委員会設置会社は、業務執行は執行役が行い、執行役による業務執行の監督を取締役会が行う制度である。
 したがって、委員会設置会社の取締役は、執行役の監督をするのが職責であり、原則として業務を執行することができない(会社法416条)ことになっている。
 ところが、取締役は執行役と兼務でき(会社法402条6号)また、改正前は監査委員会の委員のみ支配人その他の使用人を兼ねることができない旨の規定があるだけだった(会社法400条4号)ので、監査委員会の委員以外の取締役は、支配人その他の使用人も兼ねることができるかどうか疑義があった。

 取締役と支配人その他の使用人の兼務を認めた場合、執行役の指揮命令を受ける支配人その他の使用人が、当該執行役を監督するということになり、執行と監督を分離して、コーポレート・ガバナンスを強化するという委員会設置会社の制度趣旨に反することになる。

 そこで、会社法では、委員会設置会社の取締役は、当該委員会設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることができない(会社法331条3項)旨の規定を置いた。

 これに対して、執行役と支配人その他の使用人との兼務は禁止されていない。

 委員会設置会社では、報酬委員会が執行役等の個人別の報酬等の内容を決定することになっている。(会社法404条前段)
 一方、支配人その他の使用人の報酬は、執行役が定めることになっている。
 したがって、執行役が支配人その他の使用人を兼務する場合は、執行役の報酬は報酬委員会が決定して、支配人その他の使用人としての報酬は、執行役が決定することになる。

 これでは、委員会設置会社の制度趣旨に反する面があるので、会社法では、報酬委員会は、執行役が委員会設置会社の支配人その他の使用人を兼ねているときは、当該支配人その他の使用人の報酬等の内容についても決定する(会社法404条3項後段)と規定している。

 したがって、報酬委員会は、支配人その他の使用人として受ける報酬も考慮して執行役の報酬を決めることになる。