在位年代推定の方法(Historical)

2.安本氏の方法

次に、安本美典の行った方法を紹介しよう。彼は「後の天皇の在位年数の平均」と「世界の諸王の在位年数の平均」を用い、これによって日本古代の天皇の在位年数の平均を推定した(安本美典『卑弥呼の謎』、『神武東遷』、『邪馬台国への道』等参照)。数理文献学の提唱者である彼得意の統計的手法に則っており、この方法は手堅いものといえよう。(最も、安本によれば、栗山周一が既に同じ方法で在位年代推定を行っていた)その際に使用したデータと彼の算出した結果を以下に示そう(以下、表及びグラフは安本『邪馬台国への道』等より、かわにし作成)。

まず、即位退位の時期などを歴史的な事実として信頼できるものは、第31代用明以後であるとして、大正天皇に至る98天皇の在位年数をまとめたのが、表1である。

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ここから、天皇の平均在位年数は14.22年である。次に各時代別・世紀別に平均在位年数を算出してみたのが、グラフ1及び2である。

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グラフ1 時代別天皇平均在位年数 グラフ2 世紀別天皇平均在位年数

グラフ1によれば、在位年数を信頼できるものとした用明以後(飛鳥・奈良時代以後)は時代を遡るにつれ天皇の在位年数が少なくなっているのがわかる。グラフ2についても同様である。

同様にして、西暦元年以後の全世界の、歴史的に在位期間が確実な王(1695王)の世紀別平均在位年数を以下に示す。
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グラフ3 全世界の王の世紀別平均在位年数

ここでも同じ傾向が認められるのである。これらのデータによる時、古代の天皇の在位年数の平均は、10~14年程度と見るべきであることが判るのである。

この年代論を、安本は卑弥呼天照大神説の根拠の一つに挙げている(平均を10年程度に見れば、卑弥呼の年代は天照大神に当たる)。

さて、安本説を含め、卑弥呼を誰に比定するかという諸説を比較する。横軸に天皇の「代」をとり、縦軸にその天皇の即位した年をとる。これを第70代後冷泉天皇までプロットしたグラフが以下だ。
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グラフ4 諸説一覧図

これをみれば、「478年の倭王武=雄略の宋への上表」「425年の倭王讃=応神或は仁徳の宋への遣使」「卑弥呼天照大神」が、きわめて自然につながっているのが読み取れる。(安本は、倭王武については通説通り雄略に比定。倭王讃については応神に比定している。安本『倭の五王の謎』)これに対し、他の諸説(卑弥呼=神功皇后説、卑弥呼=倭姫説、卑弥呼=倭迹迹日百襲姫説)は、第17代履中のあたりから急激に下に曲がる。年代の延長が見て取れるのである。また、平山朝治の説(『季刊邪馬台国』16号、最小自乗法)を紹介して、卑弥呼天照大神説が歴代天皇の在位年数から言って、最もふさわしいことを力説している。


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Last-modified: 2019-05-03 (金) 18:23:00