歴史・人名

【世界史】第1回 先史時代①

世界史

【世界史】第1回 先史時代① 〜人類の誕生

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1.はじめに

 この講義では、教科書レベルの世界史の内容をなるべく簡潔に押さえていこうと思っています。とはいえ、興味深いエピソードなどは随時紹介していきますので、そういう場合の脱線にはどうぞご容赦を。

 今回は、人類歴史時代へ入る前の先史時代についてのお話をしていきます。色々と話す前に、今回の単元は「人類の進化」「文化から文明へのあゆみ」「人類の分化」 の3つに分けて順に進めていくことを最初に言っておきますね。ところで、このあたりの話は「世界の歴史」というよりも考古学や人類学の専門なんです。昨今、考古学の目覚ましい研究の成果により、次々と新事実がわかってきています。ゆえに、教科書の記述が間に合っていないのが現状です(教科書は確実に正しいと検証されたものしか載せられないのが原則なので、載せるまでに時間がかかります)。その考古学の成果を知りたい人は新書『人類進化の700万年』(三井誠・著)あたりを読んでみるのがオススメです(この講義においてもずいぶん参照しています)。比較的平易な文章なので読みやすいと思います。

2.人類の出現と進化
 まず、「先史時代」という言葉を定義づけておきましょう。先史時代とは「人類が簡単な道具を使って生活をしていた無文字時代」と言うことができます。あくまでごく簡単な定義ですが。この無文字時代は人類の歩みの99%以上の時間を占めています。逆に言えば、記録を文字で残してきた「歴史時代」はわずか1%足らずにしか過ぎず、そのちょっとの間の期間(人類史全体で見れば)について私たちはこれから詳細に勉強していくわけです。しかし、その前に今回はまだ文字のなかった先史時代を振り返りたいと思います。

 さて、人類はどのくらい前に出現したのでしょう。詳細な研究は現在も続いていますが、人類の祖先は約700万年に現れたと言われています。皆さんの知ってのとおり、ヒトは一般的にサルから進化したものとされていますが、ではヒトとサルを区別するものは一体何なのでしょうか。言葉や道具の使用、脳の大型化などが思いつきますか?最も大事な基本的な条件は漢字6字です。そう「直立二足歩行」ですね。このあたりの知識は中学時代にも習ったのかもしれませんが、直立二足歩行は猿にはない特徴で、直立二足歩行ができるようになることで脳の発達や道具の使用などが可能になったのです(他にも犬歯の退化も人類とサルとを区別づけるものとも言われています)。

 ここからは人類が猿の仲間から分かれて進化し、今日に至るような進化を生み出した過程を少し具体的に話していこうと思います。一般的には猿人→原人→旧人→新人という化石人類の進化を経て、猿の仲間から完全に分かれた現生人類(私たちの直接的祖先)が登場したと言われます。ただし、ここで気をつけてほしいのは、猿人から新人に至るまで一直線で進化を遂げたのではないということです。以前、ネアンデルタール人(旧人)をホモ・サピエンス(新人)の祖先とする説がありました。しかし、遺骨から得られたミトコンドリアDNAの解析結果に基づき、現在ではネアンデルタール人は我々の直系先祖ではなく別系統の人類であるとする見方が有力らしいのです。私たちの先祖のルーツはどこまで遡ることができるのか。この点についてはまだまだ研究が必要な部分ですね。

 では、順に少し詳しく紹介していきます。それぞれのヒト類の現れた年代、代表例、文化的特徴などをまとめて覚えていくといいと思います。まずは猿人。猿人は約700万年前にアフリカにて登場しました。フランスなどの研究チームがアフリカ中央部のチャドで発見し、2002年に報告されました。脳の大きさは360〜370ccほどでチンパンジーとさほど変わりません。代表的な猿人の仲間としてはエチオピアで発見されたラミダス猿人や南アフリカのアウストラロピテクスが挙げられます。猿人のなかには簡単な打製石器(礫石器)を用いるのもあったようです。猿人が発見されるのが、アフリカばかりですのでおそらく人類はアフリカ大陸から出現したのでしょう。

 さて、次に原人の話ですが、猿人と原人の中間なのかなーという微妙な立ち位置にいるのがホモ=ハビリスです。ヒト属の直接的な祖先とつながりがあるとされていますが(本格的にチンパンジーなどと枝分かれしていくという意)、脳の大きさは現生人類の約半分ほどであり、身長は130cmほどであったと言われています。そして、ホモ=エレクトゥスと呼ばれる人々が登場します。代表的なのはジャワ原人、北京原人です。アフリカ大陸を脱し、氷期の厳しい環境を生き抜いて世界各地にヒトが移動していってます。彼らはハンドアックスなどの改良された打製石器と火を使用しているのが特徴的です。

 さらに約60万年前に現れたのが旧人です。ヨーロッパに住んでいたネアンデルタール人がその代表です。旧人は現代のわれわれとほぼ同じ脳の容量であったとされ、埋葬の習慣がみられるなど以前の人類よりも文化的な生活を送ったとされています。約3万年前、彼らはいつの間にか現代に子孫を残すことなく滅んでいってしまいました。絶滅の理由は一般的にわれわれと同じ現生人類が彼らの居場所を奪っていったからとされていますがどうなのでしょうか。詳しいことはまだ正確にはわかっていません。

  ついで約20万年ほど前にアフリカにあらわれた人類を新人といいます。私たちと同じ現生人類(ホモ=サピエンス)の祖先に属します。中国の周口店上洞人やヨーロッパのクロマニョン人などが知られていますね。約4万年ほど前から徐々に旧人たちにとってかわって各地に住み着くようになったようです。彼らは石器を作る技術をさらに発展させました。また骨や角でつくった骨角器を使用したとも言われています。その他の特徴としては、洞穴絵画を描いたことはぜひ知っておきましょう。フランスのラスコーやスペインのアルタミラなどの絵画が有名です。約1万3千年〜1万5千年前に描かれたそうです。1つ1つ躍動感があり素晴らしいものですが、なぜ当時の人々がわざわざ洞穴の奥深く(わざわざ描きにくい場所と言っていいでしょう)にこのような絵を残したのかははっきりしていません。

 ここまでのヒトの進化の過程ではいずれも打製石器を使用しています。進化するにつれて徐々に精巧な石器を作るようにもなりました。ここまでの時代を旧石器時代と呼んだりします。

 次回は、「文化から文明への歩み」と題して、旧石器時代から新石器時代への移り変わり、農耕や文明の誕生といったあたりを紹介していきます。