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第20回 百科事典も登場、明の文化

第20回 百科事典も登場、明の文化
○実用的な明文化
 明代は、実用や実践を重視する文化が達します。さらに文化の担い手は、知識人や支配階級だけにとどまらず、庶民階級や来航してきたキリスト教カトリックの一派、イエズス会の宣教師の影響もあります。

 思想面では、明は朱子学を官学とし、永楽帝のころには「五経大全」を勅撰させます。また、中期に王陽明があらわれ、代の陸九淵の説を展させて、知(知識)と行(実践)の統一を説く陽明学を立。明末には、その考えをさらにすすめた李贄がでて、自由主義的立場からの主張が後世に大きな影響。なるほど、知識を持っているだけではダメ、実際に試せ、ということなんですね。

 実用書を見ますと、まず永楽帝が2万2877巻にも及ぶ「永楽大典」と言う百科事典を編纂させます。残念ながら、今は一部しか残っていません。それから、イエズス会宣教師マテオ=リッチに徐光啓が学んで執筆したの数学の本である「幾何原本」&ヨーロッパの農業を紹介する「農業全書」、医師の李時珍の「本草綱目」(植物・動物・鉱物など1900種の薬物の辞典)、地方官の応星による「天工開物」(明の産業を統計・挿絵付きでわかりやすく紹介)などが登場。なお、天工開物は、江戸時代の日本でヒットし、中国では20世紀初めにようやく評価が高まりました。

 マテオ=リッチについて解説しておきますと、もちろんキリスト教を布教させるために明にやってきたのですが、明とヨーロッパでは、価値観が全然違う。アダムとイブだとか、人は生まれながらに原罪を背負っている・・なんて言っても、明の人には「?」「?」状態。結局、彼をはじめ、宣教師は随分来ましたが、ヨーロッパの実用的な知識を伝える程度が精一杯のようです。

 ちなみに、日本でお馴染みフランシスコ・ザビエルも、この時代に中国に向かおうとしましたが、その途中で亡くなっています。

 文芸面では庶民的な戯曲や小説などの口語文学が盛んにつくられます。まあ、エンターテインメントですね。小説では「三国志演義」「水滸伝」「西遊記」「瓶梅」の四大奇書が特に有名です。奇というのは、面白いと言うこと。

 前者3つは、皆さんご存じと思いますが、「瓶梅」については説明が必要でしょう。
 これは、全100回の口語長編小説。作者は笑笑生(もちろんペンネームで、実名は不明)です。「水滸伝」の登場人物の一人、豪傑武松(ぶしょう)が、兄嫁の潘蓮(はんきんれん)と、密通の手の西門慶(せいもんけい)を惨殺する一段を借用し、展させたもので、単純に言えばエロ小説です。当時としては卑猥すぎて、の時代には禁処分になったこともあります。

 もちろん、エロ小説というのは作品の本質ではなく、人間の自由な感性を描き、儒教道徳に則った人物が酷い目にあうなど、当時の常識に批判的な立場を取った小説のようです。

 工芸面では、景徳鎮などですぐれた陶磁器がつくられまして、特に宣徳年間(1426~35)の染付、嘉靖年間(1522~66)や万暦年間(1573~1620)の赤絵などは、現在でも世界的に愛好されているのは、何でも鑑定団なんかを見ていると解りますね。

第21回 女真族の後金・清と李自成の乱
第19回 北虜南倭の患、明の衰退