歴史・人名

誓約

誓約
ウケヒ

登場する神:天照大神、素盞鳴尊、天忍穂耳神、天穂日神天津彦根神、その他

素盞鳴尊が高天原へと昇った際、武装した天照大神との間で身の潔白の証明のためにおこなわれた儀式。

三貴神として生まれた天照大神、月読神、素盞鳴尊は、父神伊邪那岐命からそれぞれ天(昼)、夜、海原を治めるように命じられたのだが、素盞鳴尊だけはその任務を遂行せず、母である伊邪那美命のいる根の堅州国(カタスクニ)へ行きたいと言って泣き叫び、青山を枯らし、河や海をことごとく干上がらせてしまった。このような素盞鳴尊に手を焼いた伊邪那岐命は、どこへでも行ってしまえと素盞鳴尊を追放することにする。

その命を受けた素盞鳴尊は、姉の天照大神に暇乞いをすると言って姉の神殿に向かう。 天照大神は素盞鳴尊のずしんずしんという足音が段々と近づいてくるのを神殿で聞き、これはいよいよあの不肖の弟神が高天原の支配権を自分から奪いに来たと思い、全身に武装を施して彼を迎え撃つために討って出た。 素盞鳴尊としてもそういうつもりはなかったようで、懸命に弁解をするのだが天照大神は信用しない。これは神に伺いを立てるしかないということで、姉弟は占いで決着をつけることにした。

もともと誓約とは、神に誓って卜占(事の正否、吉凶を判断すること)をおこなうことで、古代におこなわれた占いの一種である。このときのこの儀式は、高天原の天の安川でおこなわれた。

その定義の通り、占いの方法には幾通りもあったようだ。このときの2人の間でどのような儀式がおこなわれたのか私にはあまり理解できていない。私の見た資料では、素盞鳴尊の剣と天照大神が首に飾っていた玉とを交換し、素盞鳴尊が天照大神の玉を噛み砕いて吹き出す。するとその欠片はたちまちのうちに天忍穂耳神、天穂日神天津彦根神など、5神の神々となった。このことによって素盞鳴尊は身の潔白を証明できたようで、喜びのあまりに神殿に糞をするなど、また乱暴狼藉の限りを尽くすのである。

まったくもって、何度読んでもルールが分からない。まあしかし、神ならぬ身に彼らの考えが理解できるはずもない。とにかくそういう顛末だったようだ。

後に素盞鳴尊は天岩戸隠れ事件を引き起こした罪人として高天原を追放されてしまうのだが、誓約の際に生まれた神々は天照大神の養子となって神武天皇へと続く神々の系譜を形成してゆく。その意味では、真に皇室の祖神として祀られるべきなのは素盞鳴尊であるのかもしれない。