歴史・人名

文献案内(Historical)

書評(Historical)

文献案内

ここでは、Historical で取り上げたテーマについての文献案内を記したいと思います。

九州王朝とは

古田武彦『「邪馬台国」はなかった』朝日新聞社, 1971[朝日文庫, 1992]
古田武彦『失われた九州王朝』朝日新聞社, 1973[朝日文庫, 1993]

古田武彦『盗まれた神話―記・紀の秘密』朝日新聞社, 1975[朝日文庫, 1993]
言わずと知れた古田武彦の古代史三部作。古田武彦の九州王朝説は、この三作でほぼ完成していると言っていい。「徹底的に理論武装した書」と著者自身も語るだけに、丁寧な論証と明確な結論は読んだ後に爽快感さえ味わわせてくれる。

古田武彦『古代は輝いていた〈1〉『風土記』にいた卑弥呼』朝日新聞社, 1984[朝日文庫, 1988]
古田武彦『古代は輝いていた〈2〉日本列島の大王たち』朝日新聞社, 1985[朝日文庫, 1988]

古田武彦『法隆寺の中の九州王朝』朝日新聞社, 1985[朝日文庫, 1988]
古田武彦による古代通史。古田独自の視点から、他に類を見ない通史を展開。確定した歴史事実を物語るのが一般的な通史だが、この書は至る所で問題提起に満ちている。冒険的な仮説も多く、それがこの書の魅力の一つになっている。
古田武彦『邪馬一国への道標』講談社, 1978
古田武彦が柔らかな口調で語る古田史学の入門書。もちろん、そこで展開している論証は決して軽いものではなく重厚。

在位年代推定の方法

安本美典『邪馬台国への道』徳間文庫, 1990
安本美典の著書には必ずと言っていいほど彼の在位年代推定の方法が記されている。そこで彼の説の起点となった書物。古田武彦と並び称される(本人達は望まないだろうが)在野の古代史家の、アカデミックな議論にはない魅力が堪能できる。
安本美典/本多正久『因子分析法』培風館, 1981
安本美典が心理学者であることは、意外と(?)有名だが、彼の手による心理学への統計学の利用の手引書もある。文献史学への統計学の適用という観点からも興味深い書なので一度手にとってみてはいかがだろうか。
内田正男『日本書紀暦日原典』雄山閣出版, 1978
在位年代の推定は暦の問題とも関わるが、元嘉暦と麟徳暦(儀鳳暦)で書紀の暦日を全て計算しつくした内田正男の労作の成果は欠かせない。小川清彦「日本書紀の暦日に就て」を掲載していることでも重宝する。
伊藤雅光『計量言語学入門』大修館書店, 2002
本筋からはやや逸れるが、文献学への統計学の適用、という意味では、周辺学部の導入状況も参考にしておく必要があるだろう。ただし、やはりというかなんというか、「コンピュータ」の適用に関しては、ややいただけない観がある。もっと効率的に利用できると思うが…。

倭国日本

古田武彦『九州王朝の歴史学』駸々堂, 1991
古田武彦による倭とヤマトについての興味深い考察が掲載されている。
網野善彦『日本とは何か 日本歴史〈00〉』講談社, 2000
倭国日本の問題を語るなら、避けては通れない書。網野は結局九州王朝説には触れずじまいだったが、網野史学と古田史学の接点は見逃せない。ある意味では古田武彦よりもさらに「多元的」であるとさえ言える。
網野善彦/森浩一『馬・船・常民―東西交流の日本列島史』講談社学術文庫, 1999
こちらも本稿とは直接関連しないが、重要な書。倭国日本、或いは地域と国家を考える意味で重要な示唆を与えてくれる対談。
吉田孝『日本の誕生』岩波新書, 1997
日本という国号の使用に関しての考察。さすがに史料を十分に吟味した上での慎重な考察であり、是非読んでおきたい一冊。

大宝以前の逸年号-逸年号論序説-

丸山晋司『古代逸年号の謎―古写本『九州年号』の原像を求めて』アイピーシー, 1992
逸年号を語る上での基本文献。膨大な史料を駆使した慎重かつ大胆な考察。史料集としても価値のある貴重な書。
所功『年号の歴史元号制度の史的研究』雄山閣, 1989
年号に関する基礎知識を得るなら、この書を一読すべし。逸年号に関しても著者の見解が示されている。

ハツクニシラス考

井上光貞『日本歴史 (1)』中公文庫, 1973
まさに「教科書」。戦後歴史学の「標準的」な学説を知るには、これを読むのが一番。
門脇禎二『葛城と古代国家』講談社学術文庫, 2000
ハツクニシラス問題で実は大きな関わりを持つのが、「国家の成立」という問題意識。そこで、門脇禎二の「地域国家」論との関わりが重要になる。門脇の国家論は、初期国家論としても興味深い視点を提供してくれる。
歴史学研究会〔編〕『国家像・社会像の変貌』青木書店, 2003
国家論ということでは、歴史学研究会の編著が、古代史だけに限らずに広範に歴史学の状況を見渡せる書物であり、便利。ただ、これを読むと古代史だけが微妙に国家像にズレを生じているように感じてしまうのは、私だけだろうか。

天孫降臨の視点

三品彰英『神話と文化境域』大八洲出版, 1948
朝鮮半島の神話と記紀神話の接点を探る古典的書物。
江上波夫『騎馬民族国家―日本古代史へのアプローチ』中公文庫, 1983
あまりにも有名な学説。騎馬民族と天孫降臨との関係は江上の説にとって重要な位置を占める。
ロラン・バルト『物語の構造分析』花輪光訳, みすず書房, 1979
本稿は「文学理論」や「記号学」を文献史学の分析に導入しようと試みたものだが、その理論上の基礎となる文献。バルト自身は、物語の構造的な分析よりも、物語の「読みの可能性」或いは「不可能性」を見出していくことに文芸評論家としての魅力を感じていたので、彼によってこれ以上この立場が発展することはなかったが、その初期の気負いと興味が離れていく様を両方味わえる書。

古事記の成立

津田左右吉『神代史の新しい研究;古事記及び日本書紀の新研究』岩波書店, 1926

津田左右吉『日本古典の研究』岩波書店, 1948
古事記の成立に関する学説は、実は津田左右吉が語りつくしている。津田の文章は、実に平易で簡潔でありながら、丹念に論理を組み立てているという点で実に心地よいものを感じさせてくれる。反共路線が「マルクス主義」歴史学から反感を買ったが、津田の価値は今でも全く損なわれることはない。一読をお勧めする。